第十一章 風の谷のヨーデル
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すると周囲の人たちは、この一連の流れが日常の一部かのように解散し始めた。
泣きながら丘を降りていったあの男の人を除いて。
「なんか思ってたのと違う」
「婚礼、終わってしまいましたね」
「え、これ婚礼?式の余興じゃなくて?」
「?婚礼ではなかったのですか?」
「こんなの結婚式じゃないわ」
「「えっ…?」」
「花嫁さんが悲しい顔してるなんて、こんな結婚式、絶対にありえない!!あの白い服のおじさんに話を聞くわよ。一体全体何が起こってるのか説明してもらうんだから!」
レミは怒りを顕にしながら祠の前にいる白い服のおっさんのところへズンズンと歩いていった。
いやいや、さっきのが本当に結婚式だとしたらブチギレるのも分かるけど、さすがに余興じゃないか?
放っておくと殴りかかりそうな勢いのレミをみんなで追いかけ、白い服のおっさんの前まで来た。
「おぉ、旅の者、よく参られた。婚礼の義も終わり申したゆえ、ゆっくり観光でもされるとよかろう」
「ちょっと聞きたいんですけど、この結婚式って、一体何なんですか?私たち、結婚式の写真を撮りに来たんです」
「ジュリアを写真に?それはもう叶わぬことであるぞ。ジュリアは竜神様のもとへ嫁いだゆえ、この祠で清らかな魂を解き放ち村を吹き渡る風となるのだ」
おっさんは残念そうに眉を下げてよくわからないことを話してきた。
さっきの天使は竜神様へ嫁いだ?風になる…?
「………ん?」
「魂を解き放つ…」
「死ぬ、ということですか?」
「それじゃまるで生け贄じゃない、まさかそんな事…」
「とんでもねぇ因習村じゃん」
ドン引きするあたしたちの反応に、おっさんはやれやれと呆れた様子だった。
「この祠まで来たのならば、汝らもあの竜巻を見たのであろう?」
「ものすごい力でした。あの風が吹けばどんな物でも一瞬で壊されてしまうでしょう…」
「あの竜巻こそ、竜神様の怒りの風。花嫁はそれを鎮めるためにここで自らの身を竜神様へ捧げるものぞ。人としての身体を脱ぎ捨て、竜神様と共に恵みをもたらす風となる…それが花嫁の使命なのだ」
「やはり死んでしまうのね…」
「それ、竜神様の怒りじゃなくて、今まで閉じ込めてきた花嫁たちの怒りでは?」
「な、なに…!?」
「レイカさん!怖いこと言わないでください!」
「だってその竜巻や竜神様と会話したわけじゃないですよね?」
「そうですよ、それにこんなの絶対におかしいです。扉を開けてください!」
「ならぬ!この儀式は先祖代々に伝わりしもの。祠を開こうなどという不埒な真似、村のしきたりを知らぬ者とはいえ許される話ではないぞよ。忘れるがよい、旅の者。この村のあらゆることを忘れるがよい。そして、観光を楽しむがよい」
憤慨した様子のおっさんは祠の扉へ鎖を巻きに行ってしまった。
あたしたちとしては信じられないことだが、この村ではこれが普通のことなんだろう。
「とりあえずあの祠ぶっ壊したら万事解決?」
「祠というものは安易に壊すべきではないし、中にいる花嫁さんが危ないからやめなさい」
「確かに」
「レミさん、村の人たちから、ここに来て花嫁さんにならないかってやたらと言われてたんですけどそれって…」
「うーわ、それ遠回しに生け贄になれってことじゃん」
マジでとんでもねぇ村だなと大人気のレミを見ると、何故かサーロインさんと言い合っている。
さらにその二人の間でアーリアが何かを伝えようとしているのが見えた。
しかし二人の勢いが強すぎて気付いてもらえない様子なので、あたしは言い争う二人の間に割って入った。
「「!」」
「ストップ!アーリアさんが発言をしたいそうです!」
「聖閃石の力が、伝わってきました…この祠の奥から」
「えっ…」
「なんだって?」
「それだけではありません。この祠には、聖閃石よりさらに強い力が秘められているようなのです」
「アスラントの力…」
「しかし、この祠はアスラントよりもずっと後の文明で作られた物のはず。そんなことが起こり得るだろうか」
「私にはわかりません…」
「どうしてアスラントの反応が…とにかく、花嫁さんが心配です。中に入る方法を探しましょう」
「あぁ、確かにね…私だって彼女を見殺しにするつもりなんてな「聞いてレイカ!博士は花嫁さんの生死よりエッグを優先しろって言うの!」…レミ君?」
「はぁ?エッグなんてどうせその辺に埋まってんだろ!なんならサーロインさんが花嫁になってあの祠入ってこいよ!」
「私たちは先に行こうか、ルーク」
「そうですね、先生」
「待ってくれレイトン君」
取り残されたアーリアを呼び、去ろうとする先生とルーク。
サーロインさんは両手に花の状態から逃げようとしているがあたしとレミがそうはさせない。
そんな感じで、未だにエッグの情報は欠片もないが、どうやらこの村は一筋縄ではいかないようだ。
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