第十一章 風の谷のヨーデル
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「いーまからぁいっしょにーこれからぁいっしょにー殴りに行こうかー!」
「レイカ、その選曲はあっているのかい?」
「え、あってますよ。テンション高く強風に立ち向かう曲」
見知らぬ場所を先生と二人で歩くのは久しぶりで、ちょっとだけ楽しい。
さっきは危うく殺されかけたけど。
ここマリードールは、ただののどかな村かと思いきや、何軒か屋根が吹き飛んでいる建物があって何かしら困り事がありそうな予感がする。
てか絶対あの風のせいだろ。
なかなか立派な教会を通り過ぎると、道の先に見知った後ろ姿が見えてきた。
「みんなー!」
「レイカ!もう体調は大丈夫なの?」
「うん!バッチリではないけど、今のあたしは最強装備とレイモンドさんの最強バフが掛かってるから大丈夫!」
「…最強装備?バフ?」
「いろいろと聞きたい部分はあるが、これで全員揃ったことだし先へ進もうか」
「何か手掛かりが見つかったのですか?」
先生がそう聞くと、レミは自前のカメラをすちゃっと構えた。
「手掛かりは今のところありませんが、これから結婚式を見に行くところです!」
「え、大丈夫?花嫁さんふっ飛ばされない?」
「教会は通り過ぎたようだが」
「それが、あの丘の上で結婚式を挙げるみたいで…」
レミが指差す先には小高い丘が見えた。
小さな祠のような建物が見えたが、その丘の高さと遠さに思わずうわっと声が出た。
こうして黙々と丘の頂上を目指して歩き始めたのだが、あたしの足取りは徐々に重くなっていった。
「なんで…こんな…風通しの…いい丘で…結婚式なんて…やるの…!」
「レイカさん、遅いですよ」
「はぁ…理由は違うけど…高齢者の苦しみが…よく分かる…」
足を持ち上げる高さより丘の傾斜が高すぎて全然前に進めない。
おまけに進めば進むほどあの嫌な風が強さを増していく。
まずい、これはテンションを持っていかれている…
そういう時は、とあたしは背中を物理的に押してくれているルークに話しかけた。
「…花嫁さん綺麗だった?」
「遠目からでしたけど、レイカさんでいう『天使』な人だと思いますよ」
「よーし!もうひと頑張りじゃー!」
「うわっ、急にやる気出さないでください!」
今まで背中を押してくれたお礼にルークの手を引っ張って丘を駆け上がった。
祠が見えてくると白いドレスを着た花嫁さんの姿がようやく見えた。
ホントだ…あれは天使だ!
「純白のドレスを身に纏った天使…眼福!!」
「どうやら結婚式には間に合ったようだ」
「けど、様子がおかしいですね。…何の騒ぎかしら」
祠前の人だかりが結婚式の雰囲気と反してザワザワしていた。
隙間から覗くと気弱そうな男の人が何かを訴えていて、周囲の人に止められて騒ぎになっていた。
お、これは結婚式でやると言われる「その結婚待った!」ってやつか?
そんな胸熱展開に期待をしたが、天使の表情が彼の行動を嫌がっていてどうやらそういう雰囲気でもなさそうだ。
「待って!待ってくれ!どうして扉が開いているんだ!どうしてジュリアが花嫁なんだ!!なぁ司祭様、扉を閉じておくれ!まさかジュリアを祠に入れるだなんて本気じゃないだろう?」
「ロミー、やめて…」
「ジュリア、君の気持ちも聞かせてくれ!本当はこんな結婚、望んでないんだろう!?」
「…私は、幸せよ。竜神様のもとにお嫁に行けるなんてこんな幸せなことってないもの…さよなら、ロミー。貴方も幸せになってね…」
花嫁さんは悲しそうに笑うと訴えている男の人に背を向けて祠の中へ入っていった。
「ジュリア!!」
「吹き渡る風に誓いを。新婦ジュリアよ、汝、竜神の妻となりて村に善き風をもたらしたまえ。善き風を!村に善き風を!!扉ァ、閉めェ!!」
やけにガタイのいい白い服のおっさんが、形式的な文言を言うと祠の錆びついて重そうな扉を閉めた。
え、結婚式ってこんな感じだったっけ…?
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