第十一章 風の谷のヨーデル
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マリードールに降り立った一行を、少し強い風と見上げるほど大きな風車が迎え入れた。
ルークは近くにいた野うさぎに駆け寄り、アーリアとそれを撫でていると、いつもなら何かしら騒ぐであろう人物がいないことに気が付いた。
そのレイカは珍しく最後尾で、ゆらりゆらりと歩いていた。
「………」
「レイカさん?」
「………なに?」
「大丈夫、ですか…?なんだかふらふらして…」
ルークがそう尋ねた時、一陣の風が吹いた。
帽子が飛ばされないように押さえて、もう一度レイカを見遣ると両腕を抱えて蹲っていた。
あきらかにいつもと違う様子に、ルークがレイトンを呼ぶとすぐにレイカのもとへ駆け寄り顔を覗き込んだ。
「せ、先生!レイカさんが!!」
「!レイカ?」
「風が、気持ち悪い…」
「風…?」
「ピッチがずれている上に不協和音のカエルの合唱の輪唱がエンドレスで頭に流れてる感じ…」
「具体的すぎて逆に分かりません…」
「さっきの揺れで酔っちゃったのかしら…」
「顔色が悪いな…ボストニアス号で休ませるといい」
「ありがとうございます、博士」
「……、…」
先生がサーロインさんにお礼を言ったところで、周りの音が遠退いて目すら開けていられなくなった。
次に気が付くとボストニアス号の仮眠室(女子部屋)のベッドの中だった。
横には先生が椅子に座っていて、バチリと目が合った。
あーもう、これ絶対お説教ルートだよ。
「気が付いたかい」
「短めでお願いします」
「何を…。とにかく、顔色もよくなってきたし安心したよ」
「あたし、運ばれた…?」
「あぁ、気を失っていたからね」
「それは、ありがとう…ございます」
申し訳なさと恥ずかしさで掛けられていた毛布を鼻まで被った。
意識なしで運ばれるなんて…絶対重い!
病弱キャラにだけはなりたくなかったのに!
「熱はなさそうだが、どこか痛むところは?」
「ない、けど…」
「けど?」
「………優しいじゃん」
「?」
「先生なら『この坂道を転がっていけば体調も治るんじゃないかい?』とか言いそうだもん」
「万全の君ならまだしも、ここまで不調な君にそんなことはしないよ、英国紳士としてはね」
「英国紳士はまずそんな発想しないだろ」
「フフ、調子も戻ってきたようだ」
「じゃあ「いや、せめて自立歩行できるまでは休んでいなさい」………」
あたしの恨めしそうな視線を背に、先生は静かに部屋を出ていった。
なんとなくだがこの不調、違和感は休んでどうこうなるものではない気がした。
ならどうするべきかと天井をぼんやり眺めた。
ふと思い付いたのは先生からもらった小瓶のネックレス。
外に出る時は割れると困るから船内にいる時だけ着けている。
私物入れからそれを取り出し、両手で包んで、念じた。
「これを着けると無敵これを着けると無敵これを着けると無敵…」
そっと両手を開き、ネックレスを装着するとウソみたいに身体が軽くなった。
しかも難なく起き上がり、歩くこともできた。
「おぉ!」
もしかしてこれ、怪しい呪物だったのか…?
いや、この際なんでもいい!これでみんなに追い付ける!
そおっと部屋のドアを開けて周囲を確認。
「よし、誰もいない」
「お呼びでございますか」
「どぉぉぉ!?」
「まだ部屋に入って5分も経っていないが」
「うぇぇぇ!?」
ドアの裏側に先生とレイモンドさんがいた。
何なんだよこの人たち、あたしへの信用は0なのか。
「申し訳ありません…私の操縦のせいでお身体に不調をきたしてしまうとは」
「いやいやいや、あたし酔ったんじゃないんでレイモンドさんは謝らないでください!ていうかなんで先生までここにいるの」
「君が無茶をして私たちを追いかけようとすることは安易に予想が付くよ」
「うっ」
「その途中で迷子になったり身動きが取れなくなる可能性を考えれば、私がここで見張っている方がいいからね」
「そ、それはごもっともですけど無茶はしてないよ!ほら、自立歩行できてるし!」
ドアノブから手を離し、じゃーんと自立歩行できますアピールをしても先生はジト目をやめない。