第十章 知らぬが仏
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
巨大グモとの死闘の末、あたしはどうにか勝利した。
というか叫んでいたらどこかに逃げてしまったのだが。
もう家の中に入るのも億劫で、干上がった水路のへりに腰掛け待っているとルークがやって来た。
「レイカさん…」
「あ、ルーク隊長。話ついた?次はどこ「ごめんなさい!!」…え」
突然の謝罪に、驚いてルークの方を見た。
いつもの生意気な顔はなく、涙は零していないがうるうるしている。
こんなことは初めてでさすがのあたしでも狼狽える。
「な、何?どうしたよ、ちょっと」
「僕、焦ってたんです…最近ナゾが難しい気がして、解けないナゾに限ってレイカさんが勘で解くから悔しくて…」
「えぇ…」
ナゾが解けないから悩むやつなんてデルモナ学長ぐらいだと思ってたのに、ガチで悩んでるよこの子。
「僕にできることは限られてるから、1つでも多くナゾを解こうとしたら、レイカさんがどんどんおかしくなっていって…僕、ぼく…!」
「え、ちょ、待って、あたしそんなにおかしかった?むしろ絶好調だったんだけど」
確かにさっきははたきを掴んで奇声をあげてたからそう思われるのも無理もないけど。
どうすんだこれと家の前であたし達を見守る大人たちに視線で助けを求めたが、授業参観で我が子を見るかのようなほほ笑みを浮かべているだけだ、使えない!
「ルーク、できることは限られてるって言うけどそんなことないよ。ナゾを解くこと以外にも、ドリ◯ル先生やったり聞き込みやったり、助手業も板についてるじゃん」
「………」
「なんならこれから先、あたしの代わりにナゾを解いてもらっても「それは自分で解こうね」くっ…」
「言っただろうルーク。レイカは君のせいでおかしくなったわけじゃない」
「そもそもおかしくないから。正常だから」
自分そっちのけで揉めだしたレイトンとレイカを見上げ、ルークはなんだかこの状況が可笑しくなり笑い出した。
「……そうですね、いつものことでした!」
「おい!違うって!」
「さぁ、早くレッドウルフのところへ行きましょう!」
納得はいかないがルークが元気を取り戻した。
まぁ、その笑顔に免じて許してやろう。
で、なぜキヒヒばあちゃんも一緒にいるのか聞くと、どうやらガーネットちゃんのおばあさん(キヒヒばあちゃん)がモ◯の捜していた女の子らしく、共に廃坑へ向かうことになった。
その後、廃坑で◯ロにキヒヒばあちゃんを紹介すると初めは警戒していたが、少しすると思い出したかのように側まで寄ってクンクンと鳴きだした。
その姿はただの大型犬のようで、やはり荒野版もの◯け姫だったなと自己完結した。
しかも首飾り(エッグ)を外すと死にそうになっていたモ◯がたちまち元気になり、成長で次第に首を絞めていたことが苦しさの原因だったようだ。
「ほら首締まってただけじゃん」
「まぁ、一件落着したからいいじゃないか」
「まったく、人騒がせですね。でも、解決してよかったです」
3人は喜ぶルークを見て、成長したなとしみじみ思っていた。
モ◯の無実を説明すべく、保安官さんのところへみんなで戻ってきた。
◯ロの姿を見て保安官さんは三度見ぐらいしたが、落ち着いて話を聞いてくれた。
「なるほど。それじゃあ、ばあさんの言った通りだったんだな」
「そうです。レッドウルフには町を襲う意思はありません」
「にわかには信じがたい話だが、無闇に命を奪いたくはない。信じてみるとしよう。しかし、こうしてると本当にでかい犬っころみたいだな」
「やっと町のみんなに信じてもらえたねぇ。ところで、あんたたちはどうしてレッドウルフに会おうなんて思ったんだい」
「実は、私たちは、その首飾りを探すためにここへ来たのです」
「そうだったのかい。あんたたちはこれが欲しくてレッドウルフを追いかけたんだね?そういうことなら、この首飾りはあんたたちが持ってお行き」
「しかし、それはルビーさんの大切なものだったのでは?」
「あんたたちが来なければレッドウルフと再会できないまま、あたしもレッドウルフも死んでたよ。そうなれば、この首飾りだって野ざらしになってたんだ。あたしたちにはもう必要のないものさね。ほら、遠慮せず受け取りな」
キヒヒばあちゃんがエッグを差し出したので、ルークの背をとんと押し、代表でエッグを受け取らせた。
お礼と別れを告げ、ボストニアス号へ帰る道中、宣言通りエッグを手に入れてご機嫌なルークが思い出したかのように声を上げた。
「あれ、そう言えばレイカさん、動物ものは感動するんじゃなかったでしたっけ?」
「疲れて感動する気力残ってない…」
「?何か疲れることしたの?」
「………知らぬが仏だよ」
「「?」」
?を浮かべたままのレミとルークに、知らないって幸せだよな…と改めて今日の自分を労った。
.