第十章 知らぬが仏
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廃坑を出て保安官さんの詰所の近くまで戻ってきた。
まさかの人違いで振り出しに戻って再び女の子を捜さなければならなくなった。
「それにしても、レッドウルフが捜している子って誰なのかしら」
「レッドウルフは匂いが違うって言ってましたけど」
「匂いねぇ。その情報から探し出すのは私たちにはまず無理ね」
「やっぱ山犬に育てられた女の子じゃないとダメなんだよ。土地の開拓のせいで住処を追いやられて町に復讐を誓ってるサ◯みたいな女の子」
「………」
「それ、だいぶ具体性を帯びてない?」
「レッドウルフの言っていた女の子がもしこの町の住民でなかったとしたら…」
「そうか、私たちのように偶々この町を訪れた人物たったとしたら、もうここにはいないかもしれないな」
「うーん、おばあちゃんなら知ってるかも?この町の誰より物知りなんだもん」
「ではその女性に話を聞きに行こうか」
「おばあちゃんの家だったらすぐそこの一軒家だよ」
「それはちょうどいい。さっそく訪ねてみよう」
ガーネットちゃんが指差した家はあの年季の入った家だった。
いきなりこんな大人数で押しかけるのはどうかと思ったが、ガーネットちゃんのおばあちゃんは留守だった。
家の中は手作り感のあるカントリー調で部屋の中心にある糸車が存在感を放っていた。
へぇと部屋を見渡していると、天井に手の平大ほどのクモがいることに気付いてしまった。
あたしは急いでこの緊急事態を先生に伝えるべく、さり気なくみんなの後ろに回り、小声で先生の袖を引っ張りまくった。
「先生先生先生先生先生先生…!」
「どうしたんだい…?」
「あれ…!」
指差した先のクモを見て、先生はすかさずレミの方へ視線をやった。
そう、レミは大の虫嫌いで、近くに虫がいるだけで我を忘れて暴れ出すのだ。
ミストハレリのアランバード邸ではクモの巣だけであんなに暴れていたから、あんなでかいクモを見たらいろんな意味でただでは済まない。
「本人は気づいていないようだし、クモも糸を上り下りしてるだけだからきっと大丈夫だよ」
「でももし気づいたらこの家倒壊しますよ…!」
それはまずいな…と先生は顎に手をあてて考え込んだ。
何か棒的なものはないかと周りを探していると何も知らないレミたちが写真立ての話題をし始めた。
その写真立てに近づくためにレミが移動するとクモは揺れ、あろうことかレミの頭上に降り立った。
こんなのクモが嫌いじゃなくても絶叫級の状況だ。
「〜〜〜!!」
「ん?レミ君、じっとして。頭に「サーロインさん!見てあのとうもろこし!カッチカチでカーラーにちょうど良さそうですよ!!カーラー使ってるか知らないけど!!」
「え?博士、今私に何か…」
「レミさん、髪「アーリア!アーリアアーリア、あぁ、アーリア…!」
「ちょっとレイカ、大丈夫…?様子が…」
「それよりレミ、この写真を見てごらん」
先生がレミの注意を引いてくれた。
その隙にサーロインさんとアーリアに軽く事情を説明するが、2人が理解してくれず小首を傾げたままだ。
「苦手なら尚更早く取ってあげるべきでは?」
「取ってあげたいけど気づかれないようにしないとこの家が倒壊するって言ってんの!」
「なぜ倒壊するの?」
「アーリア…レミはね、破壊神なんだよ」
「「?」」
その時、バァンと扉が勢いよく開いて、紫のローブを着たおばあさんが現れた。
もう何、これ以上変なこと起きるなよ!
「あたしの家に勝手に入ったのは誰だい!」
「ルビーおばあちゃん、お帰りなさい!」
最悪のタイミングでばあちゃんが帰ってきた。
しかも見覚えがあると思ったら、さっき保安官さんと揉めてたキヒヒばあちゃんだった。
「おや、ガーネットじゃないか。何なんだい、この変な連中は。あたしのいない間に何があったんだい?」
「ねぇ、おばあちゃん。レッドウルフが人を捜してるの。わたしによく似た女の子なんだって」
「なんだってそんな話を…いや、あんたに聞くのは後にしよう。まずはこの薄汚い連中を追い出さないと」
「ねぇ、おばあちゃんったら…」
「ほら、何してんだい!どういうつもりか知らないけれど、孫娘にはこれ以上近付かないどくれ!」
おばあさんが玄関の横にかかっていたはたきを掴むとこちらに向かってぶんぶんと振り回し始めた。
誰に当たることもなかったが、なんとはたきがクモの糸を絡めて、レミの頭からクモが釣れていた。
あたしは目視される前にそのはたきをガッシリと両手で掴んだ。
「おおおおおおばあさまぁぁぁ!!素敵なはたきですね!あ、こんなところに汚れが!あたしがほろってきますね!!」
おばあさんからはたきを抜き取ると、レイカは大声を上げながらはたきを抱えて外へ出た。
「何なんだいあの小娘は!?あたしのはたきをどこへ持っていくんだい!」
「ご婦人、落ち着いてください。私たちはレッドウルフの事で貴女にお話があるのです」
「僕のせいですか…」
「え?」
「僕がナゾを独り占めしたから、レイカさんがおかしくなっちゃったんですよ…!」
「いや、それは違うよルーク。レイカは…」
「そうよルーク!ちょっと今日は様子がおかしかった気もするけど、レイカがよくわからないことを言い出すのなんていつものことじゃない」
「だって…だって…!」
「あんた達、さてはあたしの家財道具を狙ってるんだね!!そうはさせないよ!」
「おばあちゃん…」
ぐずるルークにそれを宥めるレイトンとレミ、暴れる老人と泣きそうなガーネット、家の外では何と戦っているのかレイカが叫んでいる。
この混沌とした状況に取り残されたサーハイマンは静かに引いていた。
「これが、倒壊の予兆…」
「いや、違うと思うよアーリア」
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