第十章 知らぬが仏
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
町の奥へ進むと、逃げ惑う人の姿と、通りを闊歩している赤い毛並みの大きな狼がいた。
その首の下にはエッグがちらりと見える。
「あれは…」
「レッド、ウルフ…」
「荒野版も◯のけ姫…?」
「もの……え?」
隣でルークが何言ってんだコイツって顔をした。
モ◯は何度か大きく吠えていたが、周囲に睨みを利かせると特に何もせずに去っていった。
それを今まで何度か見かけた黒服の二人組が追いかけていく。
「先生、今のって…」
「あぁ、間違いない。しかし、なぜ獣の首にエッグが?」
「町の人の姿が見当たらなかったのは、さっきの獣を警戒してたからだったんですね」
「確かにあんだけでかい山犬が来たら食べられちゃいそうだしね」
「山犬…、狼じゃ…?」
「黒服のヤツらが追いかけて行きましたよ。僕たちもすぐに追いかけないと、先を越されてしまいます」
「確かにその通りだが、既に行方を見失った後だ。見知らぬ土地で不用意に動かない方がいいだろう。特に周りが荒れ地とあってはね」
「追いかける前にこの辺りで情報を集めた方がよさそうですね。あの人に話を聞いてみましょう!」
レミが指差した先には、建物の柱の影でガタガタ震えている荒野のタフガイがいた。
そんなに恐いなら建物の中に避難すればいいのに。
「よ、よよ、よかった。今回も無事に追い払えて、本当によかった」
「またお会いしましたね」
「あんたたち、旅の人なんだろ?こんな時に来るなんて運が悪い。悪いことは言わないさ、早く逃げなよ」
「どうやら大変なことになっているようですね。先ほどの獣は?」
「アイツは最近この辺りを荒らしてるレッドウルフだ。荒れ地を越えてやってきたのか、ここ最近、しょっちゅう町にやって来て俺たち住民の生活を脅かしてるのさ」
「レッドウルフがどこから来ているのかご存知ですか?」
「ひぃっ、そんなこと知りたくもねぇ!ヤツの住処なんか探した日にゃあ、腹の中に真っ逆さまだぜ。そんなに詳しく知りたいなら、保安官にたずねてみることだな。さっき、そこの食堂に入ってったぜ」
そう言うと荒野のタフガイは左側の建物を指差した。
建物の看板には【カウボーイ食堂】と書かれている。
あたしたちは保安官を探しにその食堂へ入った。
店内は外とは異なり、人が賑わい何やらどんちゃん騒ぎをしている。
その宴の食事なのか、テーブルの上にはどでかいステーキやテーブルの直径ほど長いソーセージのホットドッグなど、とにかく美味しそうなものが置かれている。
「レイカ?お昼は先ほどボストニアス号で済ませたはずだよね?」
「いやぁ、死ぬほど腹が減ってるわけじゃないですけどぉ…はっ、先生!あの生ハムヤバい!あんな巨大なの初めてみた!天国かここは!」
「生ハム、いいですよね…」
カウンターに置かれている原木の生ハムについて、あたしと先生とレミとで談義していると、目を離した隙にルークとアーリアがフラフラと揺れているスーツを着た福耳のおじさんに絡まれていた。
相手をよく見ると顔も赤いし十中八九酔っぱらいだ。
どうやらカードのナゾを出されたらしく、2人は並べられたカードを見つめて頭を悩ませていた。
アーリアにヒントを耳打ちで伝えると答えをひらめいてみごと正解のカードを当ててみせた。
少年のむくれ顔はさて置き、アーリアの微笑があたしの全てを浄化した。
「おじさんもう一回です!今度は僕が当てます!」
「えー、おこちゃまには難しいんじゃないかなぁ?」
「ではカードをこうやってこうやって、ほら、おじさんとゲームしたくなってきただろう?」
「カービンさん、あんた酔っ払ってるな?こんな子供相手にイカサマなんて大人として恥ずかしくないのかね」
すると赤いスカーフを巻いたザ・カウボーイみたいな人が来た。
カービンさんと呼ばれた酔っぱらいはビクリと席から立ち上がった。
「ほ、保安官!わしゃあそんなつもりじゃ…」
「あんたの人となりは知ってるがこんな子供にまで絡むのはやりすぎだ。家に帰って頭を冷やすことだな」
「ウィック…」
保安官さんが静かに諭すとカービンさんはしょんぼり帰っていった。
ナゾの性格は悪かったけど無害だったしあそこまで落ち込まれるとなんだか可哀想な気がした。
「災難だったな、キミたち。カービンさんは悪い人じゃないんだが、ちょっと浮かれすぎてしまったようだ。この辺りでは見ない顔だが、うちの町に何の用で来たんだね」
「僕たち、探し物をしているんです」
「さっきの獣が首からかけていたものです。あの獣の行方に心当たりはありませんか」
アーリアがそう尋ねると保安官は目の色を変えて、声のトーンを少し落とした。
「レッドウルフに会いたいだって?なんてことを言い出すんだ!とにかく、この話をここでするのはよそう。住民たちを怯えさせたくないからな。もし、話の続きをしたいと言うのなら町の奥にある詰所に来てくれ。詳しくはそこで話そう」
そう言うと保安官さんは食堂を出ていった。
めんどくさいなーと思っていると隣でルークがまだむくれていた。
.