第九章 幸せのカタチ
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束の間の休息も終わりボストニアス号へ戻ってきた。
歯磨きを終え、さぁ寝るかと廊下を通っていると途中の部屋に先生がいた。
机に向かって座っているので何をしているのかわからなかったが、廊下から覗いているあたしに気付いて先生が手招きしてきた。
なんだなんだと先生の隣に行くと机の上にはハンマーやペンチが置いてあり、細かい水晶の入った小瓶のネックレスを渡された。
「わぁ!綺麗!」
「君にお土産だ」
「お土産?マルチノでこんな綺麗なの売ってたんですか?」
「いや、小瓶はマルチノで、中の水晶はムスロッホで採れたものだよ」
渡された小瓶を掲げ、小さく歓声を上げた。
小瓶に収まるように細かく砕かれた複数の水晶が光を反射してキラキラと輝いている。
…やっぱり、一緒に行ったらきっと楽しかっただろうなぁ。
その時、喜んでいたレイカの表情が珍しく曇ったことにレイトンが気付いた。
「気に入らなかったかな」
「え!?ううん!すっごい嬉しいよ!」
「そういえば昼間も浮かない顔をしたときがあったね」
「あー、うん、過程って大事なんだなって」
「過程…?」
「あたし、エッグを早く見つけることがアーリアのためだと思ってたんですけど、おじさんはアーリアに幸せを教えるために島を廻らせて…なんか、エッグを見つけることは目的だけど、今のアーリア自身の助けにもなってあげなきゃって思って…」
あの時あたしの勘の通り、そのままエッグを手に入れていたらアーリアはこの島でたくさんの幸せを見ることはなかったことになる。
「思い出している記憶もなんか土地の記憶だけで、アーリア自身の記憶ではない気がしなくもないし」
「そうだね。確かに、今のアーリア自身のことやこの旅の後のことまでは考えていなかったね」
スッと先のことを加えた先生に、なんだか劣等感を抱いた。
いや、同等とは考えたことないけど自分の考えがあまりに浅はかで…
「やっぱり先生は考えが大人ですね。ま、どうせあたしは子供ですけどー」
「そんなことはないだろう?君は今でも十分アーリアの支えになっているさ」
「でも…」
「それに、君の考えが子供だと思ったことはないよ」
「え…」
「僕は君の予想もつかない考えを聞くことも好きだよ」
優しく笑うレイトンに、顔を赤くさせたレイカはあわあわと口を開閉しながら2・3歩下がった。
「~~!そ、そういうところ!」
「?」
「レイトン君、話が…おっとレイカ君、取り込み中「うるぁ!!」ぐふぉ」
部屋にやって来たサーハイマンへ反射的にボディーブローを決めてレイカは出ていった。
が、すぐ戻ってきて「お土産ありがとう!!」と言い放ち走っていった。
「博士、彼女の言う『そういうところ』とは何なんでしょうか…」
「…そういうところだと思うよ」
ふむ、と悩んでいる素振りを見せているが、その口角が僅かに上がっているのをサーハイマンは見逃さなかった。
逃げ出したレイカはメインフロアのソファに座り、パタパタと顔を仰いで頬の火照りを冷ましていた。
握っていた小瓶のネックレスを首にかけ、改めてそれを眺めていると横からスッとレミの顔が現れた。
「なーににやにやしてるの?」
「ファ!?に、にやにやなんてしてないよ!」
「嘘おっしゃい!私に教授とレイカ関連で隠し事が通じると思ってるの?」
「いや、それこそどういうことなの」
それににやにやしているのはどちらかと言えばレミだ。
おまけにアーリアまで一緒に連れて、ほら、話についていけなくて不思議そうな顔してるよ。
「で?その大事そうに握ってるものはなんなの?」
「せ、先生からもらった、お土産…」
「やだ!教授ったらやるじゃない!」
「これは…水晶ですか?」
「うん、あたしこういう鉱石が好きで…」
「なるほど、ムスロッホの時の水晶ね。………あ、尊い」
「レミ、変なところで深読みしないで」
「私にはよく分かりません。何が尊いんですか?」
「ちょ、アーリア、やめ「私が教えてあげるわ!!」
変なスイッチが入ったレミは、あたしと先生について熱弁し始めた。
アーリアもアーリアで生真面目に聞くものだから、あたしにとってはもはや公開処刑のようだった。
「つまり、レイトン先生はレイカさんが好き、ということですか?」
「それだけじゃないわ!レイカも、教授のことが好きなのよ!」
「それでは二人は伴侶ということでしょうか?」
「いやいやいや、二人して白熱しすぎだから!しかも伴侶って飛躍しすぎ!」
「では好きあっている二人はなんですか?」
「な………なんでもないよ!ほら、早く寝ようよ!」
勢いよく立ち上がったレイカは仮眠室へと去っていった。
「はー!私今日絶対占い1位だったに違いないわ!」
「不思議です」
「アーリア?」
「これが現代人の心理的変化…?私には理解できません。でも…」
「?」
「レイトン先生とレイカさんが仲良くしているところを見ると、何故か胸が暖かくなるんです」
「!アーリアもわかってくれるのね!そうなの、あの二人はね…」
2人の談義は赤い顔をしたレイカが再び呼びに来るまで続いた。
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