最終章 きっと、いつか
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アスラントが眠りについて数日後―――
今日はレミがレイトンの助手を辞め、ロンドンを去る日であった。関係各所に別れの挨拶を済ませ、今まさにレイトンへの挨拶を終えたレミは、寂しさと不安を混ぜた表情でレイトンを見た。
「それであの、今日レイカは…」
「まだ体調が優れなくてね」
レイカはロンドンに帰ってから体調を崩し寝込んでいる。そのためレミはあの日以来、レイカにだけ会えずじまいであった。
残念そうに眉を下げたレミはポケットから一通の手紙を取り出した。
「じゃあ、この手紙を…」
「レミ、これは預かれないな」
「えっ」
思わぬ返答にレミはレイトンの顔を真正面から見た。まさかあのレイトンに断られるとは夢にも思っていなかった。やはり怒っているのかと思ったが、レイトンは柔らかく微笑んでいた。どういう意図の表情なのかレミが混乱していると、その隙に荷物の入ったトランクをするりと取られてしまった。
「外まで送ろう」
「…はい」
言われるがまま見慣れた廊下を進む。少し俯き気味のレミを横目にレイトンは窓の方へ目を向けた。
「彼女は手紙よりも直接会いたがると思うよ」
「そうですよね。レイカだったら、…」
文句を言いながらすっ飛んできそうだ、と思ったが、レミの正体を知った上で、レイカは今まで通り接してくれるだろうかと不安が過ぎり口を噤んだ。
「レイカだったら、何だい?」
「いえ、私には分かりません。私は、みんなを裏切ってしまったから…」
「ふむ、それについては許せないと怒っていたな」
「やっぱり…」
「しかし君は勘違いをしているようだね、レミ」
「勘違い?」
裏切ったこと以外にも何か怒らせるようなことをしただろうかとレミは足を止めて深く考え込んだ。その時、前を見ていたレイトンは予期していたあるものを見つけてフッと笑みをこぼした。
「レイカが一体何を許せないのか、それは本人に聞いてみようか」
「え?」
「レミ!!」
「レイカ…」
声のする方を向くと寝込んでいるはずのレイカが正門の横に立ち、息を切らせてまっすぐレミを捉えていた。そのまま目の前まで来たレイカの視線に耐え切れずレミは下を向いた。
「ごめ「謝らないで!」
「え…」
「レミが謝れば謝るほど、今までのあたしたちの思い出が否定されてるみたいで…すんごいイヤだ!」
思いもよらないレイカの言葉にレミは驚き、謝ることしか考えていなかったため謝罪を封じられ戸惑った。が、レイカは構わず話を続けた。
「あたしはレミと一緒に旅したり遊んだり話したり、全部楽しかったよ。…レミはそうじゃなかったの?」
「そんなの…楽しかったに決まってる!でも私はみんなを裏切って…」
「裏切ってない!!だってレミがそんな器用なことできるとは思わないし、実際大したことやってないじゃん!」
「う…」
レミの痛い部分に何かが刺さる様をレイトンは垣間見た。悪気は全くなさそうだが半ば暴走気味のレイカにはレミを気遣う余裕などないのだろう。レイトンがそう思いながら静観していると騒ぎを聞きつけたルークがやって来た。状況が読めず困惑しているルークにレイトンは、二人を見守ろう、と人差し指を立てて口の前に当てた。
「ミストハレリの時も手紙を出したのはルークだし、アンブ…アンブレラの時もジェニスさんっていうかミリーナさんだったし、モンテドールの時もシャロアさんで、今回の旅だってデスコールだった!誘導なんてされてない!」
「でも、ルークを人質に…」
「そりゃあ、ブロネフかあたしたちかってなったらあっち優先になっちゃうのは悔しかったけど、それはレミにとって大切の度合いが違っただけ。そこはどうしようもないもん。何かしてたとしても、あたしたちは誰一人としてレミを責めてないよ!」
「!」
「だから、そのことを気にしていなくなるなら、いなくなってほしくない!」
レイカの言葉がレミの胸を打つ。勘違いの答えが分かり、レイトンの方へ振り返ると彼は微笑み頷いた。その隣にいるルークも同じように大きく頷く。
裏切ってしまったと自責の念を勝手に膨らませていただけで、誰もレミを責めてはいなかった。それに気付けた事で胸につかえていた不安が不思議と消えていくのをレミは感じた。
「ありがとう、レイカ」
「じゃあ…!」
「あのね、私がみんなの元を離れるのは、自分を見つめ直すのもそうだけど、初めて、自分からやりたいって思えることが見つかったからでもあるの」
「っ…!」
「だから、ちょっと寂しいけど…笑って送り出してほしいな」
「う」
涙を溜めて笑うレミを見てレイカの顔が歪む。次の瞬間にはレイカの両目からボロボロと涙がこぼれ始めた。
「うぅぅぅぅ…!そんなこと言われたらそうするしかないじゃんかぁぁぁ!」
「うん、ごめん」
「ごめんじゃないぃぃぃ!」
「あ、ごめん!じゃなくて!えっと…」
おいおいと号泣し始めたレイカとしどろもどろになっているレミを見かねて、レイトンは二人に近付いた。
レイトンが専用ハンカチをレイカに手渡すと、瞬時にそれで顔を覆い、少しするとくぐもった声で「分かった」と返事をした。
ゴシゴシと顔を拭った後、目元を赤くしたレイカは出来る限りの笑顔を見せた。
「でも、いつか絶対帰ってきて!」
「もちろん。みんなにふさわしい、レミ・アルタワになって戻ってくるわ」
「それは今から楽しみだな」
「今でも十分なのに、どんなレミさんになってしまうんでしょうか」
「フフ、なんだかすごく心が軽くなった気がする!これで心置きなく…」
見守っていたレイトンとルークも輪に入り、晴れ晴れとした表情になったレミは、何かを思い出したかのように言葉を詰まらせた。
ここに来てまだ何かあるのかとレイカが小首を傾げると、レミが唐突にレイトンとレイカの手を取った。
「心残りがあるとすれば…教授とレイカの展開を間近で見ることができないことよ…!」
「………え、なに?」
「助手になった時に感じた通り、二人は恋に…いいえ、恋なんて生温いものじゃない、確かにそこに愛が育まれているのに…!三年も見守ってきてあと一歩が進まないのよ!!」
「「………」」
「でも安心して。会はルークに一任して二人の近況を逐一報告してもらうことになったから」
「責任持って報告します」
「何を?」
「何かあったらすぐ駆けつけるから!」
「何かとは…」
微妙な顔をしているレイトンとレイカを見て、ひとしきり笑ったレミはレイトンからトランクを受け取った。
「じゃあ、そろそろ行かなくちゃ」
「身体に気をつけて無理はしないようにね」
「レミさんが帰ってくる頃には僕も立派な助手になってますから!」
「行ってらっしゃい、レミ!」
「行ってきます…!」
こうしてレミは眩しい笑顔で旅立った。すごく寂しいけど、また会うときにはもっとキラキラしたレミになっているはずだ。
その時までにレミにたくさん笑ってもらえるような話を用意しておこう。
…ま、そんな意気込まなくてもどうせ訳わからんことに巻き込まれるんだろうけど。
「で、レイカさん。体調は良くなったんですか?」
「家出る時は平熱だった………と願っている」
「熱が下がったらまっさきに反省会だね」
「んもう、すぐそれだよ。レミの門出なんだからさぁ、空気読め…うそうそうそ、あ、熱上がってきたかもーたいへーん」
「僕、帰りますね」
「あぁ、気をつけて帰るんだよ」
「ルーク君なんで!?なんで今帰る!?」
「私たちはゆっくり帰ろうか」
「レミ!今すぐ帰ってきて!レミィ!!」
とにかく、レミなしでこの先やっていけるのかが、あたしは不安で不安でしょうがない。
最終章 きっと、いつか
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