最終章 きっと、いつか
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静まり返った審判の間。
身体中が痛み、力が入らない中でレイトンはなんとか立ち上がり、倒れたレイカの元へ足を引きずった。その間、レイカの隣にいるアーリアが名前を呼んで揺さぶっていたが返事はなかった。
近くに来たレイトンに気付いたアーリアは立ち上がって場所を開けた。レイトンは横たわるレイカの顔の前で膝をつき、投げ出されている左手を掴んだ。すると下りている睫毛がわずかに震え、ゆっくりと目蓋が開き、ぼんやりとした眼がレイトンを捉えた。
「レイカ…!」
「せんせ……みんな、いきてる…?」
「あぁ、君のおかげだ」
レミがルークの元へ向かい、無事を確かめ合っている。デスコールもブロネフも自力で上体を起こすだけの余力はあるようだ。だが、全員息絶え絶えで身動きするのがやっとなくらいだろう。
見回すこともできないレイカはレイトンの言葉に「よかった」と吐息を溢した。
レイトンは眉間に皺を寄せたままレイカの手元へ視線を落とした。掴んだ左手は恐ろしく冷たかった。少しでも熱が移るように両手で包み暖めるが逆にその冷たさがレイトンを蝕む。力強く握られた手を不思議そうに眺めてから真剣なレイトンの顔を見ると、突然レイカがふっと笑った。
「先生」
「なんだい」
「残念ながら…あたしは、…先生の妹では、ないよ…」
「っ…こんな時に何を」
「ふふ…流れかな、って…」
力なく笑うレイカに笑顔で応えることはできず、レイトンは眉間の皺を深くさせた。このまま彼女が消えてしまうのではないかと思わざるを得ないくらい弱々しい笑顔だった。
その時、いつの間にか離れていたアーリアが息を切らせて二人の元へ走ってきた。
「レイトン先生!このナゾを解けば皆さんを助けられるかもしれません!」
「!」
アーリアの言葉に一縷の望みを見出し立ち上がろうとしたレイトンだったが、握っている両手が躊躇した。
不意に頭をよぎった、今この手を放していいのかという迷い。
すると何かを察したレイカはレイトンの手からするりと抜け出し、追い払うように手をひらひらさせた。言葉はなくとも背中を押された気がしたので大きく頷き、立ち上がろうとするレイトンをアーリアが補助した。
「必ず助ける。ここで待ってるんだ」
「うん…」
消え入るような声に振り返りそうになったが、そうしなかった。一刻も早くこの状況を、彼女を、何とかしなければならない。
アーリアの肩を借りてナゾのある石版まで連れてきてもらった。そして石版の文字をアーリアが読み上げ、レイトンがナゾに挑む。
いつになく集中しているレイトンの横顔をアーリアは祈る思いで見守った。程なくしてナゾの第一段階が解かれ、モニュメントが回転し石版に新たな文字が表示された。アーリアはその内容を読み上げず、自ら石版に手を伸ばした。それが意味することを、自力で解読したレイトンが驚いてアーリアを見る。
「アーリア、これは…」
「これでいいんです」
アーリアが砂時計の紋様を操作するとモニュメントが逆回転し始めた。一回転したところで停止すると天井から金色の光が差し、先ほどと同様に5つの石に向かって照らし出した。
その神秘的な光景に目を奪われたレイトンは、ふと全身を苛む痛みがなくなっていることに気付いてもう一度アーリアを見た。彼女はそっと微笑み頷いた。
「身体の痛みが、消えた…?」
「すごい…もう何ともないです!」
元気そうに喜ぶルークとレミの声にレイトンは振り返り安堵した。反対側ではデスコールが立ち上がれるほどに回復していた。
きっとレイカもいつものように悪態をつきながら起き上がって…―――
「レイカ?」
それを見た時、全身が強張った。
彼女だけが先ほどと変わらず、音もなく横たわっている。
レイトンは足を縺らせながらレイカに駆け寄り、壊れ物を扱うようにそっと抱き起こした。力の入っていない頭が凭れ掛かる。
肩を揺さぶっても、何度名前を呼んでも、その瞼は閉じられたままだった。徐々に大きくなる声にルークとレミは不安そうに顔を見合わせ、近くにいたアーリアはレイカを見て言葉を失っていた。
ついさっきまで、笑っていた、言葉を交わしていた、
なのに、なぜ、違う、嘘だ、
抱き起こした際にこぼれ落ちた腕が、氷のように冷え切ってしまった手が、レイトンから冷静さをさらに奪っていく。
「アスラントの恩恵はレイカには効かない、ということか」
「っ!」
異変を感じたデスコールが光線を受けた時の患部を押さえながら近くまでやって来ていた。彼の言葉にやるせなさが募る。
恩恵が効かないとどうなるんだ。レイカが何をしたというんだ。私たちを救おうと諦めなかっただけなのに。なぜそのレイカは救われない。
私はまた、君を救うことがーーー
ぶつける先のない感情を堪えながら、レイカの顔を見る。脳裏に浮かぶのは彼女の笑顔ばかりで息をするのも苦しいくらい胸が痛んだ。が、同時にその笑顔につられてレイトンは思わず笑みをこぼした。
「君は、人を笑顔にする天才だね」
「…さっきは私のことをずいぶんと買い被っていたが、私は君が言うほど立派な人間じゃないよ」
「私一人では、今の私にはなりえなかった」
「でも、情に厚くて芯の強い、君らしい解釈だった」
「君に伝えたいことや聞きたいことが、たくさんあるんだ…っ」
「お願いだ、目を開けてくれ…君がいなくては、僕は…!」
レイトンはレイカの頭を抱え込むように力一杯掻き抱いた。
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