最終章 きっと、いつか
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地上からアスラントドールの破壊活動の音が響き、先生は顔を上げてアーリアに向きなおった。
「このままでは、町は全滅してしまう。教えてくれ、アーリア。まだあるはずだ、人類を救う方法が…」
「……レイトン先生、こっちです…」
長い沈黙の後、アーリアは表情を曇らせたまま神殿の方へ踵を返し、先生もそれに付いていった。
ダメだ。行っちゃう。せっかく外に出てきたのに。
あたしはすかさず二人のあとを追いかけた。背後でルークに呼ばれた気がしたが、返事どころか振り返る余裕すらなかった。
この状況で、あの表情で、神殿へ案内するアーリアを見て浮かび上がった一つの予感。アスラントドールを止めるために、あの紫の光線を浴びる…これが当たっていたとしたら本当にどうしたらいいかわからない。
「先生!アーリア!」
「……レイカさん」
神殿の中で佇んでいた二人に追いつくと、アーリアがあたしと先生を見て何か言いたげに口を開いたがすぐに閉じてしまった。迷いを振り払うように首を横に振り、アーリアは目の前のモニュメントを指さした。
「この遺跡と、アスラントドールたちをコントロールしているのは…あの箱。あそこに注がれる光を止めることができれば…」
「光…」
「光を遮ることができれば、止められるんだな」
「…!!」
「デスコール!」
突然現れたボロボロなデスコールの姿を見て、アーリアは息を呑んだ。しかしそのことには触れずにデスコールの言葉に大きく頷いた。
「そうです…!そのためには、台座の前にあるスイッチに同時に乗らなければなりません」
「台座は5つか…」
レイトンは光の伸びる台座の一つを見て、いつもより低い声で呟いた。
アスラントドールを止める方法について、レイトンとデスコールはどこか違和感を感じた。本当にあのスイッチに乗るだけで、世界の命運が掛かったこの事態を収拾することができるのか。それにしてはあまりにも簡単すぎる。
「教授!私にも協力させてください」
「レミ!」
「やりましょう!先生、僕たちの手で!」
「ルーク…」
「これが、私たちの最後のナゾトキです」
どこか引っかかりを覚えている内に外にいたルークとレミが真剣な表情でやって来て、台座を埋める人数は揃った。二人は協力的ではあるが…
「他には!?」
「レイカ…?」
突然レイカが切羽詰まった声音でアーリアに迫った。そのただならない様子にレイトンが名前を呼ぶ。
もう一つの違和感はレイカだ。神殿の外にいた時はいつも通りだったが、この場にいる時だけ余裕がないように見える。事態の深刻さで真面目になっているというより、何かに怯え、焦っているような。
縋るように一歩近付いてきたレイカを見て、アーリアは申し訳なさそうに眉を下げた。
「台座の上に行く以外にも何か…ほら、全部解決できる緊急ボタンとか滅びの呪文とか!」
「他にはって…あのスイッチに乗るだけでみんなを救えるんですよ?」
そうだよねアーリア?と何の気なしにルークが訊ねた。その質問に自然と全員がアーリアを見る。
アーリアはその注目を避けるように目を逸らしたあと、重々しく言葉を紡いだ。
「…他に方法はありません」
「………」
「あの光は、レイトン先生たちの命を奪うことになるんです」
「「えっ」」
「それでも…それでも行くんですか?」
光の影響にルークとレミが声を上げた。やはりと腑に落ちた様子のレイトンはレイカを見た。しかし俯いてしまっているせいで表情までは見ることができなかった。
「これが、アスラントが貴方達に課した最後の選択です」
重苦しい沈黙が訪れた。
きっとみんなは迷い戸惑ってるだろう。世界か自分たちという天秤に。
あたしは、ずっと燻っていた何かが明確に怒りへと変わる感覚を味わっていた。エッグ探しも遺産の起動も計算の内で、停止方法を用意し台座は5つ。デスコールが言っていたみたいに、全部アスラントに踊らされてるようだ。
それぞれが突きつけられた選択に考え込んでいる中、ルークがあたしたちに背を向け歩き出した。その先は光が差す台座。それに気付いた先生がルークを呼んで制止させる。
「ルーク」
「みんなを、救うためですよね………先生、僕は行きますよ!」
振り返ったルークはいつも以上に大人びて見えた。この先の展開が分かっていなければ大いに心動かされるところだろう。でもあたしにとっては絶対に選んでほしくない選択だ。
「待ってよ。まだ何か方法があるかもしれない!そんな簡単に決めないで!!」
「でももう時間が「あたしはこんな馬鹿げたことで、ここにいるみんなに犠牲になってほしくない!」
焦りから声を荒らげてしまったと自覚はあったけど止められなかった。
みんながその選択をすることなんて火を見るより明らかだ。なのになんであたしはこんなに必死になって止めているんだ?未来を知っているから?知らなければ自分たちが犠牲になる道を選ぶだろうか?
今考えてもきりがない。あたしは静かに息を吐いて、ルークに真正面から問いかけた。
「ルークがいなくなったら、クラークさんとブレンダさんはすごく悲しむよ」
「………」
「もちろん二人だけじゃない。今までルークに関わった人たちみんなが悲しい思いをする」
「…それでも、僕はお父さんたちに生きていてほしいです」
「っ!」
クラークさんたちを出せば考え直すだろうと思ったけど甘かった。揺るがないルークの目を見て、むしろ返り討ちにあった気分だ。
ルークが行くと決めたのなら先生たちが行かないはずがない。先生は呼び止めていたけど、きっとそれ以上止めるつもりもないだろう。となれば一人反対しているあたしの話を聞こうとする流れになる。現に、窺うようなみんなの視線を感じる。申し訳ないけど、今何を言われても冷静に返せる自信はない。
あたしの足掻きは、考えは、自己中心的で自分の命が惜しい見苦しい人間に見えるだろうか…
その時、隣から先生がこちらに向かって手を伸ばす気配を感じて、あたしはそれを避けた。
「レイカ」
「…分かった」
説得でみんなを動かすことはできないということが。
このままここであたしが駄々をこねても時間が過ぎていくだけだ。
レイカはレイトンの顔も見ずに返事をして、一番奥にある台座に向かって歩き出した。行場を失った腕はそのまま下ろされ、レイトンは遠ざかるレイカの背中を見送ることしかできなかった。
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