最終章 きっと、いつか
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…っ!」
急いでブロネフたちの後を追うと、そこは来たことはないけど見慣れた場所だった。
ドーム状の広い空間に、スリープルスの遺跡でも見た見事なモザイク調の天井。意味深に置かれている段差の上にある壁際の青い石たち。そして中央には細かい字や紋様が記されている大きな石版とその上にそびえる五角錐のモニュメント。
ただの観光や調査であれば、感動を覚えるような荘厳な雰囲気なのに、今のあたしには恐怖の対象でしかない。
「おじさまやめて!」
「何のつもりだレミ!」
「私はもう、おじさまに間違ったことをさせたくない…!」
驚いたことに、モニュメントの下でレミがブロネフの腕に必死にしがみついていた。そのブロネフの手には短剣のような物が見える。さらに対面には箱のようなところに入れられ身動きが取れなくなっているアーリアがいた。
何がどう転んでも良いことが起こる予感は全くしない。
加勢しようとあたしたちも駆け出した。
抵抗するレミだったが、力一杯振り払われて倒れ込んでしまい、ブロネフは、
「アーリア!」
「やめろブロネフ!!」
「うぉおおお!!」
そのまま勢いよくアーリアの胸へ短剣を突き刺した。
「キャアァァ!」
「そんな!アーリア!!」
アーリアの悲鳴が広い空間中に響き渡った。
次の瞬間、アーリアのいる箱の底から紫の光が天井に向かって放たれ、先端の五角錐から反射するように5つの光が下方に差した。
ダブルショッキングな光景に、あたしの思考は完全に停止した。
すると神殿全体が大きく縦に揺れて、ルークが驚き声を上げた。
「『長い時が過ぎても尚、人は愚かなままだ。ならば滅ぶがいい…我らアスラントと同じように!』」
アーリアが無機質な声音で物騒なことを言い出した。
生きてる…?なら、よかった、けど。
続く神殿の揺れで隣に落ちてきた瓦礫を見る限り、決して安心できる状況ではない。
「ルーク、ひとまずこのホールの外に出るんだ」
「は、はい!」
「レイカ!」
「!」
先生に名前を呼ばれて現実に引き戻され、ほぼ反射的に先生とルークに付いていった。
そうだ、ここから脱出してしまえばいいんだ!そうすればあの紫光線を浴びずに済むし万事解決じゃん!
わずかな希望を持って外に向かって走った。しかしその希望はものの数秒で消え失せた。
「「「!!」」」
神殿の外に出るとすごい速さで下へ流れる岩肌が飛び込んできた。かと思えば突然視界が開けて青空と白銀の大地が目前に広がった。
「これは!」
「この遺跡は空に浮上している!」
「えぇっ!?」
「もう頭痛い」
考えることが多すぎてパンクした挙げ句、ラピ◯タってどういうこと。確かにラピュ◯っぽいとこあったけどさ!もう脳内で君を◯せてが流れ始めちゃったよ!
「あのちーへいーせーんー」
「レイカさん歌ってる場合じゃありませんよ!」
「こんな訳わからん展開になったら歌いたくもなるわ!せめてサビまで歌わせろ!」
「え、えぇ…」
「おぉ!素晴らしい」
逆ギレしたレイカにルークがドン引きしていると、ブロネフとレミが神殿から出てきた。
何が素晴らしいんだよ。これどうやって帰るんだ。
「これがアスラントだ。大いなる古代文明の英知だ!私が生涯をかけて追い求めた答えなのだ!」
「いや違う!そうじゃない!」
「何っ?」
強く否定した先生は厳しい表情で地上の方を見ていた。
イヤな予感をしながら同じ方向を見ると、ものすごい数の人型の飛行物体が神殿の下部から次々と放たれていた。
展開的に絶対あれじゃん。絶対ビーム出すよあれ。
案の定、飛行物体は光線を放ち、地上にあるありとあらゆるものに攻撃を始めた。その中にはスノーラも含まれ、白く暖かな町から黒煙が上がっている。
「あぁ!スノーラが!」
「これは…どういう事だ…何が起こっている」
思わずサングラスを外してしまうほどブロネフは目の前の光景について驚愕していた。
するとアーリアがゆったりとした歩調で神殿から歩いてきた。その目は青く輝いている。
「愚かな人間たち…ただ欲望のためだけに、アスラントの力を解き放った…これで人は、アスラントと同じ運命を辿ることになる…」
「お前は…」
「私は人間ではありません…私は、アスラント人に遣わされた使者」
「…!?アスラントと同じ運命を辿るだと…どういうことだ、話せ!」
「いいでしょう。全てをお話ししましょう」
アーリアは目を伏せると静かに語り始めた。
かつてアスラント人はその優れた英知で人間にそっくりの機械人形『アスラントドール』を創り出した。アスラントドールは人と同じように行動することができ、思考能力もあり、中には感情を持つ者ですらいたという。そんなアスラントドールをアスラント人は奴隷であるかのように扱った。
しかし、いつしかアスラントドールたちは自分たちが『アスラント人』そのものだと思うようになり…
「そして、ついにアスラントドールたちは人間に対して反乱を起こしたのです。アスラント人の行き過ぎた所業が神の怒りに触れたのか、アスラント人は自分たちが創った機械人形によって滅ぼされることになってしまいました。アスラントの意思を決定する7人の賢者たちは、最後の力を使い、アスラントの都市と共に深い氷の中に封じ込めました。1人の番人と一緒に」
「何だと…それじゃあ、私たちが蘇らせたものは…」
「アスラントドール。それは、アスラントの過ちそのもの…いえ、人類が犯した大罪なのです…」
縋るようなブロネフの問いに、アーリアは淡々と答えた。
てかアスラント、臭いものに蓋をしただけでは…?
いかにも
でもあたしの失望が可愛く思えるくらい絶望している人が真横にいる。
「私が追いかけていたものは…こんなものだったのか、こんなにも…馬鹿げた」
「ね、マジで今までの苦労「私は全てを捨てたのだ!」…声がデカいよぉ」
「金や名声などのためではない。私とて一人の学者だった。子供たちも…妻も…全てを犠牲にして、考古学史上最大のナゾを解き明かすことに人生の全てを捧げてきたのだ。人類を変えることができる、夢の英知を手に入れるために…!」
大声をもろに食らって耳鳴りのする耳を押さえながら、絶望に膝をついたブロネフを見下ろす。
本当に、なんでそこまでしちゃったのかなって思う。コイツがしてきたことを考えたら一ミリも同情はできないけど。
「私は、こんなことのために…こんなことのために、ここまでやってきたのか」
ついにブロネフは地面に手をついて力なく項垂れた。
それを先生は無言で眺めていた。
.
