第十九章 追憶の彼方
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「ぐあああああああっ!!」
「デスコール!!」
「「!」」
その時、デスコールとルークのただならない叫びが聞こえて、あたしと先生は声の元へ走り出した。角を曲がって飛び込んできたのは倒れている二人の姿。そして今までと違う何かが焦げた匂い。
すかさずルークの元へ向かうと、自力で立ち上がろうしていたので身体を起こすのを手伝った。
「ルーク!」
「ルーク!大丈夫!?」
「ぼ、僕は大丈夫、です…」
ルークは青ざめた顔で座り込み一点を見つめ小さく震えていた。視線の先には、デスコールが背を丸めて倒れていて、左奥に石像の頭がこちらを向いて落ちている。
どう考えても無傷ではなさそうだが…
デスコールに向かって声を掛けようとしたら自分でも驚くくらいか細い声が出た。
「だ、大丈夫…?」
「…光線がかすっただけだ。大したことは、ない」
それ全然大丈夫じゃない時に言うセリフ!しかもかすっただけって言うヤツは大概重傷だし!
先生はルークの無事を確認するとデスコールのそばへ駆け寄り、慎重に抱き起こした。
その際に聞こえたデスコールの苦しそうな呻き声に言い知れぬ恐怖を感じて、あたしの身体は金縛りがかかったように固まった。
「デスコール…」
「ひとつ、お前に言っておくことがある」
「なんだ…」
やめてほしいと思った。
この状況で一体何を言うつもりなんだ、と。
でも相変わらず身体は動かず、いつものように茶々を入れる空気じゃない。
そんなあたしの気も知らずに、デスコールは顔に脂汗を滲ませながら先生に語りかけた。
「お前は覚えているか。父と母が拐われて、取り残された日のことを…」
「なに…」
「あの日から、全てが狂ってしまったんだ…私やお前を取り巻く全てが…」
「君は、まさか…!」
「私たちは孤児となり、二人だけで暮らすことになってしまった。両親が遺してくれた屋敷はあったが、寂しく、苦しい暮らしだった。そんな時、里親が見つかったとの知らせが来た。だが引き取ってもらえるのはひとりだけだった。『エルシャール』という名の子供がな」
そこでデスコールは言葉を切ってレイトンを見上げた。
「お前は私と入れ替わって、『エルシャール』として、レイトン夫妻に引き取られたのだ」
「……!私は…記憶の奥に真実を閉じ込めてきたのか。エルシャールという名が、兄の名であることを…」
なんかとんでもない話をぶっ込んできた。
え、何?まず先生とデスコールが兄弟で?先生のエルシャールって名前はデスコールのだった?
それを聞いて何かを思い出したのか心当たりがあるのか、静かに驚く先生。その反応を見る限り、本当のことなんだろうけど…
頭の中で反芻しても脳が理解しようとするのを拒んでいる。
「私の兄だというのなら、何故今まで…」
「何故今まで邪魔をしてきたのか、とでも言いたいのか」
「……」
いや、何故今まで黙っていたのかとか、その服装は何なのかの方が聞きたい。
「アスラント文明さ…アスラント文明の謎を解くことが、私の目的だった。タージェントよりも早く…」
「アスラント文明の謎…」
「私たちが離れ離れになったのは、全て、アスラント文明のせいだ。あの…呪われた文明のな。考古学者だった父は考古学の常識を覆すほどの古代に人類が生きていた証拠を掴んだ。その文明こそ、アスラント文明だ。アスラント文明の秘密に近づいたせいで両親は組織に捕らわれてしまった。その組織こそ、タージェント。古代文明を崇拝し、その秘宝に取り憑かれた者たちの集団だ。お前も知っての通り、それから、私たちの孤独な日々が始まったのだ。やがて私は成長し、考古学者として因縁のアスラント文明とタージェントを追いかけるようになった。それが私の復讐だったのかもしれない。私たちから両親を奪い、私たちの人生を狂わせた…アスラント。だからこそ、この手で調査し、手に入れたいと思った」
めっちゃしゃべるじゃん。
あと、アスラント文明のせいっていうか8割ぐらいタージェントのせいでは?
でもこれがデスコールのアスラントに対する執念の正体か。
そう考えるとたまに発動していた暴走行動の数々も頷ける…頷けるか?
「組織に拐われた…父と母はどうなった?生きているのか?」
「母親は死んだと聞いている。父はタージェントに拐われて研究の手伝いをする内に…タージェントの思想に染まってしまったのだ。アスラント文明に取り憑かれ、タージェントの財力を使って、その全てを手に入れようとする汚い男に成り下がった…」
「まさか…!?」
「私たちの父親は、ブロネフ・ライネル…あの男だ」
「なんと…いうことだ」
先生は愕然と言葉を途切れさせた。
話の流れ的にイヤな予感はしていたが見事に的中した。でもそれはあくまで予感なだけで、呑み込むまでには至っていない。
グラロリが、先生のお父さん…?
全っ然結びつかない。そもそも先生とデスコールが兄弟という時点から脳の処理が追いついていない。
するとデスコールが右手を伸ばし、黙り込んだレイトンの服を乱雑に掴んだ。グンと勢いよく前に引かれた衝撃で我に返ったレイトンはハッと彼を見下ろした。
「行け、レイトン!ブロネフを止めるのだ。これ以上、ヤツに過ちを犯させるな…うっ」
「しかし、このままでは君は…」
「う…、気づいているんだろ。アスラントの力を解き放てば、おそらく全員が死ぬ…」
「君にも分かっていたのか、アスラントの秘宝の正体が…」
「あぁ…ナゾを解けるのはお前だけじゃない。今は何としてもブロネフを止めねばならん。お前は先に行くのだ」
「分かった…君はここでじっとしてるんだ」
伸ばされた右手を握り返し、レイトンはデスコールを真っ直ぐ見据えた。すると吐息を漏らすように小さく笑ったデスコールは掴んだ手を離し、パタリと身体の横に腕を落とした。
もはやわざとなんじゃないかと思うくらいの数々のフラグ建築にドン引きしていると、隣にいたルークが突然立ち上がってデスコールの元へ走った。
「どうして、僕を庇ったんだ…」
「…さあな」
「っ!こんなことをしても僕はお前を許さないからな!」
「………」
「だから、だから…!」
何かが喉につかえて次の言葉が続かない様子だった。
たぶんルークは自分のせいでデスコールが死んでしまうかもしれないと気負っているのだろう。許せないけど、死んでほしくはない、と。
複雑な想いで苦しんでるルークの背中が見ていられなくて、あたしもデスコールのそばまで近付いた。
頭パンクしたおかげで金縛りはすっかりなくなっていた。
「ルーク、大丈夫だよ」
「え?」
「まだあたしのフォルム最高の鉄パイプ修理してもらってないし、ここまで死亡フラグを大量に建てるパターンは逆に生存フラグで後からひょっこり合流してくるやつだから」
くたばったらくたばったで弔おうと提案すると「おい」と本人から返事があった。
ほら、ツッコむ元気があるやつはそう簡単に死なないよ。
とは言え重傷であることに変わりはない。
あたしはデスコールの横にしゃがみ、光線を受けたであろう腹部を押さえている彼の左手に手をかざした。
「さすがに負傷したケガを治すことはできないけど」
「?」
「いたいのいたいのぉ…飛んでけェェェ!!」
掛け声とともにかざしていた手を握り、そのまま振り返って攻撃してきた石像に向かって投げた。
全員が石像の方を見るが特に何かが起こった様子はない。
「どう?」
「痛みが…なくなった、ような…」
「それは麻痺では…?」
不思議そうにしているデスコールに、先生が夢も希望もないツッコミをする。おまじないだよ知らんのか。…重傷すぎて本当に麻痺してるのかもだけど。
「力を使ったのか…」
「いや、何も?」
「では何を…?」
「病は気から!」
「病ではなく、ケガなんだが…」
レイトンが抱き起こしていたデスコールをそっと床に降ろして立ち上がると、レイカは「じゃ、安らかに休みたまえ」と敬礼し、レイトンとルークは二人で目を合わせると帽子を深々と被って「安らかに」と先へ進んでいった。
軽い殺意を抱きながら遠ざかるレイトン達の後ろ姿を見送り、デスコールは天井に向かって長い息を吐いた。
その時、横からガコンと重たい音が響き、そちらを見ると先ほどの像の頭が真っ二つに割れていた。
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