第十九章 追憶の彼方
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どうにか水路を渡り、対岸へとたどり着いた。途中で先生に水没(主にあたしとデスコールが)されかけたことはなかったことにしよう、そうしよう。
おかげで妙に静かになったあたしたちだったが、目の前にそびえ立つ二体の大きな人型の石像の存在によって元の調子に戻った。
石像はまるで門番のように左右に立ち、どちらも片方には灯りを、もう片方には剣を持ち、その二本の剣は道を塞ぐように交差した状態になっている。さらに石像の足元にはあたしたちほどの大きさの人型のレリーフが何体も並んでいる。そして何より気になったのは、それらの目だ。まるであたしたちを見張っているかのように石像やレリーフの目が妖しく光っている。
「う、うわっ!像の足元のレリーフ、なんだかブキミです…」
「ブキミなレリーフだが、実に精巧な造りだね」
「何が仕掛けられているか分からないものには、あまり近づかぬことだ」
「そうだよ、なんか目からビーム出そうだし」
それを聞いたルークは顔を強張らせて像から距離を取って先生の後ろに下がった。
にしても、暑いな…
先ほどまでまばらに置いてあった
綿モコのコート重ね着のあたしには地獄だ。でも脱いで手に持つのは邪魔だしまた寒くなるのもイヤだし…
暑さを悟られないようにこっそり誰もいない方を見て顔を扇いでいると目敏いルークの視線を感じた。絶対『何で脱がないんだ』という視線だ。
「レイカさん、そのコート暑くないんですか?」
「ファッションは我慢なのだよ、ルーク君」
「…着ぶくれしてるのに、ファッションも何もない気がしますけど」
「ルーク、レイカのファッションについては触れない方が賢明だよ」
「大方、荷物になるのが面倒なだけだろう」
「うるさいなぁ!そうだよ!」
しかもあたしのファッションについてはってどういうことだし。
大いに不満を抱えつつ、交差している大剣を避けて狭まった道を慎重に進む。見たところただの通路に見えるがそんなはずはない。
「迷路…ですかね」
「行き止まりがあるわけではなさそうだな」
「…なんか変な音しない?」
「あれは…」
手前にあった曲がり角を覗き込んでいる先生が何かを見つけたようだった。何だ何だとあたしたちも同じように曲がり角を覗き込んだ。
率直に言うと、目からビームだ。
道のど真ん中に置かれた人型の石像の輝く目から正面に向かって光線が出ている。先ほどから聞こえる異音はおそらくあの光線が壁に当たっている音だろう。
悲しいかなあたしの勘が当たってしまった。しかも非常に厄介そうだ。言ってしまった手前、あたしは悪くないけど悪いことをしたような気持ちになった。いや、目からビームって言わなきゃただの仕掛けってことでスルーされるだろう。
「わー恐そうな仕掛けだねー」
「目からビームだね」
「目からビームですね」
「目からビームだな」
「………」
コイツらマジでムカつく。何で全員あたしを見ながらそれを言うの。あたしのせいじゃない!アスラントが安直な仕掛け作ったせいだから!
「よかったな、お望み通りの展開で」
「別に望んでないし」
「レイカさんの勘って根拠もないくせにほとんどその通りになっちゃうからつまらないんですよね」
「勘をダメ出しされるってどういうこと」
覗き込むのをやめて、四人で向かい合う。
ここでの障害はあの石像なんだろう。おそらくあれ以外にも何体もいそうだ。
この状況について先生とデスコールが考え込むように顎に手を当てた。
「アスラントの警備装置と言ったところか。キーストーンを持つ者以外を容赦なく攻撃するようだな。この神殿を造った者たちはよほど侵入者を排除したかったと見える」
「突然殺意のレベル上げすぎじゃない?」
「迷い込んだ者が英知に触れないよう仕掛けを作ったのだろう」
「はぁ?じゃあ最初から入られるような仕掛け作るなよ」
「そしたら僕たち入れないですよ!」
「フン、この程度の仕掛けで私の足を止める事などできん。お前たちは下がっていろ」
意気揚々と宣言したデスコールの方向からキンと鋭い金属音がして、そちらを見るといつの間にか細身の剣を構えていた。
「それどっから出したの」
「私が開発した折りたたみ式携帯レイピアだ」
「ねぇ、もはや科学者でも考古学者でもないんだけど」
先生が感心したように「器用な鍛冶屋だね」と呟いた。そういうことじゃない。
…待てよ、洞窟の入り口でグラロリの部下たちは武器を取り上げられたのに、折りたたんでずっと持ってたってこと?それってある意味すごいことなんじゃ?
それからデスコールはスパスパと石像を切り捨て出口を目指した。後ろにルークが付き、悪態をつきながら破壊する石像を指示していて、なんだかんだいいコンビになっていた。
だが確実に危険度は増している。切り捨てられた石像の上半身を見て少し不安になった。
「この先もこんな感じなのかな」
「ん?」
「ケガしそうな危ない仕掛けとか」
「ケガで済むならまだいいが…」
「………」
ホントにそれだよ。
ここまで来てしまったらあの最悪の展開を伝えてもいいだろうか。…うん、杞憂で終わるならそれでいい。先生なら解決方法が分かるかもしれない。
自問自答の末、あたしは夢の出来事を先生に伝えようと口を開いた。
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