第十八章 例えばの話
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白銀の山々が見えてきて、いよいよスノーラが目前に迫ってきた。
結局あれから一睡もできなかったし回避策も思いつかないまま、ここまで来てしまった。
みんなの面持ちは、まるで最終決戦前のように引き締まってる。やめようよ、もうスノーラのシチュー食って帰ろうよ。
でもその前にもっと重要なことがある。
それは…
「………で、どうやって着陸するの」
迫る現実を突きつけると、みんな目をそらし口を閉じた。再放送のように同じ流れだけど、状況としては今の方がヤバいと思う。
現在ボストニアス号は着陸方法が分からず、スノーラの近くをグルグルと旋回している。最悪、燃料が切れて墜落するだろう。
「レイカさんがまたどうにかすればいいんじゃないですか?」
「飛ばすのは簡単だけど、着陸するには………上から気流で叩き落とす?」
「絶対に、やるんじゃないよ」
念を押してくる先生に納得がいかずブーイングをする…勇気はなかった。真新しい頭頂部のたんこぶがやめてと疼いた気がしたから。
先生は少し思案すると何かをひらめき、あたしたちに席に着くよう指示した。
みんなが着席したことを確認するとボストニアス号が次第に下降し始めた。
「よし、身を低くして近くの物に掴まるんだ!」
「あー!あれか、障害物が少ないところへ滑りながら胴体着陸する的なやつでしょ!」
「分かっているのなら早くしなさい!」
気になってこっそり操縦席にいる先生の隣に移動して、迫る白銀の大地を見て納得。
スッキリしたところを隣から大声で怒鳴られ先生に腕を引かれた。そのまま操縦桿を握るよう誘導され、先生と一緒にその場にしゃがんだ。
途端に船が上下左右に大きく揺れ、こういう場面でお馴染みのルークの悲鳴が聞こえた。
長いような短いような衝撃は次第に収まり、先生は静まり返った船内を見渡しながらズレた帽子を直した。
「みんな、大丈夫かい?」
「なんともありませんよ、教授!」
「……大丈夫です、先生!」
「楽しかったー!もう一回や………るわけないですよねぇみんな無事でよかったなぁ!」
隣から来る
でもその代償に、フロントガラスはバキバキにひび割れ、電源も落ちたのか船内の電気も消えて薄暗くなってしまった。たぶん外側も大変なことになっているに違いない。
「ボストニアス号、ボロボロになっちゃいましたね」
「ここまで耐えてくれたことに感謝しよう」
「デスコールに言えばレイモンドさんが修理してくれるかもだし」
あのレイモンドさんなら言わなくてもやってくれそうだけど。
デスコールの名前を出した途端にルークが少しむくれていた。それをちらりと見て、先生と一緒に操縦室から応接室へ降りてルークたちと円になって向かい合った。
「彼らがアスラント神殿を目指していたのなら、間違いなくここに来ているはずです」
「アスラントの秘密が解った以上、彼らを秘宝に近づけるわけにはいかない」
「デスコールを追いかけましょう!」
あたしは準備していたコートを床から拾い上げ(さっきの衝撃でぶっ飛んでた)、袖を通しながら外へ向かった。ふとポケットの中に入れていた小瓶のペンダントを思い出し、首にかけてコートの下にしまった。いつもはお留守番に置いてたけど、もうここには戻ってこない気がしたから。
ハッチを開ければ冷たい風が全身を叩きつけた。スノーラへの来訪は3回目とはいえ、寒さ耐性が付くわけではない。
…はずなのに、凍えているのはあたしだけでみんなはいつも通りの服装で寒そうに見えない。
「みんな寒くないの…?」
「うーん、寒くないことはないけど、慣れかしら」
私のも着る?とレミに聞かれたのでお言葉に甘えさせてもらった。コートの重ね着はだいぶ着膨れするけどモッコモコで防寒対策は完璧だ。
「これなら銃弾でも受けられそう」
「変なこと考えないの。それフラグよ」
「おっと」
レミの言葉に自分がフラグクラッシャーであることを思い出した。そうだ、全てはあのフラグを折るために。何としてもあたしが頑張らないといけないんだから。
不時着した場所はどうやら例の洞窟の近くだったらしく、少し歩いたところにいつぞやの雪だるまが鎮座していた。
前に来た時はこの先の洞窟でサーロインさんと合流してアーリアが氷の中で眠っていて…なんだか遠い昔の出来事のように感じた。
少し感傷に浸っていると街に続く道からハラーケさんが慌てた様子で駆けてきた。ハラーケさんはあたしたちの元まで来ると息を切らせながらあたしたちの顔をキョロキョロと見回した。
「と、とか、都会の人!すぐにスノーラから避難するんじゃ!」
「避難?一体何が起きたのですか?」
「す、すごい地震なんじゃ!洞窟からは変な音が聞こえてきて雪崩が起きそうでのう。下に住んでるみんなはもう、逃げたからのう!」
「あーあ、先生がボストニアス号墜落させたからー……あ、やめて、フードの中に雪詰めるのやめて!」
先生が素早い上下運動で雪をせっせとフードに詰めてくるのでひっくり返そうとしたら全部頭に乗っかった。それをルークが、またやってるよ…みたいな目で見てくる。
ハラーケさんはサーロインさんにも避難を呼びかけるために来てくれたみたいで、あたしたちにそれを託すと転がる勢いで山道を降りていった。
「地元住民が全員避難するレベルの揺れってヤバくない?」
「揺れ…神殿の目覚めが始まっています。博士がキーストーンを使ってしまえば、もう、後戻りはできません…!」
「アスラントの神殿…早く、洞窟へ!」
急かすアーリアとレミを先頭にあたしたちは奥に見える洞窟へ駆け足で向かった。
その最中に一抹の不安が頭を過る。
何かの比喩だと思ってスルーしてたんだけど、『神殿の目覚め』って何…?それによって地震が起きるってどういうこと?もしかしてあれか?山がパッカーン割れて神殿出てくる的な…
イヤな妄想に悶々としている間に洞窟に辿り着き、アーリアと出会った氷の壁まで来た。
「何ということだ…あれほど冷たい洞窟だったというのに」
「前より寒くないですね…」
「あそこって先あったんだ」
辺りを見回していた先生とルークがあたしの指差す先を見た。そこはアーリアが眠っていた氷の壁があった場所より奥に続く道だ。
「以前は冷気が強すぎてとても入れる様子じゃなかったはずだが…」
「一体どういう事なんでしょう?」
「アスラントは、自分たちが課したナゾを解き、ここまで辿り着いた人間たちを迎え入れようとしています…」
アーリアは真剣な表情で先の道を見た。するとルークがデスコールに騙されたことを思い出し、憤りながら先生を急かして駆け出した。
アスラントが迎え入れようと、ねぇ…
あたしは心の中で静かに燻る何かにもやもやしつつ氷の壁の先へ足を進めた。
洞窟の奥に着くと、石階段の上でデスコールが
「やめるんだ、デスコール!」
「アスラントのナゾは私が解く。この私の手で…」
「ダメです!そのナゾを解いてはダメ!」
「てかこんな序盤で詰まってる時点で無理だろ」
「詰まってなどない!!」
デスコールがムキになってこちらを睨んだ。
いやいや詰まってるだろ、どんだけリーチがあったと思ってるんだ。
デスコール相手ならどうにかできるだろうとみんなで一歩近づいた、その時。
「そこまでだ!」
聞き覚えのある腹立つ声に振り返ると、もはやデフォルト化されているニヤリ顔を浮かべたグラロリが、機関銃を構えた数人の黒服を従えてそこにいた。
なんでコイツらまでここに…?
アーリアの話はあたしたちとデスコールしか聞いてないはずなのに…後をつけられたか、あるいは…
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