第十八章 例えばの話
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「教授、操縦代わりますよ」
深夜のボストニアス号にて。
レミが操縦室を覗き込むと、操縦席に座るレイトンと手すりに背を預け床に座っているレイカを見つけて、思わず顔がニヤけた。
「あら、お邪魔だったかしら」
「…何の?」
あたしのジト目を物ともせず、うふふと意味深な笑みで寄ってきたレミ。
あたしと先生が二人でいると、レミってすっごく楽しそうだよな。先生のしょうもないナゾ解いてただけなのに。
「しっかり休めたかい?」
「はい!お陰様でばっちり爽快です!」
夜中には眩しすぎる爽やかな笑顔でレミが元気アピールをした。
その眩しさに目を細めていると、レミはさっきの意味深顔であたしを見た。
「部屋にいないと思ったら、こんなところにいたのね」
「レイカがいると目が冴えるんだよ」
「ふふん、安全で快適なフライトのお供だよ」
「寝るように言っても動かないだけなんだがね」
「操縦代わるって言っても交代してくれないんだもん」
「ほら、目が冴えるだろう?」
先生がそう問いかけると、レミは苦笑いを浮かべた。
その後先生は、レミに軽く操縦のやり方を説明して操縦を代わると、少し休ませてもらうよ、と席を外した。
あたしだって本当は寝たいのに、さっきちょっと寝たらあの最悪の夢がエンドレス再生しだしたからもう寝れないんだよ。
「レイカも寝れてないでしょ?遠慮しなくていいのよ」
「なんか寝付けないから起きてる方が楽なんだよね」
「ふーん、寝れないから教授のそばに…」
「だから違うって!暇つぶし!」
「ふふ…実は私も、そんなに眠れなかったの」
お揃いね、と言うレミに、そんなお揃いヤダよ、といつも通りの軽口を叩く。
さっき先生には、ばっちり爽快です!って言っていたのに…確かに寝たとは言ってなかったけどレミも意外と演技派なんだなと思った。
声のトーンもどことなく低く、いつもとは違う落ち着いた空気があたしとレミを包んだ。
「ねぇ、例えばの話なんだけど」
「いきなりだね」
「もし教授が、ある目的のために頑張ってたら…レイカは応援する?」
突然始まった例え話に大きく首を傾げた。
先生が頑張るような目的…なんだろう、紅茶帝国を建国するとかかな。
「うーん、頑張ってんだし?応援するね」
「でも教授はだんだん取り憑かれたように人が変わって…世界を敵に回すような道を進み出しても、味方でいれる?」
「えっ」
雲行きの怪しい内容に思わずレミの顔を見たが、その目はただ真っ直ぐ前を見つめていた。
つまり、紅茶帝国の帝王である先生が、世界征服を狙い始めてもってこと…?恐るべし紅茶帝国…じゃなくて!そうなった場合、あたしはどうするか、か。
「味方ではいたい」
「………」
「けど、その目的が納得できなかったり、間違ってるって思うなら、何が何でも止めるかな」
「相手があの教授でも?」
「先生だからこそだね。味方でいられないようなことなら相当な内容だから。後悔してほしくないし、後悔したくない」
「後悔、か…」
操縦桿を握るレミの手に力が入った。
少し眉間に皺を寄せて考え込んだ様子だったが、あたしの視線に気付くと眉を下げて笑ってみせた。
「ありがとう!レイカのおかげで考え方が変わったかも」
「ホントぉ?大したこと言ってないよ」
はたして今の答えでレミの力になれたかは分からないが、先ほどよりは表情が少しだけ晴れたような気がした。
ついでに質問の意図を聞こうとしたが、「それよりもぉ」とニヤけ顔のレミが話し出した。
「とっさの質問にもあんなに真剣に答えられるなんて、やっぱり普段から想い合ってる証拠よね!」
「いや、先生って後悔するといろいろ面倒だから阻止したいだけ」
「私が何だい?」
突然の声に二人で振り返ると、銀のトレーにポットとカップを乗せた紅茶帝国の帝王が音もなく背後に降臨していた。そろそろ来るだろうなとは思ってたけど。
「えーやだー先生が紅茶帝国作るなら、全力サポートするに決まってるじゃないですかー!」
「「紅茶帝国?」」
綺麗にハモった先生とレミはお互いの顔を見合わせると可笑しそうに笑った。
そんな二人の笑顔を見て、あたしも嬉しくなって自然と笑顔になる。
この日常が変わらずあり続けると疑いもせずに―――
第十八章 例えばの話
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