第十七章 博士の本性
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アーリアの手を引き背を押しながらボストニアス号を停めていた広場へ駆けつけると、船の傍で立っている先生がいた。
「先生っ、大丈夫ですか!?」
「あぁ。だが、キーストーンはデスコールに持ち去られてしまった」
「ボストニアス号は置いていったんですね」
「どうやら小型飛行機も用意していたようだ。レイモンドさんが彼を………アーリア、大丈夫かい?」
レイトンが少し困惑気味にアーリアへ声をかけた。
「あっ」と3人もアーリアの顔を覗き込むと、白い顔がさらに蒼白になってうわ言のように呟き続けている。
「博士……どうして……」
「休もう!何も考えないでとにかく休もう!」
「アーリア、しっかりして!」
「早くボストニアス号へ!」
レミがアーリアを横抱きにして船内へ続く階段を駆け上がった。
ボストニアス号のソファにアーリアを寝かせると、丁寧に畳まれた毛布がテーブルの上に置かれているのに気がついた。
もしかしたら、こうなることを予想してレイモンドさんが用意していったのかもしれない。
いやきっとそうに違いない…さすがハイパーウルトラプロフェッショナル執事。
レイモンドさんの有能さと不在に涙をこらえながら、アーリアに毛布をかけて、真剣に話し込む3人に加わった。
「キーストーンを受け取った時、デスコールはアーリアの言葉を聞いているね」
「『使者と共に旅する者よ、そなたらの始まりの地にカギをかざせ』。始まりの地…これってきっと、アーリアのいた洞窟のことですね。教授、急ぎましょう」
「あぁ、彼らが向かった先はスノーラだ。ボストニアス号で追いかけよう!」
「………で、誰が運転するの」
逃れられない現実を突きつけると、みんな目をそらし口を閉ざした。
この旅でボストニアス号を運転してきたのはレイモンドさんとサーロインさん(デスコール)だ。
つまり今、この船を運転できる人物はいないことになる。
「私、小型飛行機だったら運転できますけど、飛行船の経験は…」
「僕は掘削機とかロボットの操縦しか…」
「何においても墜落させる自信しかない!」
「…とにかくやってみよう」
ウソだろ、飛行船の運転ってやってみようでどうにかなるもんじゃないだろ…
操縦席へ向かう先生の背中を見ていると、レミがビシッと挙手をした。
「教授、私は機関室を見てきます」
「頼んだよ」
「はい!気合いで解決してみせます!」
「「え」」
レミはやる気に満ちた顔で機関室へ走っていった。
機関室とレミの気合い(物理)は絶対交わっちゃいけない気がする。
あたしと同じように身の危険を感じたルークが「僕も行きます!」とレミの後を追った。
残されたあたしは仕方ないと、先生の立つ操縦席へ向かった。
レイモンドさんが操縦していた時は簡単そうに見えたのに、いざ目の前の操縦桿やレバーを見ると何がなんだかさっぱりだ。
「ふむ」
「これ自爆スイッチとかあるかな」
「…自爆スイッチはなくとも、操作を誤れば似た感じにはなるかな」
なるほど、遠回しにお前は触るなよってことね。
そんなことを言われたら逆に触りたくなるのが江戸っ子の性だ。
どれにしようかなとレバーを選んでいると、脳裏にフォルム最高の鉄パイプがよぎった。
確か外にいる時から鉄パイプどころかあのハングライダーすら見当たらなかったけど。
「そう言えば先生、あたしの鉄パイプは?」
「すまない…デスコールに真っ二つに斬られてしまった」
一応ここにあるが…と無惨にも短くなった二本の鉄パイプを差し出された。
それを無言で受け取り、わなわなと肩を震わせるレイカを見て、この流れはまずいとレイトンは察知した。
「レイカ、落ち着「あの野郎絶対許さない…」
「!」
「飛ばぬなら、飛ばしてみせよう…根性で!」
レイカがそう言うとボストニアス号が大きく縦に揺れ始めた。
突然の揺れによろけたレイトンが背後の手すりに掴まり、ハッと前方を見ると周囲にあったはずのビルはなく、重い灰色が視界を覆っていた。
すると機関室からレミとルークがバタバタと様子を見に戻ってきた。
「教授、機関室は動いてませんが飛行船って飛ぶんですね…あれ、レイカが運転してるの?」
「僕、イヤな予感がします…」
「まだエンジンの掛け方すら解っていない状態で何をやってるんだ!」
「「え!?」」
「1秒でも早くアイツに制裁を下さないとあたしの気が収まらないんで!」
焦った様子のレイトンとどこ吹く風のレイカのやり取りが飛び込んできた。
その聞き捨てならない状況にレミとルークも揺れに足を取られながら操縦席までたどり着いた。
すると重い雲を抜けて目が眩むような青が視界に広がった。
「ちょっと待って、今って操縦してるんじゃないの!?」
「簡単に言うと、上昇気流でボストニアス号を浮かせてスノーラの方向に流れる気流に乗せた!たぶん!」
「たぶんって…」
「だって気流は目には見えないでしょ?」
「それはそうですけど…ってそういう問題じゃないですよ!」
「私たち今風に流されてるだけってこと!?」
「大丈夫大丈夫。あたしの意識がはっきりしてる内は堕ちたりしないから!………たぶん」
「「(たぶん)」」
「さぁ、エルシャール・レイトン!あたしが力尽きるまでにボストニアス号を動かすことはできるかな!」
「………」
「それまで全速前進じゃああああ!!」とビシッと前方を指差すレイカはもう手が付けられない様子だった。
そんな変なテンションになっているレイカと無言になったレイトンの組み合わせを見て、レミとルークはそっと機関室へ引き返していった。
このあと、レイトンはボストニアス号のエンジンを稼働させ、無事操縦することに成功した。
なお、デスコールへ制裁が下る前にレイカの頭上に鉄拳が振り落とされたのは、言うまでもない。
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