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6月生まれさんへ


珍しい人物からの呼び出しに
あまり近づきたくはない 屋敷の敷居を跨ぎ
嫌な静けさがある 庭園に足を踏み入れる

「あ、居った、居った。」

屋敷内からではなく後方から現れた
呼び付けた張本人が突拍子もなく現れる

「あの、何の御用なんですか?」

「用ないと呼んだあかんの?
ええやろ、俺と[#dn=2#]ちゃんの仲やし。」

砂利の音が相手の歩みを教える
この屋敷には何度か足を運んだことはあるがずっしりと重い空気が常に流れている為
この人がいなければ足など運びたくはない

「[#dn=2#]ちゃん 嫌いやもんな。
屋敷ここの空気。」

至近距離まで近づいてきた男に俯いていた頭を優しい手つきで撫でられる

「俺も嫌いやけどね。」

「…あの、それで。」

頭に手が乗せられたままではあるが
顔をあげて男を見上げる

「あー、忘れてまうとこやったわ。
[#dn=2#]ちゃん、こっちおいで。」

頭上の手が離れて 右手首を握られて
引きずられるように屋敷内部へ連れられる

「あの、先輩。どこに行くんですか。」

「秘密。
まぁちょっと期待しててや。」

どんどんと屋敷の奥へと歩みを進める男の背に隠れるように 体を縮こめて後ろを歩く

「最近[#dn=2#]ちゃん 忙しいそうよな。
なかなか会えんかったから寂しかったで。」

「そうですね。
言われてみれば久しぶりに会う気がします。」

随分と歩いたが ここもまだ 禅院家の屋敷内だということに 不安は消えない

「術師なんてやめてもうたらええのに。」

ぽつりと呟いた言葉の全てを聞き取ることは出来なかったので 問い返してみる

「なんでもないよ。
ほら、着いたで。」

グッと手を引かれ男の真横に並び視界に入り込んできた静かな水面とその周りに色鮮やかな紫陽花の花に息を飲んだ

「綺麗やろ?」

「…はい。」

「着飾った[#dn=2#]ちゃんには劣るけどな。
あー、思い出したら腹たってくるわ。」

「いつの話してるんですか。」

「いつまでも根に持つに決まってるやろ。
俺やなくて 他の男にエスコートされるとか。」

数年前に五条 悟に嫌々連れられて行った パーティでの話を持ち出す

「ただの嫌がらせじゃないですか。
御三家が集まる様な所に私なんか連れていくなんて。」

「ほんま 嫌がらせがすぎるわ悟くんは。
嫌がんの知ってたから[#dn=2#]ちゃん連れていかんかったのに。」

右手首に力が込められ顔を顰める

「あ、ごめん。
痛かった?つい力んでもたわ。」

薄手の羽織の袖を捲られ
赤く残る 手の跡を優しくさすってくれる

「これくらい大丈夫です。」

さすっていた手が止まる
男は捲りあげた袖の奥に隠れた傷を捉える

「[#dn=2#]ちゃん。
術師辞め。」

淡々としていながら威圧的な言葉に肩を竦める

「少し下手打っただけです。
なんともないですよ。」

これくらい大したことはないと告げた瞬間
視界が暗くなり お香の香りが鼻腔を満たす

「我慢の限界やわ。
[#dn=2#]ちゃん、俺のモンになり。
嫌なんて言わさんけどな。」

「直哉先輩…苦しいです。」

「了承得るまで離さんで。」

口をつぐんで思考する
この人の事だから本当に了承得るまで離してはくれないのだろう


「…わかりましたから離してください。」

男の要望をのむと言ったのに抱きしめられた手は緩むことはなくさらに体を密着させることとなる

「アホやなぁ。離すわけないやん。
[#dn=2#]ちゃん、好きやで。
[#dn=2#]ちゃんの誕生日やのに俺の方がもらったみたいでなんかごめんな。」

頭上に直哉の暖かい吐息を感じる
強くでもその中に不器用な優しさを感じ胸が温かい感じがする

「…いえ。
ありがとうございます。」

曇天の空が見せた晴れ間に当てられながら
何も言わず 包み込まれていた

END

HAPPY BIRTHDAY to you!!

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