4月生まれさんへ
ーー4月
お風呂から上がって ベッドの上に放り投げてあった 携帯が メッセージの通知を知らせている
「ん?誰だろ」
通知バーからメッセージを開けば
[今 近くにいるから 向かうね]
なんてこちらに有無を言わせない五条らしいメッセージ
「数分前って事はそろそろ鳴るな…」
ピンポーンと軽快にインターホンの鳴る音がする
画面なんて覗かなくてもた訪ねてきた主は分かっているのでそのまま玄関に向かう
ロックを解除して扉を開ければ
やっほー!と黒ずくめの長身の男がそこにいる
「どうしたんですか…」
中には招き入れずドアの間からジト目で見つめる
「ねー、中入れてよ〜。
春とはいえ夜はまだ冷えるんだよー?
お風呂上がりでしょー?立ち話なんてしてたら風邪引いちゃうよー?」
事実だし 新年度早々 風邪はひきたくないので
しょうがないなぁとため息をついて招き入れる
「んー、お邪魔しまーす!」
満足気に上がり込み 自分の家のようにすかさず奥へ歩いていく五条
「ほらほら、[#dn=2#]早く、冷えるでしょ?
髪乾かしたげるから、ね?」
「はーい。」
この人はこういう人 と脳内で何度か唱える
「さ![#dn=2#]、座って座って!」
ベッド脇のコンセントにドライヤーをさしてスタンバイ完了済みの五条をみて
再度 唱え 心を落ち着ける
諦めがついてから 五条に背を向けて座る
「髪伸びたよねー。」
湿った後ろ髪に五条の指が通る
「なかなか切りに行く時間なくて」
「ロングもいいと思うよー、僕は。
じゃ、乾かすね。」
手櫛のつもりだったのか何度か髪を往復した五条の指が離れてドライヤーのスイッチが入る
妙に手馴れた手つきで乾かされ なぜかムカムカする
「はい、終わり!」
「ありがとうございます…」
「ん?何か気に食わなかった?」
「いえ、別になんでもないです。
それより どうしたんですか?」
「あー!そうそう!また忘れるとこだった!
ほら![#dn=2#] 今月誕生日でしょ!?」
「まぁ、はい。覚えてたんですか?」
「いや〜忘れてた!
でも、ふと思い出して会いに来たって訳!」
「そうですかー」
不貞腐れたように言い放つ
乾いた髪に五条の指がまた絡む
「そんな怒んないでよ。可愛い顔が台無しだよー?」
すーっと髪をまとめはじめる五条にされるがまま頬を膨らませたままでいる
「お!出来た!
[#dn=2#]、誕生日おめでと!」
まとめあげられた髪はいつの間にか縛られていて
触れて確かめれば 何やら飾り物のついたヘアゴムのよう
「あ!可愛いから外しちゃやだよー?」
「せっかく乾かしたのに癖ついちゃうじゃないですか…」
「じゃあ僕が帰るまでつけててよ。」
後ろからすっと伸びてきた腕にすっぽり包まれどこかの誰かに嫉妬していた事も溶かされていく
しょうがないですね と呟いたら不思議と口角が上がる
ちゃんと思い出してくれただけで本当は嬉しい
END
HAPPY BIRTHDAY to you!!
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