2章
暗闇から引き上げられるような感覚に瞼を開けば
後ろ髪を撫でるような感覚 目の前でニヤついている五条の顔
「…先輩、顔。」
「うわっ、起きたのかよ。早く言えよな!」
撫でられていた指が離れて五条は口元を覆って目を逸らす
その反応が面白くて 口元に手を当てて笑う
「ふっ…あはは。」
「は?
何笑ってんの。」
「いえ、なんだか可笑しくて。ふふっ」
「チッ…ムカつく。」
怒っている感じではなくて 少し恥ずかしそうに起き上がってベッドから這い出た五条が 可愛いななんて思いながら笑いを堪える
「お前、いつまで笑ってんだよ」
こちらに背を向けてベッド脇に座り込んだ五条
「すみませんでも、可笑しくて…ふふっ。」
「はぁ…とりあえず 俺1回部屋戻って着替えてくっから。
お前も着替えとけよ。」
ゆっくり立ち上がっていつの間にか脱ぎ捨ててあった制服の上着を拾い上げて
玄関へ向かうのをみて ベッドから起き上がって返事をする
「また後で来る」とこちらを見ないまま
手を上げて出ていってしまった
少し寂しいな と思ったけれど
最後の言葉を思い出して
「え?あれ?
また来るって言いましたよね、あの人。」
少し胸が暖かくなるような感覚に妙な心地を覚えながら
とりあえずシャワーを浴びようと立ち上がる
ユニットバスではあるが部屋にお風呂がついているのはありがたい
浴室の鍵を閉めて 温度調整を始めると
玄関の扉がノックする音が聞こえて
慌ててバスタオルを身にまとい
鍵を開けて 顔だけ出して
外の人物に 部屋に居ることを告げる
「はーい。ちょっと今手が離せなくて、どなたですか?」
でも返事はなく ノックもなりやんだ
気のせいだったのかもしれないと
扉を閉めて 適温になったシャワーを浴びて
洗い流した
さっぱりして軽く体を拭きあげてバスタオルに身を包んで廊下に出る
冷蔵庫からお茶を取り出して洗って置いたままのグラスに注いで冷蔵庫に戻してから
寝室に戻り よく冷えたそれを飲み干した
ドライヤーに手を伸ばした時
ぐらりと視界が揺れて 倒れ込み
思うように体が動かず身動きが取れ無くなった
どんどんと鼓動が早くなり 呼吸も辛くなる
玄関の方から扉がノックされる音がして
そこで意識を失った