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2章


ーー???

真っ暗 上も下も前後左右も
どこを見渡しても闇

何となく自分の体の感覚だけはあって

音も光もない
試しに声を出してみる

「悟先輩のばーか!」

問題なくちゃんと聞こえる


少し考えるポーズを取ってから
立ったまま考えるのもなんだと思って
その場に座ろうと思いしゃがみこもうとすればなにかにお尻をぶつけた

「え?なにもなかったですよね!?」

その何かを確認するため振り返ると椅子が
自室に置いてある長年愛用している木製のチェアが何故かそこにはあった


「なんで?」
そう思いながらその椅子のあちこちに触れてみる
質感も何もかもが見知ったもの

とにかくそこに座って目を閉じてテーブルをイメージしてみた

円形でその上にはティーポットに
カモミールティーが注がれたティーカップ

ゆっくり目を開けてみれば
それはイメージしたとおりに存在した

「すごい!そういう夢なのでしょうか?」

そういうものだと思って 自身がよく作るお茶菓子も用意して
ティータイムを優雅に満喫する

それらは暗闇にあるのに
淡く光るように存在し 触れることも飲む事も食べる事も出来た

「ん。美味しいです。
いつもの味がします。」

クッキーに手を伸ばした時 後方から眩い光が現れて
眼前の闇を照らし 何やら景色が浮かび上がる

「まるで映画館みたいですね。」

桜の木を真下から眺め青とピンクのコントラストが映える景色から
こちらを覗き込むように 家入が現れる

『五条発見。ってなんだ起きてんじゃん。
寝顔撮ってやろうと思ったのに』

『寝顔の盗撮?やめろよ。』
五条の声がする

「悟先輩視点?」

上半身を起こした五条は家入の方をむく
遠くに夏油 夢川が歩いてくる

『探したよ、悟。』

『電話鳴らしても出てくれないので苦労しましたよっ!』

自分自身がそこで動いて話しているというのは
とても心地悪いものなのだと寒気がした

『まじ?』
あちこちのポケットを触って確かめる五条

『マジマジ。私も夏油も何度かかけたんだけど。』

『リアちゃんからの着信も出ないから少し焦ったよ。』

『ほんとそれ。』

『あー、今持ってねぇわケータイ。
どこやったっけ。』

『しるか。
とにかく夜蛾呼んでるから行くぞ〜』

『りょーかい!』

立ち上がって夏油と夢川に駆け寄って肩を叩く

『行こうぜ!』

呆れたように笑う夏油と夢川
置いてくなよ〜 とのっそり歩いてくる家入

微笑ましい日常的な映像

「んーーー。
客観的にみる自分って変な感じがします。」

その後も何気ない一日の様子を収めたホームビデオを見ている
そんな感覚でお茶を嗜みながら見入った

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