1章
懐かしいそれは過去の記憶
ーーーー5月初旬
桜は見事に散ってしまい
世間はゴールデンウィークに入っている人もいるだろう
1ヶ月遅れで私はようやく学舎に足を踏み入れた
神社の一角を思わせるような造りの石段を登れば木造の校舎らしきものが姿を現す
夜蛾先生の後に続き緑溢れる 澄んだ景色を見渡す
「なんだ お前ら揃って」
数歩先を歩いていた先生が誰かに声をかける
咄嗟に何故か夜蛾の後ろに隠れてしまう
「あ、先生!
新入生が今日来るって聞いたからみんなで待ってたんですよ〜」
「お嬢様って情報しかないからすげー面白そうだし」
風になびく髪を耳にかけ 緊張で高鳴っていく鼓動
「お前らあまりいじめるなよ
特に 悟と傑。」
「悟はともかく
私まで名指しされるとは心外だね」
「なんで 俺は当たり前みたいになってんの?」
「日頃の行いでは?」
「んだと、七海もう1回言ってみろ」
(怖いです…怖い人が1人居ます
あまり関わりたくないです)
「リア、全校生徒ではないが紹介する。」
「は、はい。」
ゆっくり影から 夜蛾の隣に立って
「えっと
よろしくお願いいたします」
下げた頭を恐る恐る上げる
「おー。美人さん!
家入 硝子。2年だよ、よろしくリアちゃん」
タバコを吹かせながら
近付いて微笑みかけてくれる
「そうだね、凄く綺麗な子だ
私は 夏油 傑 2年だよ、よろしく。」
黒い髪の背の高い男性も同様に挨拶してくる
「七海 健斗、貴女と同じ1年です
よろしくお願いします。」
こちらに近寄って来るわけでもないけれど
丁寧に挨拶してくれた
「僕は灰原 雄!
同じく1年生。 よろしくね、夢川さん!」
思わずしっぽが見えてしまいそうな感じで駆け寄って手を差し出してくる
その雰囲気に少し強ばった表情が緩み握手を交わす
いきなり隣から手が伸びてきて 灰原との握手は強制終了され そのまま手首を引かれる
「ふぇっ?」
急に視界は整った顔立ちで 蒼い目を捉える
覗き込まれる形で迫られているのに
その綺麗な瞳から目が逸らせなくなる
「綺麗…」思わず感嘆とともに掴まれていない方の手を伸ばして目の端に触れハッとする
「す、すみません
あの、あまりにも綺麗だったのでつい」
手を引いてその場で出来るだけのお辞儀をする
「んな事、知ってるし」
「あれー?悟 顔赤くない、どうしたー?」
「は?なに?」
「悟、これはしてやられたね」
「でも、わかる気はしますよー、夢川さん可愛いですし!」
ゴッと鈍い音が頭上でして 手首が解放される
下げたままの頭を恐る恐る上げば
「痛って!」
「悟、いじめるなと言ったところだろう!
こいつは五条 悟 2年
これで1,2年は全員だ。」
チッと舌打ちしながら頭をさすっている
その様子をみて 騒ぐ 先輩達は とても楽しそうで
賑やかな生活になりそうだなとそう思った
「お前ら 暇ついでに リアを案内してやれ。
硝子、寮も案内も頼む。
あと、少しは学生であると弁えろ」
「はいはーい
よし、リアちゃん 行こっ!」
タバコの火を消して家入に手を引かれる
「あ、はい!お願いします。」
「そんなにかしこまらなくていいよ
ね、リアって呼んでいい?あたしも硝子でいいから!」
「はぃ、
えと硝子せん、ぱい?」
首を傾げながら自分より少し背の高い家入を見上げる
「何この子 可愛すぎか…」
ばっと抱きしめられ髪をわしゃわしゃ撫でられる
「あわわっ。せ、先輩、髪乱れちゃうので…」
「あー、ごめん。」
と家入から解放され両手で髪を直す
男子全員 羨ましいと、思ったとか
そうでないとか
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