Tuesday
色々なことがありすぎて、ベッドに入ってもなかなか寝付けない。体も心も疲れているはずなのに、頭が冴えてしまっている。
寝返りを繰り返しながら、思い返すのは先輩のことだ。
オレを好きだという優しげな声音。普段とは違う余ったるい目線。強引にこちらを抱き寄せる長い腕。
今まで、夢想すらしたことがなかったことが現実に起こってしまった。
オレは確かに先輩のことが好きだ。その顔を見るだけで、心臓の鼓動は早くなるし、稀に褒められた時には天にも登る気持ちになった。けれど、この気持ちを先輩に伝えるつもりはなかった。まして、成就する未来なんて、想像したこともない。
ごく一般的な男女の、そして地球人同士の恋愛でも社内恋愛は面倒だと言われている。オレは他の会社なんて知らないので、あくまでフィクションから得た知識だけど。けれど、少し考えればわかることだ。思いを悟られて、先輩に気持ち悪がられたら。仕事に支障しかない。
男で、異星人で、おまけに同僚。なんでそんな人好きになってしまったんだ、と思わないでもないが、自分でコントロールできる感情ではないので仕方ない。本当に、いつの間にか好きになっていたのだ。
オレは、自分の恋がいかに難儀なものか理解していたつもりだ。だから、この恋が叶う事なんて望んでいなかったし、先輩に好きだというそぶりを見せたこともない。きちんと隠して、自分の心の中でこの思いを抱えていくつもりだったのに。
「苛立たしくて、でも目が離せなくて。そこが好きだ」
先輩の言葉を思い返す。それだけで、体温が上昇する感覚がある。先輩の本心でないことはわかっているのに、愚かなオレの心は勝手に喜んでしまった。先輩が正気を取り戻すまで、最短でも後二日かかる。それまでに、オレがポロリと自分の気持ちを言ってしまわないか。それが、一番の気がかりだった。
明日も、好きだと囁かれるのだろうか。いつもの先輩に戻って欲しいとお願いしたから、今日よりマシだと良い。
好きな人に、好きだと言われる。本来夢のようなシチュエーションだが、オレは全く楽しめない。ただただ胸の中を渦巻く不安を抑えつけながら、なんとか眠ろうと強く目を閉じた。
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