第4章:一喜一憂
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宮田は一旦帰宅し、荷物を置いて着替えを済ませてから再び家を出た。
ジムまでは徒歩20分程度の道のりだ。
ジムについたら時間は5時を回っていた。
いつもより30分以上も遅い。
ドアを開けて、それなりの声で「こんにちは」と挨拶すると、中にいた練習生の幾人かが、シャドウを続けながら「こんにちは」と返事を返してきた。
いつもの光景だ。
ふと、そのいつもの光景を破るかのように、何やらジロジロともの言いたげな視線がいくつも自分に向いているのに気がついた。
「一郎、遅かったな」
ロッカールームに向かう途中、事務室から出てきた父親に話しかけられ、宮田は素っ気なく「ちょっとね」と答えた。
「お前に客が来ていたぞ」
「客?」
「ああ、もう帰っちまったんだがな」
「チケットでも買いに来たの?」
その発言を聞いて、父親は息子が何か勘違いをしていると思い、軽くふぅっと息を吐いて、続けた。
「お前、今日は随分身軽じゃないか」
「何が?」
「だって毎年、今日はすごい荷物だろう?」
そこまで言われてようやく気がついた。
今日がバレンタインデーであり、そして先ほど父親の言った“客”がチケットを買いに来た男性などではなく、チョコを渡しに来たであろう女性だということに。
その様子で、父親もまた息子が何か感づいたことを知る。
後ろ手に持っていた荷物を目の前に差し出すと、
「気がついたか。ほら、持って帰れよ」
「・・・要らない」
「要らないじゃないだろう。相手の気持ちも考えろ」
「押しつけられた方の気持ちも考えて欲しいね」
今まで、来るもの拒まず的な態度でチョコレートを受け取っていた息子が、今年になって急に態度を変えたことに、父親は戸惑いながら続ける。
「なんだ、お前今年は受け取らないのか」
「・・・受け取ったよ」
「じゃあ・・・」
「とにかく要らない。父さんが食べてよ」
語気を強めて言い放ち、父親の反応も見ないまま、宮田はロッカールームへと消えていった。
宮田は一旦帰宅し、荷物を置いて着替えを済ませてから再び家を出た。
ジムまでは徒歩20分程度の道のりだ。
ジムについたら時間は5時を回っていた。
いつもより30分以上も遅い。
ドアを開けて、それなりの声で「こんにちは」と挨拶すると、中にいた練習生の幾人かが、シャドウを続けながら「こんにちは」と返事を返してきた。
いつもの光景だ。
ふと、そのいつもの光景を破るかのように、何やらジロジロともの言いたげな視線がいくつも自分に向いているのに気がついた。
「一郎、遅かったな」
ロッカールームに向かう途中、事務室から出てきた父親に話しかけられ、宮田は素っ気なく「ちょっとね」と答えた。
「お前に客が来ていたぞ」
「客?」
「ああ、もう帰っちまったんだがな」
「チケットでも買いに来たの?」
その発言を聞いて、父親は息子が何か勘違いをしていると思い、軽くふぅっと息を吐いて、続けた。
「お前、今日は随分身軽じゃないか」
「何が?」
「だって毎年、今日はすごい荷物だろう?」
そこまで言われてようやく気がついた。
今日がバレンタインデーであり、そして先ほど父親の言った“客”がチケットを買いに来た男性などではなく、チョコを渡しに来たであろう女性だということに。
その様子で、父親もまた息子が何か感づいたことを知る。
後ろ手に持っていた荷物を目の前に差し出すと、
「気がついたか。ほら、持って帰れよ」
「・・・要らない」
「要らないじゃないだろう。相手の気持ちも考えろ」
「押しつけられた方の気持ちも考えて欲しいね」
今まで、来るもの拒まず的な態度でチョコレートを受け取っていた息子が、今年になって急に態度を変えたことに、父親は戸惑いながら続ける。
「なんだ、お前今年は受け取らないのか」
「・・・受け取ったよ」
「じゃあ・・・」
「とにかく要らない。父さんが食べてよ」
語気を強めて言い放ち、父親の反応も見ないまま、宮田はロッカールームへと消えていった。