第4章:一喜一憂
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気がつけば、冬。
赤、緑、金、銀。
この時期が来ると思い出す。
『一人じゃねぇよ』
宮田が去年のクリスマスで呟いた言葉。
今年は・・・誰と過ごすんだろう。
「はぁ・・・つまんない」
奈々が平坦な口調で呟くと、ミズキが面白そうに「ごめんねぇ」と笑う。
「冬休み中にケーキバイキングでも行こうよ」
「いいけどさー。なんだろう、この私の2号的な扱い。妬けるなぁ・・・」
女の子は彼氏ができると友人をおろそかにするというが、ミズキは割と自分との時間も大切にしてくれていた。
だがこう言った恋人向けのイベントは当然、彼氏には敵わない。
「今年もうちのバカ弟とケーキかぁ」
はぁあと大きなため息をついたところで、前の席にいた男子に声をかけられる。
「高杉、お前日直だろ?黒板消し忘れてるぞ」
「あ、ほんとだ。ありがと」
席を立って黒板を消しにいく。
ところが、前の授業で身長190cmを超える大柄な教師が板書したものだから、黒板の上の方までビッチリと文字が書かれていて、背伸びをしてもなかなか届かない。
背伸びをしながら懸命に腕を伸ばして黒板を消していると、ふと後ろから誰かが黒板消しを奪い、そのまま消し損ねていた上のフチの部分までを手伝ってくれた。
ふっと振り返ると、いつもの仏頂面の宮田が立っていた。
「ありがと・・・ってなんで?」
奈々の口から素朴な疑問がストレートに飛び出すと、
「別に・・・通りすがりだけど」
と宮田は素っ気なく答える。
「ピョンピョン飛んでて滑稽だったから」
「う、うるさいなー!」
奈々が肘で小突くと、宮田はうっすら笑いながら、自席へ戻っていった。
宮田の席は、教室の窓側の前から2番目。
外からは大体教壇を通って席に戻るため、本人の言う「通りすがり」は正真正銘その通りであった。
黒板を消し終わり、改めて宮田に礼を…と思った瞬間チャイムがなり、奈々は慌てて自席に戻るしかなかった。