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33.手と手
何が起こっているのか分からなかった。
勘違いを起こしかけて
それを否定して、
傷つかないように心を守って
それでも勝手に傷ついて
勇気とか真心なんて言いながら
相手の心ひとつ、分かってあげられない。
そんな私をどうして
彼は抱きしめているんだろう。
「オレから言うから」
宮田はそういって、しばらく無言で奈々を抱きしめていた。
外はすっかり寒くなったというのに、宮田の身体は驚くほど温かかった。
奈々は、顔の火照りが一層増していくのが分かった。
「バカみてぇだろうが、本当に・・・」
「な、何よ・・・」
「勝手に思いこんで、体よくカッコつけてよ・・・」
それから宮田は、更に力を込めて抱きしめた。
奈々の耳元で、小さく呟く。
「好きだ」
決して離さないとばかりに、宮田は回した両腕に力を込めて続けた。
「木村さんなんかに渡さねぇよ」
奈々は自分の耳を疑った。
夢を見ているのではないかとすら思った。
その度に、宮田がギュッと抱きしめる力を強める。
そうしてようやく、これが現実なんだと理解すると、自然と涙が溢れた。
「・・・好きじゃないって・・言ったじゃん・・・」
奈々もまた、自分の両腕を宮田の背中に回して、しがみつくようにギュッと力を込めた。
涙声で憎まれ口を叩く奈々を、宮田は愛しく思いながら言葉を返す。
「嘘ついて悪かった」
「なんで・・・嘘ついたのよぉ・・・」
「キスしたあと、露骨に避けたじゃねぇか。それ以上困らせたくなかったんだよ」
「だってぇ・・・」
涙が止まらず、言葉にならない。
嗚咽がおさまるまで少し息を整える。
その間、宮田はずっと背中をポンポンと優しく叩いてくれていた。
「だって、なんだよ?」
「ふ・・不意打ちだったもん・・・」
「油断した方が悪いんだよ」
宮田が例の如く意地悪な口調で言う。
「・・・覚えてなさいよぉ・・バカぁ・・・」
泣きながらも負けじと憎まれ口を叩く奈々を、宮田はずっと抱きしめていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
ようやく涙が止まり、宮田と二人で手を繋ぎながら、ベンチに座る。
「宮田の手、あったかいね」
「そうか?お前の手が冷たいんだろ」
もうすぐ冬を迎える季節、コートを着ているとは言え、夜に長時間外にいると身体が芯から冷えてくる。
ポカポカと温かいままの宮田の手は、奈々にとってものすごく不思議だった。
「手の冷たい人は心が温かいって言うよ」
「じゃあ、手の温かいオレの心は冷たいってか」
宮田がそう言って笑うと、奈々はギュッと手に力を込めて
「宮田は心も温かいよ」
そういうと、宮田は何の反応も見せなかった。
無言のまま、遠くの方を見ている。
「照れちゃった?」
「別に」
茶化すように奈々が言うと、宮田は平然と答えた。
奈々にはその反応が面白く、小さく笑うと宮田は手をギュッと握ってささやかな抵抗を示す。
「ところでジムには戻らなくていいの?」
奈々がチラリと見て言うと、宮田は公園内の時計を見て、軽く溜息をついて
「・・・・そろそろ戻る」
「随分と長いロードワークだったな、って怒られるんじゃない?」
「別に・・・ただ・・・」
「ただ?」
何かを言いかけて止めた宮田に、奈々は不思議そうな顔を向けた。
その目線に気付いて、宮田はふっと笑って
「お節介な連中が待ってると思うと、気が重いかな」
「・・・どういうこと?」
「まぁ、今度な」
そういって宮田は立ち上がったので、手を繋いだままの奈々もまた釣られて立ち上がった。
そのまま、出口に向かって公園を歩いていく。
「家まで送るよ」
「いいよ、近いし」
「いいから」
何を話すわけでもなく、無言のまま星空の下を歩く。
言葉はなくとも、繋いだ手から全てが伝わっている気がした。
冷たい風が、火照った頭を冷やしてくれる。
しかしその火照りは互いに目を合わせる度に再燃し、いつまで経っても冷めることはなかった。
「ねぇ、宮田」
「ん?」
「私、まだ言ってないことがあるんだけど」
「・・・何だよ?」
まだ何か隠していることがあるのかと、宮田は少し構えて聞き返した。
その様子がおかしくて、奈々は笑いながら宮田の腕に寄り添って、宮田の方を向き、
「大好きだよ、宮田」
そう言って目が合った瞬間、宮田はもの凄い勢いで奈々から目を逸らした。
「・・・露骨に避けたわね?」
意地悪く奈々が聞くと、宮田は目を逸らしたまま答える。
「・・違う」
「何が違うのよ?」
相変わらず宮田は目を背けたままで、一向にこちらを見ようとしない。
そのまま、
「不意打ち喰らったから」
街灯に照らされた宮田の横顔は、赤くなっていた。
自宅前に着き、二人はそっと繋いだ手を離した。
名残惜しい感覚が二人を支配したが、今日はこれ以上一緒にいるわけにいかない。
宮田はジムに戻って練習を続けなければならないからだ。
「じゃあ、また明日学校で」
「ああ」
「今日はありがとう」
そういって奈々が背を向けた瞬間だった。
急に手首をつかまれ振り向くと、宮田が自分を見つめているのが分かった。
もはや、その目から目線を逸らすことは出来なかった。
宮田がゆっくりと近づき、奈々の頬に手を添える。
そのまま、街灯に照らされた二人の影が重なった。
何が起こっているのか分からなかった。
勘違いを起こしかけて
それを否定して、
傷つかないように心を守って
それでも勝手に傷ついて
勇気とか真心なんて言いながら
相手の心ひとつ、分かってあげられない。
そんな私をどうして
彼は抱きしめているんだろう。
「オレから言うから」
宮田はそういって、しばらく無言で奈々を抱きしめていた。
外はすっかり寒くなったというのに、宮田の身体は驚くほど温かかった。
奈々は、顔の火照りが一層増していくのが分かった。
「バカみてぇだろうが、本当に・・・」
「な、何よ・・・」
「勝手に思いこんで、体よくカッコつけてよ・・・」
それから宮田は、更に力を込めて抱きしめた。
奈々の耳元で、小さく呟く。
「好きだ」
決して離さないとばかりに、宮田は回した両腕に力を込めて続けた。
「木村さんなんかに渡さねぇよ」
奈々は自分の耳を疑った。
夢を見ているのではないかとすら思った。
その度に、宮田がギュッと抱きしめる力を強める。
そうしてようやく、これが現実なんだと理解すると、自然と涙が溢れた。
「・・・好きじゃないって・・言ったじゃん・・・」
奈々もまた、自分の両腕を宮田の背中に回して、しがみつくようにギュッと力を込めた。
涙声で憎まれ口を叩く奈々を、宮田は愛しく思いながら言葉を返す。
「嘘ついて悪かった」
「なんで・・・嘘ついたのよぉ・・・」
「キスしたあと、露骨に避けたじゃねぇか。それ以上困らせたくなかったんだよ」
「だってぇ・・・」
涙が止まらず、言葉にならない。
嗚咽がおさまるまで少し息を整える。
その間、宮田はずっと背中をポンポンと優しく叩いてくれていた。
「だって、なんだよ?」
「ふ・・不意打ちだったもん・・・」
「油断した方が悪いんだよ」
宮田が例の如く意地悪な口調で言う。
「・・・覚えてなさいよぉ・・バカぁ・・・」
泣きながらも負けじと憎まれ口を叩く奈々を、宮田はずっと抱きしめていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
ようやく涙が止まり、宮田と二人で手を繋ぎながら、ベンチに座る。
「宮田の手、あったかいね」
「そうか?お前の手が冷たいんだろ」
もうすぐ冬を迎える季節、コートを着ているとは言え、夜に長時間外にいると身体が芯から冷えてくる。
ポカポカと温かいままの宮田の手は、奈々にとってものすごく不思議だった。
「手の冷たい人は心が温かいって言うよ」
「じゃあ、手の温かいオレの心は冷たいってか」
宮田がそう言って笑うと、奈々はギュッと手に力を込めて
「宮田は心も温かいよ」
そういうと、宮田は何の反応も見せなかった。
無言のまま、遠くの方を見ている。
「照れちゃった?」
「別に」
茶化すように奈々が言うと、宮田は平然と答えた。
奈々にはその反応が面白く、小さく笑うと宮田は手をギュッと握ってささやかな抵抗を示す。
「ところでジムには戻らなくていいの?」
奈々がチラリと見て言うと、宮田は公園内の時計を見て、軽く溜息をついて
「・・・・そろそろ戻る」
「随分と長いロードワークだったな、って怒られるんじゃない?」
「別に・・・ただ・・・」
「ただ?」
何かを言いかけて止めた宮田に、奈々は不思議そうな顔を向けた。
その目線に気付いて、宮田はふっと笑って
「お節介な連中が待ってると思うと、気が重いかな」
「・・・どういうこと?」
「まぁ、今度な」
そういって宮田は立ち上がったので、手を繋いだままの奈々もまた釣られて立ち上がった。
そのまま、出口に向かって公園を歩いていく。
「家まで送るよ」
「いいよ、近いし」
「いいから」
何を話すわけでもなく、無言のまま星空の下を歩く。
言葉はなくとも、繋いだ手から全てが伝わっている気がした。
冷たい風が、火照った頭を冷やしてくれる。
しかしその火照りは互いに目を合わせる度に再燃し、いつまで経っても冷めることはなかった。
「ねぇ、宮田」
「ん?」
「私、まだ言ってないことがあるんだけど」
「・・・何だよ?」
まだ何か隠していることがあるのかと、宮田は少し構えて聞き返した。
その様子がおかしくて、奈々は笑いながら宮田の腕に寄り添って、宮田の方を向き、
「大好きだよ、宮田」
そう言って目が合った瞬間、宮田はもの凄い勢いで奈々から目を逸らした。
「・・・露骨に避けたわね?」
意地悪く奈々が聞くと、宮田は目を逸らしたまま答える。
「・・違う」
「何が違うのよ?」
相変わらず宮田は目を背けたままで、一向にこちらを見ようとしない。
そのまま、
「不意打ち喰らったから」
街灯に照らされた宮田の横顔は、赤くなっていた。
自宅前に着き、二人はそっと繋いだ手を離した。
名残惜しい感覚が二人を支配したが、今日はこれ以上一緒にいるわけにいかない。
宮田はジムに戻って練習を続けなければならないからだ。
「じゃあ、また明日学校で」
「ああ」
「今日はありがとう」
そういって奈々が背を向けた瞬間だった。
急に手首をつかまれ振り向くと、宮田が自分を見つめているのが分かった。
もはや、その目から目線を逸らすことは出来なかった。
宮田がゆっくりと近づき、奈々の頬に手を添える。
そのまま、街灯に照らされた二人の影が重なった。