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22.弁解
宮田の気持ちが分からない。
元々、向こうから話しかけてくることは少なくて
私がいつも、何かしら話しかけて、
相手はつまらなそうに答えるっていうのが
私たちの会話パターンだった。
だから、いつもと同じだと思えば、
心は軽くなるはずなのに。
そもそも、それで何も気にならなかったのに
どうして、目を逸らす宮田を見て
こんなにも胸が痛むんだろう。
自分の気持ちも分からない。
花火の騒乱は終わって、立てていたローソクの火を消すと、辺りは一気に真っ暗になった。
「よし、これから二次会だ!」
鷹村が木村と青木を捕獲するように、両腕を回してがっちりと掴んで叫んだ。
「まだ何かやるんスかぁ?」
「勘弁してくださいよ」
「うるせぇ!オレ様はまだまだ遊び足りないんだよ!!」
他の練習生達は、後ずさりしながら「お疲れ様でした」などと言い、帰る気マンマンである。
時間はまだ10時前であり、確かに鷹村にしてみれば早すぎる解散なのかもしれない。
「たっちゃん、私は先に帰るよぉ」
奈々が手を振りながら土手を上がると、木村は
「オイ、1人じゃ危ないぞ?」
「大丈夫だよ、まだ10時前だし」
「でも・・」
しかし当の木村は鷹村に捕獲されていて身動きが取れない。
そのやりとりを聞いて鷹村は、腕を緩めるどころか、
「宮田ァ!キサマ、妹ちゃんを送り届けてこい」
「・・・言われなくても、そのつもりですよ」
「オレ様たちはこれから楽しい大人の時間を過ごすからな。お前も大人になったら仲間に入れてやろう」
「結構です」
宮田は土手を上がり、奈々の側まで行くと小さな声で「行こうぜ」と呟いた。
成り行きとは言え、急に宮田と二人で帰ることになり、奈々は心の準備が出来ていなかった。
自分がどんな表情をしているのかは分からなかったが、暗闇でよく見えないだろうと思い直し、下手にいる鷹村達にお辞儀をして、宮田の後を追った。
二人が去ったあと、鷹村は木村から手を離してぐるりと腕を回し「んじゃ、行くかぁ」と不貞不貞しく言った。
すると青木が二人の去った方向を見ながら惚けているので、鷹村は
「何見てんだよォ」
「あ、いや・・・なんか宮田の様子がいつもと違った気がしたもんで・・なんだろ?」
青木は、他人の恋愛事情にいつもゴシップに乗ってくるばかりで、自分で気付く敏感さは持ち合わせていない。
それを聞いた鷹村は、ふぅと大きく溜息をついたあと
「そりゃ好きな女と二人きりだったら、宮田も浮つくんじゃねぇの?」
「好きって・・・何がスか?」
青木はまだ、言わんとすることが分からないらしい。
一方で木村は驚く様子もなく、
「やっぱ、鷹村さんにもそう見えます?」
「ん?キサマもそう思うか?」
「なんとなくですけどね」
すると鷹村は嬉しそうに
「オレ様の目は誤魔化せねぇよ。宮田の野郎、あれは絶対に惚れてるぜ」
「ほ、惚れてるって・・・・まさか・・・え?マジで!?マジでーっ!?」
ようやく青木が意を得たりと声を荒げた。
興奮した青木をみて、鷹村も気分が乗ってきたらしい。
満面の笑みを浮かべて、木村の肩をバンバンと叩きながら
「ガハハハ!面白くなって来やがったぜ!なぁ、木村ぁ!」
「まあねぇ・・・」
「お前ら4Pしちまえよ、4P!」
「アンタの頭はそればっかりかよ!!」
調子づく鷹村にツッコミを入れながら、木村はこの星空の下を歩いているだろう二人を思った。
「悪いね、送ってもらって」
帰り道、奈々がボソリと呟くと、宮田もまた「別に」といつもの調子で呟いた。
宮田と二人きりになるのは、あのゲーセン以来のことである。
まともに会話をしたのは、数週間ぶりだった。
「今日、三日月だねぇ」
「ああ」
今までは取り留めのない会話をダラダラと話していられたのに、今日は何を話して良いか分からない。
足音だけが響く居心地の悪い沈黙を先に破ったのは、宮田の方だった。
「悪かったな、この間」
謝られたところで、何をどう答えて良いのか奈々には分からなかった。
いつもの宮田のように、奈々は「別に」と小さな声で答えた。
「あれから露骨に避けられてるから弁解しとくけど」
宮田はそういって、ちょっと奈々を見てからまた目を逸らし、
「別にお前のこと好きじゃないから」
その言葉に、奈々はまた胸がちくりと痛んだ。
それと同時に、やり場のない怒りがこみ上げてくる。
「なにそれ」
「・・・言葉通りの意味だけど?」
宮田があまりにも平然とした口調で言うので、奈々はますます腹が立って
「ひとの・・・ひとのファーストキス奪っておいて、何それ!?」
「だから謝っただろ」
奈々の荒い口調を受け、宮田も些か声を荒げた。
「じゃ、じゃあ何で・・・・何でキスしたのよ!?」
奈々はピタリと歩みを止めて、両拳を強く握った。
宮田もまた歩みを止め、くるりと奈々の方を振り向いて言う。
「・・・したくなったから」
宮田の両目が奈々を射貫くように捉える。奈々はまた、胸がちくりと痛むのを感じた。
「ひょっとしたら遠慮してるんじゃないかと思って」
「は?」
「木村さんの話、しなくなったから」
宮田が再び背を向けて歩き出す。
「別にお前のこと好きじゃないし、木村さんの話がしたければ聞いてやるよ」
胸の痛みが止まない。
一方で宮田の背中はドンドン遠ざかっていく。
奈々は小走りで宮田の後を追った。
「ここ数日、たっちゃんのことが吹っ飛ぶくらいアンタのことで悩んでたっつーの」
「だから悪かったって言ってるだろ」
宮田は目を瞑って、心などこもってないような謝罪を繰り返した。
「今日は良かったな」
「何がよ?」
「木村さんと一緒に居られただろ」
「…まぁ、そうだけど…」
それきり、会話は途切れてしまった。
まもなく奈々の家の前に到着し、宮田に別れを告げて玄関のドアを開けた。
そうしてただいまの挨拶もそこそこに、一目散に部屋へ戻ってベッドに突っ伏した。
確かに木村と花火をしたのは楽しかったし嬉しかった、けれど…
「お前のこと好きじゃないから」
それよりも、宮田の言葉が頭から離れなかった。
宮田の気持ちが分からない。
元々、向こうから話しかけてくることは少なくて
私がいつも、何かしら話しかけて、
相手はつまらなそうに答えるっていうのが
私たちの会話パターンだった。
だから、いつもと同じだと思えば、
心は軽くなるはずなのに。
そもそも、それで何も気にならなかったのに
どうして、目を逸らす宮田を見て
こんなにも胸が痛むんだろう。
自分の気持ちも分からない。
花火の騒乱は終わって、立てていたローソクの火を消すと、辺りは一気に真っ暗になった。
「よし、これから二次会だ!」
鷹村が木村と青木を捕獲するように、両腕を回してがっちりと掴んで叫んだ。
「まだ何かやるんスかぁ?」
「勘弁してくださいよ」
「うるせぇ!オレ様はまだまだ遊び足りないんだよ!!」
他の練習生達は、後ずさりしながら「お疲れ様でした」などと言い、帰る気マンマンである。
時間はまだ10時前であり、確かに鷹村にしてみれば早すぎる解散なのかもしれない。
「たっちゃん、私は先に帰るよぉ」
奈々が手を振りながら土手を上がると、木村は
「オイ、1人じゃ危ないぞ?」
「大丈夫だよ、まだ10時前だし」
「でも・・」
しかし当の木村は鷹村に捕獲されていて身動きが取れない。
そのやりとりを聞いて鷹村は、腕を緩めるどころか、
「宮田ァ!キサマ、妹ちゃんを送り届けてこい」
「・・・言われなくても、そのつもりですよ」
「オレ様たちはこれから楽しい大人の時間を過ごすからな。お前も大人になったら仲間に入れてやろう」
「結構です」
宮田は土手を上がり、奈々の側まで行くと小さな声で「行こうぜ」と呟いた。
成り行きとは言え、急に宮田と二人で帰ることになり、奈々は心の準備が出来ていなかった。
自分がどんな表情をしているのかは分からなかったが、暗闇でよく見えないだろうと思い直し、下手にいる鷹村達にお辞儀をして、宮田の後を追った。
二人が去ったあと、鷹村は木村から手を離してぐるりと腕を回し「んじゃ、行くかぁ」と不貞不貞しく言った。
すると青木が二人の去った方向を見ながら惚けているので、鷹村は
「何見てんだよォ」
「あ、いや・・・なんか宮田の様子がいつもと違った気がしたもんで・・なんだろ?」
青木は、他人の恋愛事情にいつもゴシップに乗ってくるばかりで、自分で気付く敏感さは持ち合わせていない。
それを聞いた鷹村は、ふぅと大きく溜息をついたあと
「そりゃ好きな女と二人きりだったら、宮田も浮つくんじゃねぇの?」
「好きって・・・何がスか?」
青木はまだ、言わんとすることが分からないらしい。
一方で木村は驚く様子もなく、
「やっぱ、鷹村さんにもそう見えます?」
「ん?キサマもそう思うか?」
「なんとなくですけどね」
すると鷹村は嬉しそうに
「オレ様の目は誤魔化せねぇよ。宮田の野郎、あれは絶対に惚れてるぜ」
「ほ、惚れてるって・・・・まさか・・・え?マジで!?マジでーっ!?」
ようやく青木が意を得たりと声を荒げた。
興奮した青木をみて、鷹村も気分が乗ってきたらしい。
満面の笑みを浮かべて、木村の肩をバンバンと叩きながら
「ガハハハ!面白くなって来やがったぜ!なぁ、木村ぁ!」
「まあねぇ・・・」
「お前ら4Pしちまえよ、4P!」
「アンタの頭はそればっかりかよ!!」
調子づく鷹村にツッコミを入れながら、木村はこの星空の下を歩いているだろう二人を思った。
「悪いね、送ってもらって」
帰り道、奈々がボソリと呟くと、宮田もまた「別に」といつもの調子で呟いた。
宮田と二人きりになるのは、あのゲーセン以来のことである。
まともに会話をしたのは、数週間ぶりだった。
「今日、三日月だねぇ」
「ああ」
今までは取り留めのない会話をダラダラと話していられたのに、今日は何を話して良いか分からない。
足音だけが響く居心地の悪い沈黙を先に破ったのは、宮田の方だった。
「悪かったな、この間」
謝られたところで、何をどう答えて良いのか奈々には分からなかった。
いつもの宮田のように、奈々は「別に」と小さな声で答えた。
「あれから露骨に避けられてるから弁解しとくけど」
宮田はそういって、ちょっと奈々を見てからまた目を逸らし、
「別にお前のこと好きじゃないから」
その言葉に、奈々はまた胸がちくりと痛んだ。
それと同時に、やり場のない怒りがこみ上げてくる。
「なにそれ」
「・・・言葉通りの意味だけど?」
宮田があまりにも平然とした口調で言うので、奈々はますます腹が立って
「ひとの・・・ひとのファーストキス奪っておいて、何それ!?」
「だから謝っただろ」
奈々の荒い口調を受け、宮田も些か声を荒げた。
「じゃ、じゃあ何で・・・・何でキスしたのよ!?」
奈々はピタリと歩みを止めて、両拳を強く握った。
宮田もまた歩みを止め、くるりと奈々の方を振り向いて言う。
「・・・したくなったから」
宮田の両目が奈々を射貫くように捉える。奈々はまた、胸がちくりと痛むのを感じた。
「ひょっとしたら遠慮してるんじゃないかと思って」
「は?」
「木村さんの話、しなくなったから」
宮田が再び背を向けて歩き出す。
「別にお前のこと好きじゃないし、木村さんの話がしたければ聞いてやるよ」
胸の痛みが止まない。
一方で宮田の背中はドンドン遠ざかっていく。
奈々は小走りで宮田の後を追った。
「ここ数日、たっちゃんのことが吹っ飛ぶくらいアンタのことで悩んでたっつーの」
「だから悪かったって言ってるだろ」
宮田は目を瞑って、心などこもってないような謝罪を繰り返した。
「今日は良かったな」
「何がよ?」
「木村さんと一緒に居られただろ」
「…まぁ、そうだけど…」
それきり、会話は途切れてしまった。
まもなく奈々の家の前に到着し、宮田に別れを告げて玄関のドアを開けた。
そうしてただいまの挨拶もそこそこに、一目散に部屋へ戻ってベッドに突っ伏した。
確かに木村と花火をしたのは楽しかったし嬉しかった、けれど…
「お前のこと好きじゃないから」
それよりも、宮田の言葉が頭から離れなかった。