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20.まさか
頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。
一瞬のことで、記憶なんてまるでない。
けれども、この写真がそれを現実だと証明する。
どういうつもり?
たっちゃん以外の男の人で
この小さな頭が満杯になるなんて
考えたこともなかった。
「奈々、最近あんまり宮田くんと一緒に居ないんだね」
昼食の時間に、友人にそう言われて奈々は思わず固まった。
あれから宮田と、「おはよう」以外の言葉を交わしていない。
しかし、表面上は何のわだかまりもないように演じてきたはずだった。
「別に・・・元々いつも一緒に居たワケじゃないし・・」
「ひょっとして別れたの?」
友人の言葉に、奈々は思わず食べ物を喉に詰まらせ、むせ返った。
ごほごほと咳をする奈々の背中を、隣の友達がさすってくれる。
息を整えてから、奈々はコホンと咳払いし、
「別れるも何も・・・付き合ってないし」
「え!そうなんだ!?」
奈々の発言に、周りにいた複数の友人達が驚きの声を挙げた。
「付き合ってると思ってた」
「私も」
「見ててラブラブだったもんね」
「あのねぇ・・・」
ご飯をつつきながら、奈々は呆れたように溜息をついた。
友人らは驚きの余り、箸を止めたまま顔を見合わせている。
「あのね、奈々」
「なに?」
「奈々さ、ずっと元気なかったじゃん」
「・・・・そう?」
「心配してたんだよ、私たちさぁ」
友人が余りにも真剣な顔をするので、奈々は思わず手を止めた。
「宮田くんとは仲良くしてたし、恋愛の悩みじゃないと思ってたんだけどさ」
「宮田くんと付き合ってないってことは、やっぱり恋愛の悩みだったの?」
「っていうかひょっとして宮田くんに片思い?」
心配半分、興味半分で友人らが次々に話し出す。
女友達と言えば、恋愛の話は付きものだ。それなのに奈々は、一度も彼女らにそういった話をしたことがなかった。
それ故、彼女らも敢えて奈々に話題を振ることは無かったのだが、これを機に溜まっていた疑問が一気に吹き出た格好だ。
「ちょっと、そんなにいっぺんに・・・」
「別に、私たちに打ち明ける義務なんてないけどさ」
友人の内の1人が、真剣な目つきをして言う。
「ただ、元気のない奈々を見ていて心配だったし、何の力にもなれないのが辛かったよ」
「それに奈々、すぐおどけて誤魔化すし」
「辛いときは頼ってくれてもいいのに」
次々に言葉が胸を打つ。
友人達がそんな風に自分のことを思っているだなんて、考えたこともなかった。
嬉しさと申し訳なさで、もう少しで涙がこぼれそうになった。
「・・・ごめん」
「謝らないでよぉ」
「でも・・・みんなと一緒に居て笑ってると、楽しいから」
その気持ちは本当だった。
木村の事情を何も知らない彼女らと笑って過ごす時間は、奈々にとっては大切な時間だった。
「何も考えないで、笑っていられる時間が欲しかったんだよね」
「そっか・・・」
「でも心配かけてるなんて、考えたこともなかった。ごめん」
「だから、謝らなくていいって。今後も別に聞かないし」
「言いたくなったら聞くし」
「笑いたかったらバカやるし!」
そういうと友人らは小さくガッツポーズを作り、それから顔を見合わせて笑った。
午後の授業が始まって、奈々はぼうっと友人らのことを考えていた。
そして、宮田のことも。
元気のない自分の様子を見て、何の事情も知らない彼女たちは心配してくれていた。
ということは、事情を知っている宮田は、ひょっとしたら彼女たちよりももっと心配してくれていたのかもしれない。
自分が思うより、宮田に負担をかけていたのかもしれない。
木村の話をいつも聞いてくれた。
いきなり手を繋いだときも、何も言わずに一緒に居てくれた。
失恋した時は胸を貸してくれた。
さりげなくイチゴ牛乳をくれたこともあった。
まるで興味のないゲームセンターにも付き合ってくれた。
自分の恋愛事情を一番近くで見守っていてくれたのは、他でもない宮田だった。
「気になるんだよ」
キスしたあと、宮田はそう言った。
あれは一体、どういう意味なのだろう。
奈々はふと、宮田が以前こぼしたセリフを思い出した。
「オレも・・・今なら分かるかもしれない」
自分はその前に何の話題をしていただろう?
確か・・・人を好きになった事がない男に分かるはずがない、みたいなことを言ったはず。
分かるはずがない・・・って、何が?
「どうして私じゃダメなんだろう」
その言葉を思い出した途端、ある推測が思わぬ結論にぶち当たり、奈々は反射的に席を立った。
ガタン、と音がして、クラス中の人間が振り返る。
「・・・どうしたんだ、高杉」
教師が驚きを隠しながら問うと、奈々はハッと気がついて「なんでもないです・・・」と言いながら再び席に着いた。
まさかそんなことあるはずがない、と思いながら、奈々は自分の顔が急速に火照っていくのがわかった。
斜め後ろに座っている宮田の存在が、背中を焼き尽くすかのように感じた。
頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。
一瞬のことで、記憶なんてまるでない。
けれども、この写真がそれを現実だと証明する。
どういうつもり?
たっちゃん以外の男の人で
この小さな頭が満杯になるなんて
考えたこともなかった。
「奈々、最近あんまり宮田くんと一緒に居ないんだね」
昼食の時間に、友人にそう言われて奈々は思わず固まった。
あれから宮田と、「おはよう」以外の言葉を交わしていない。
しかし、表面上は何のわだかまりもないように演じてきたはずだった。
「別に・・・元々いつも一緒に居たワケじゃないし・・」
「ひょっとして別れたの?」
友人の言葉に、奈々は思わず食べ物を喉に詰まらせ、むせ返った。
ごほごほと咳をする奈々の背中を、隣の友達がさすってくれる。
息を整えてから、奈々はコホンと咳払いし、
「別れるも何も・・・付き合ってないし」
「え!そうなんだ!?」
奈々の発言に、周りにいた複数の友人達が驚きの声を挙げた。
「付き合ってると思ってた」
「私も」
「見ててラブラブだったもんね」
「あのねぇ・・・」
ご飯をつつきながら、奈々は呆れたように溜息をついた。
友人らは驚きの余り、箸を止めたまま顔を見合わせている。
「あのね、奈々」
「なに?」
「奈々さ、ずっと元気なかったじゃん」
「・・・・そう?」
「心配してたんだよ、私たちさぁ」
友人が余りにも真剣な顔をするので、奈々は思わず手を止めた。
「宮田くんとは仲良くしてたし、恋愛の悩みじゃないと思ってたんだけどさ」
「宮田くんと付き合ってないってことは、やっぱり恋愛の悩みだったの?」
「っていうかひょっとして宮田くんに片思い?」
心配半分、興味半分で友人らが次々に話し出す。
女友達と言えば、恋愛の話は付きものだ。それなのに奈々は、一度も彼女らにそういった話をしたことがなかった。
それ故、彼女らも敢えて奈々に話題を振ることは無かったのだが、これを機に溜まっていた疑問が一気に吹き出た格好だ。
「ちょっと、そんなにいっぺんに・・・」
「別に、私たちに打ち明ける義務なんてないけどさ」
友人の内の1人が、真剣な目つきをして言う。
「ただ、元気のない奈々を見ていて心配だったし、何の力にもなれないのが辛かったよ」
「それに奈々、すぐおどけて誤魔化すし」
「辛いときは頼ってくれてもいいのに」
次々に言葉が胸を打つ。
友人達がそんな風に自分のことを思っているだなんて、考えたこともなかった。
嬉しさと申し訳なさで、もう少しで涙がこぼれそうになった。
「・・・ごめん」
「謝らないでよぉ」
「でも・・・みんなと一緒に居て笑ってると、楽しいから」
その気持ちは本当だった。
木村の事情を何も知らない彼女らと笑って過ごす時間は、奈々にとっては大切な時間だった。
「何も考えないで、笑っていられる時間が欲しかったんだよね」
「そっか・・・」
「でも心配かけてるなんて、考えたこともなかった。ごめん」
「だから、謝らなくていいって。今後も別に聞かないし」
「言いたくなったら聞くし」
「笑いたかったらバカやるし!」
そういうと友人らは小さくガッツポーズを作り、それから顔を見合わせて笑った。
午後の授業が始まって、奈々はぼうっと友人らのことを考えていた。
そして、宮田のことも。
元気のない自分の様子を見て、何の事情も知らない彼女たちは心配してくれていた。
ということは、事情を知っている宮田は、ひょっとしたら彼女たちよりももっと心配してくれていたのかもしれない。
自分が思うより、宮田に負担をかけていたのかもしれない。
木村の話をいつも聞いてくれた。
いきなり手を繋いだときも、何も言わずに一緒に居てくれた。
失恋した時は胸を貸してくれた。
さりげなくイチゴ牛乳をくれたこともあった。
まるで興味のないゲームセンターにも付き合ってくれた。
自分の恋愛事情を一番近くで見守っていてくれたのは、他でもない宮田だった。
「気になるんだよ」
キスしたあと、宮田はそう言った。
あれは一体、どういう意味なのだろう。
奈々はふと、宮田が以前こぼしたセリフを思い出した。
「オレも・・・今なら分かるかもしれない」
自分はその前に何の話題をしていただろう?
確か・・・人を好きになった事がない男に分かるはずがない、みたいなことを言ったはず。
分かるはずがない・・・って、何が?
「どうして私じゃダメなんだろう」
その言葉を思い出した途端、ある推測が思わぬ結論にぶち当たり、奈々は反射的に席を立った。
ガタン、と音がして、クラス中の人間が振り返る。
「・・・どうしたんだ、高杉」
教師が驚きを隠しながら問うと、奈々はハッと気がついて「なんでもないです・・・」と言いながら再び席に着いた。
まさかそんなことあるはずがない、と思いながら、奈々は自分の顔が急速に火照っていくのがわかった。
斜め後ろに座っている宮田の存在が、背中を焼き尽くすかのように感じた。