宮田短編
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『ダブルデート』
「はぁ?」
宮田は奈々のセリフを聞いて、全身から迸るほどの嫌そうな返事をした。
「だから、ダブルデートして」
「なんだよそれ」
「ダブルのデート」
「・・・バカにしてんのか?」
奈々の言い分はこうだ。
友達が、良い感じなのになかなか距離を詰められない男性との関係に悩んでいると。
そこでダブルデートをして、こちらが恋人同士の雰囲気を出せば、あちらも自然とそういう雰囲気に呑まれてくれるのではないか。
その作戦に、ぜひ宮田も加わって欲しい、ということだった。
「オレは嫌だね」
「なんでよ」
「それは、お前の友達が頑張ることだろうが」
「頑張ってるよ?でも相手の男がさー」
「だったらそんな煮え切らない男、止めちまえばいい」
「そんなこと言わないで、お願いー!」
「ムリ」
全く持って聞く耳を持ってくれない宮田に、奈々の苛立ちも増す。
宮田の言うことは尤もである。
奈々には分かっている。
宮田は自分のデートは自分たちだけで楽しみたいタイプ。
他人がいてリラックスできるような人ではない。
ダブルデートなんて、確かに無理なお願いではあった。
しかし、奈々は分かっている。
どうすれば、そんな頑固な宮田が動いてくれるかということを。
「じゃあいいや。別の人をダミーで連れていくから」
「ああ、そうしろよ」
「誰がいいかなー・・・・あ、あの人にしよう」
携帯の名簿を見ながら独り言を呟く奈々に、宮田が聞く。
「誰だよ?」
「・・・・一郎には関係ないじゃん」
「オレの代わりなんだろ?」
「そのまま乗り換えるかもね」
奈々が通話ボタンを押し、受話器に耳をあてたと思った瞬間、宮田がそれを乱暴に取り上げて
「分かったよ、行けばいいんだろ」
「うん、そう」
「ったく、一緒に出かけるだけだからな」
「目の前でイチャイチャしてあげないと」
「誰がするか、バカ」
そして、デートの当日。
「ごめん、おまたせ~!」
「あ、奈々ちゃん!」
時間ちょうどにもかかわらず、奈々の友達は既に待ち合わせ場所に着いていた。
宮田は奈々の少し後ろで、さも渋々といった感じで歩みを進めている。
「久美、今日は可愛い格好してんね?気合い入れたね?」
「もう!やめてよ、恥ずかしいじゃない・・・」
「んで彼氏は?」
「か、彼氏っていうか・・・幕之内さんなら今トイレに・・・」
「え?」
幕之内?
奈々の脳裏に、とある人物が浮かぶ。
こんな珍しい苗字、そう多くはない。
「久美の彼氏って・・・ま、幕之内一歩?」
「だから彼氏じゃなくて・・・」
「いや、その・・・ホラ・・・うちの彼氏が・・実は・・・」
「どうしたの?奈々ちゃん」
その後ろで、突然聞こえた大声。
「みみみみ宮田くんっ!?」
「・・・・こんなところで何してるんだ幕之内」
「えっ・・・そのっボクはっ・・・・えっと・・・・」
「あ、幕之内さん、こっちです!」
「く、久美さん!」
嵐のようなやりとりに、宮田と奈々は目を合わせて呆然とした。
そして宮田は強引に奈々を引っ張って、鋭い目つきを保ったまま耳打ちする。
「知ってたのか」
「知るわけないじゃん!」
「友達なのに何で知らないんだよ!?」
「久美とは久々に会ったんだもん!お互いの彼氏の細かい情報なんて知らなかったんだから!」
「バカじゃねぇの」
宮田が奈々の腕をグイッと引っ張り、立ち去ろうとしたときだった。
「奈々ちゃんの彼氏って宮田選手だったんだ・・・」
「えっ・・・宮田くんの彼女が、久美さんの友達!?」
二人は呆然とこちらを見ている。
幕之内の惚けた顔を見て、宮田のイライラ度も先ほどより増したようだ。
とりあえずこの場を収めようと奈々が乾いた笑いを浮かべて取り繕う。
「ホラ、気を取り直してみんなで・・・」
「帰るぞ」
「えっ・・ちょっ・・ちょっと!」
宮田は更に強引に手を引っ張り、奈々を引きずるようにしてその場を離れた。
取り残された久美と幕之内は、ただ呆然とその様子を見るほかなかった。
「ご、ごめん久美!あとはよろしくっ!!」
しばらくして、
「久美さんのお友達が、宮田くんの彼女だったなんて」
「わ、私も知らなかったんです!ご、ごめんなさい!」
「いや、ボクはいいけど、宮田くんの方は嫌がってたみたいだから・・・」
「そ、そうですかね・・」
「それにしても手なんか繋いじゃって、さすが宮田くんだなぁ」
そうしてハッと、お互いの手を意識する二人。
「・・・・じゃあ、ボクたちも行きましょうか」
「は、はい」
そこでどうして「ボクたちも繋ぎましょうか」って言えないの!?
久美はそう怒鳴りたい気持ちを押し殺して、幕之内の後ろを歩いた。
ふと、手を繋ぎながら去っていく二人の背中が、遠くの方に見えた。
「いいなぁ、奈々ちゃん」
「ん?どうしたんですか?」
「なんでもないですー」
一方で、宮田カップル。
「実は知ってたんじゃねーのか」
「知らないってば、ホントだって!」
「あーもう、OKするんじゃなかった」
「男のくせに後からうるさいわね」
「お前・・・ホント可愛くないよな」
「なによー!」
ギャンギャンと言い争いをしつつも、手だけはしっかり繋いだままであった。
END
---------------
2011.2.24 高杉R26号
WEB拍手のお礼夢第2弾でした。
付き合いの長そうなカップルと、お前らええ加減にせぇよ状態の一歩カップル。久美ちゃんがうらやましがってて可愛いです。
宮田はなんだかんだ文句言いながらも彼女には押されちゃうタイプのような気がしています(妄想)。
「はぁ?」
宮田は奈々のセリフを聞いて、全身から迸るほどの嫌そうな返事をした。
「だから、ダブルデートして」
「なんだよそれ」
「ダブルのデート」
「・・・バカにしてんのか?」
奈々の言い分はこうだ。
友達が、良い感じなのになかなか距離を詰められない男性との関係に悩んでいると。
そこでダブルデートをして、こちらが恋人同士の雰囲気を出せば、あちらも自然とそういう雰囲気に呑まれてくれるのではないか。
その作戦に、ぜひ宮田も加わって欲しい、ということだった。
「オレは嫌だね」
「なんでよ」
「それは、お前の友達が頑張ることだろうが」
「頑張ってるよ?でも相手の男がさー」
「だったらそんな煮え切らない男、止めちまえばいい」
「そんなこと言わないで、お願いー!」
「ムリ」
全く持って聞く耳を持ってくれない宮田に、奈々の苛立ちも増す。
宮田の言うことは尤もである。
奈々には分かっている。
宮田は自分のデートは自分たちだけで楽しみたいタイプ。
他人がいてリラックスできるような人ではない。
ダブルデートなんて、確かに無理なお願いではあった。
しかし、奈々は分かっている。
どうすれば、そんな頑固な宮田が動いてくれるかということを。
「じゃあいいや。別の人をダミーで連れていくから」
「ああ、そうしろよ」
「誰がいいかなー・・・・あ、あの人にしよう」
携帯の名簿を見ながら独り言を呟く奈々に、宮田が聞く。
「誰だよ?」
「・・・・一郎には関係ないじゃん」
「オレの代わりなんだろ?」
「そのまま乗り換えるかもね」
奈々が通話ボタンを押し、受話器に耳をあてたと思った瞬間、宮田がそれを乱暴に取り上げて
「分かったよ、行けばいいんだろ」
「うん、そう」
「ったく、一緒に出かけるだけだからな」
「目の前でイチャイチャしてあげないと」
「誰がするか、バカ」
そして、デートの当日。
「ごめん、おまたせ~!」
「あ、奈々ちゃん!」
時間ちょうどにもかかわらず、奈々の友達は既に待ち合わせ場所に着いていた。
宮田は奈々の少し後ろで、さも渋々といった感じで歩みを進めている。
「久美、今日は可愛い格好してんね?気合い入れたね?」
「もう!やめてよ、恥ずかしいじゃない・・・」
「んで彼氏は?」
「か、彼氏っていうか・・・幕之内さんなら今トイレに・・・」
「え?」
幕之内?
奈々の脳裏に、とある人物が浮かぶ。
こんな珍しい苗字、そう多くはない。
「久美の彼氏って・・・ま、幕之内一歩?」
「だから彼氏じゃなくて・・・」
「いや、その・・・ホラ・・・うちの彼氏が・・実は・・・」
「どうしたの?奈々ちゃん」
その後ろで、突然聞こえた大声。
「みみみみ宮田くんっ!?」
「・・・・こんなところで何してるんだ幕之内」
「えっ・・・そのっボクはっ・・・・えっと・・・・」
「あ、幕之内さん、こっちです!」
「く、久美さん!」
嵐のようなやりとりに、宮田と奈々は目を合わせて呆然とした。
そして宮田は強引に奈々を引っ張って、鋭い目つきを保ったまま耳打ちする。
「知ってたのか」
「知るわけないじゃん!」
「友達なのに何で知らないんだよ!?」
「久美とは久々に会ったんだもん!お互いの彼氏の細かい情報なんて知らなかったんだから!」
「バカじゃねぇの」
宮田が奈々の腕をグイッと引っ張り、立ち去ろうとしたときだった。
「奈々ちゃんの彼氏って宮田選手だったんだ・・・」
「えっ・・・宮田くんの彼女が、久美さんの友達!?」
二人は呆然とこちらを見ている。
幕之内の惚けた顔を見て、宮田のイライラ度も先ほどより増したようだ。
とりあえずこの場を収めようと奈々が乾いた笑いを浮かべて取り繕う。
「ホラ、気を取り直してみんなで・・・」
「帰るぞ」
「えっ・・ちょっ・・ちょっと!」
宮田は更に強引に手を引っ張り、奈々を引きずるようにしてその場を離れた。
取り残された久美と幕之内は、ただ呆然とその様子を見るほかなかった。
「ご、ごめん久美!あとはよろしくっ!!」
しばらくして、
「久美さんのお友達が、宮田くんの彼女だったなんて」
「わ、私も知らなかったんです!ご、ごめんなさい!」
「いや、ボクはいいけど、宮田くんの方は嫌がってたみたいだから・・・」
「そ、そうですかね・・」
「それにしても手なんか繋いじゃって、さすが宮田くんだなぁ」
そうしてハッと、お互いの手を意識する二人。
「・・・・じゃあ、ボクたちも行きましょうか」
「は、はい」
そこでどうして「ボクたちも繋ぎましょうか」って言えないの!?
久美はそう怒鳴りたい気持ちを押し殺して、幕之内の後ろを歩いた。
ふと、手を繋ぎながら去っていく二人の背中が、遠くの方に見えた。
「いいなぁ、奈々ちゃん」
「ん?どうしたんですか?」
「なんでもないですー」
一方で、宮田カップル。
「実は知ってたんじゃねーのか」
「知らないってば、ホントだって!」
「あーもう、OKするんじゃなかった」
「男のくせに後からうるさいわね」
「お前・・・ホント可愛くないよな」
「なによー!」
ギャンギャンと言い争いをしつつも、手だけはしっかり繋いだままであった。
END
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2011.2.24 高杉R26号
WEB拍手のお礼夢第2弾でした。
付き合いの長そうなカップルと、お前らええ加減にせぇよ状態の一歩カップル。久美ちゃんがうらやましがってて可愛いです。
宮田はなんだかんだ文句言いながらも彼女には押されちゃうタイプのような気がしています(妄想)。
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