宮田短編
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『カウンターパンチャー』
「高杉」
付き合ってもうしばらく経つというのに、宮田は相変わらず奈々のことを苗字で呼ぶ。
今日はバイトが休みだからということで、宮田は久々に奈々の家に遊びに来ていた。
といっても練習があるため、会える時間はわずか。
その貴重な時間を、いつも話をしたり、一緒に買い物に行ったりという、平凡な時間に費やしていた。
宮田といるだけで自分は十分幸せだと、奈々は分かっていた。
それでもやはり、他人行儀な"苗字"で呼ばれ続けると、どうも恋人同士という感じがしない。
奈々も以前は"宮田くん"と呼んでいたが、今では名前で呼ぶようになった。
そのときは「名前で呼んでいい?」と聞き、相手がうなずいたので「じゃあ、私も名前で呼んで」と言ったら、返事をしてくれなかったというエピソードがある。
「ねぇ、一郎くん」
「なんだよ」
「そろそろ名前で呼んでよ」
またも宮田は返事をしない。
奈々は大きな溜息をついて、宮田の隣に座った。
「名前を呼ぶのがそんなに嫌なの?」
「・・・・別に、高杉でいいだろ」
「えー。なんかクラスメイトみたいじゃない」
宮田はテーブルからマグカップを取り、一口飲んで、あさっての方向を見ている。
奈々にはこれが「もう何も言うな」という合図だということが分かっているものの、どうにも腑に落ちない。
「じゃあ私も宮田って呼ぶ」
「別にいいけど」
宮田は奈々の気持ちを逆撫でするように意地悪そうに笑い、カップを置く。
狙い通りに逆撫でされて納得のいかない奈々は、空になったカップを台所へ運ぼうと立ち上がった。
なんで宮田が自分の名前を呼ばないのかなんて、本当は検討がついている。
ただ、恥ずかしいだけだって。
ずっと苗字で呼んでいたから、急に名前でなんて呼べない、とかそういう類のものだって。
それでも、女の子に取ってみれば、その辺の呼び方ってとっても重要だと思うんだけどな。
そんな気持ちをぐっと押し込めて、再度横に座る。
しかしその様子は明らかに不満そうで、宮田の方を見ようともしない。
すると宮田が、ふぅと溜息をついて聞いた。
「なんでそんなに名前にこだわるんだよ」
宮田がやれやれと言った表情で、呆れて聞いているのが分かった。
それでも奈々は、今回ばかりは譲れないとばかりに力説を返す。
「だって・・・女の子は結婚したら苗字が変わっちゃうんだよ?」
奈々はマジマジと宮田を見つめて言った。すると宮田は笑って、
「じゃあ、そうなったら宮田って呼んでやる」
突然の言葉に奈々がぽかんと惚けていると、宮田は「そろそろ時間だ」と立ち上がり、玄関の方へ歩いて行った。
「またな、高杉」
ぱたん、とドアの閉まる音がやけに遠くに聞こえた。
自分が何の議論をしていたのかも分からない。
ああ、またやられた。
彼の見事なカウンターに。
「連戦連敗だな、私・・・」
赤くなった頬は、いつまで経っても冷めなかった。
完
---------------
2011.1.26 高杉R26号
彼はこういうキザなことを、さりげなく言える子だと信じてます(笑)
んで、自分で言って後で照れてるみたいなね!(完全妄想)
それにしてもコイツと付き合ったところで、何して遊ぶのか全然予想つきません。
「高杉」
付き合ってもうしばらく経つというのに、宮田は相変わらず奈々のことを苗字で呼ぶ。
今日はバイトが休みだからということで、宮田は久々に奈々の家に遊びに来ていた。
といっても練習があるため、会える時間はわずか。
その貴重な時間を、いつも話をしたり、一緒に買い物に行ったりという、平凡な時間に費やしていた。
宮田といるだけで自分は十分幸せだと、奈々は分かっていた。
それでもやはり、他人行儀な"苗字"で呼ばれ続けると、どうも恋人同士という感じがしない。
奈々も以前は"宮田くん"と呼んでいたが、今では名前で呼ぶようになった。
そのときは「名前で呼んでいい?」と聞き、相手がうなずいたので「じゃあ、私も名前で呼んで」と言ったら、返事をしてくれなかったというエピソードがある。
「ねぇ、一郎くん」
「なんだよ」
「そろそろ名前で呼んでよ」
またも宮田は返事をしない。
奈々は大きな溜息をついて、宮田の隣に座った。
「名前を呼ぶのがそんなに嫌なの?」
「・・・・別に、高杉でいいだろ」
「えー。なんかクラスメイトみたいじゃない」
宮田はテーブルからマグカップを取り、一口飲んで、あさっての方向を見ている。
奈々にはこれが「もう何も言うな」という合図だということが分かっているものの、どうにも腑に落ちない。
「じゃあ私も宮田って呼ぶ」
「別にいいけど」
宮田は奈々の気持ちを逆撫でするように意地悪そうに笑い、カップを置く。
狙い通りに逆撫でされて納得のいかない奈々は、空になったカップを台所へ運ぼうと立ち上がった。
なんで宮田が自分の名前を呼ばないのかなんて、本当は検討がついている。
ただ、恥ずかしいだけだって。
ずっと苗字で呼んでいたから、急に名前でなんて呼べない、とかそういう類のものだって。
それでも、女の子に取ってみれば、その辺の呼び方ってとっても重要だと思うんだけどな。
そんな気持ちをぐっと押し込めて、再度横に座る。
しかしその様子は明らかに不満そうで、宮田の方を見ようともしない。
すると宮田が、ふぅと溜息をついて聞いた。
「なんでそんなに名前にこだわるんだよ」
宮田がやれやれと言った表情で、呆れて聞いているのが分かった。
それでも奈々は、今回ばかりは譲れないとばかりに力説を返す。
「だって・・・女の子は結婚したら苗字が変わっちゃうんだよ?」
奈々はマジマジと宮田を見つめて言った。すると宮田は笑って、
「じゃあ、そうなったら宮田って呼んでやる」
突然の言葉に奈々がぽかんと惚けていると、宮田は「そろそろ時間だ」と立ち上がり、玄関の方へ歩いて行った。
「またな、高杉」
ぱたん、とドアの閉まる音がやけに遠くに聞こえた。
自分が何の議論をしていたのかも分からない。
ああ、またやられた。
彼の見事なカウンターに。
「連戦連敗だな、私・・・」
赤くなった頬は、いつまで経っても冷めなかった。
完
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2011.1.26 高杉R26号
彼はこういうキザなことを、さりげなく言える子だと信じてます(笑)
んで、自分で言って後で照れてるみたいなね!(完全妄想)
それにしてもコイツと付き合ったところで、何して遊ぶのか全然予想つきません。