宮田短編
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2024年宮誕記念SSの続きです。
ーーーーーー
数年振りに連絡をしてきたと思ったら、
「猫の面倒を見ろ」
とかいう、相変わらず空気も乙女心も読めない元恋人・宮田一郎。
そして、微妙な気持ちを引きずりながらも断りきれず、仕事帰りに毎日寄り道して猫の世話をしているワタシ。
「サラテ、いい子にしてたよ」
「OK」
「今日はあんまり餌食べてなかった」
「OK」
「たっぷり遊んであげたら幸せそうに寝たよ」
「OK」
律儀に色々と報告してあげてるってのに、返事はいつも同じ。
コイツ、Botか何かなの?
もうさ、そういうところがさ、私にフラれる要因だったの、わからないのかな?
猫のお世話は1週間と言われている。
なんだかんだで今日で6日目。
「明日帰ってくるんだったら今日まで面倒見ておけばいい?」
ちょっと意地悪なメールをしてやった。
いつもの調子で「OK」とか返事をよこせばいいのに、今日に限って
「明日も頼む。5時。礼はする」
・・・お礼なんて別にいらないんだけど。
でもま、無償で世話ってことも・・・ないよね?
ペットショップに預けるとかしたら、結構高くつくわけだし。
しかるべき報酬があったとしても、まあ、当然よね?
「OK」
って嫌味を込めて真似して返事をしてやった。
ベッドに携帯を放りなげて、遠慮なく仰向けに体を沈めると、それまで床で寝ていたサラテが起き上がって、私の胸に飛び乗ってきた。あぁかわいい。あんな無愛想な男に、こんな愛想のいい猫ちゃんが飼われてるなんて。ペット禁止じゃなかったら私が引き取るのに・・・って、この家もペット禁止らしいけど。
明日、1週間振りに一郎に会う。
とっくの昔に別れた男とはいえ、やっぱりなんだか緊張する。
相変わらず、私好みの顔面だったし、相変わらず、なんか良くわからないけど波長が合う。
それに・・・
数年前から変わってない、部屋の鍵をつけたキーホルダー。
なんなの?未練でもあるの?あの時あっさり「OK」とか言って別れたくせにさ。
「しかも明日・・・アイツ誕生日じゃん・・・流石にアレかな・・・なんかあげた方がいいのかな・・・」
ブツブツと文句を言っていると、サラテが遊んで欲しそうに頭を擦り付けてきた。猫じゃらしをブンブン振り回しながら、
「いやいや、そもそも何かもらうのはむしろこっちの方よ?お礼の一つや二つあってもいいよねこれって!」
「ニャー!」
サラテもそう思うよね。うんうん。
ーーーーーーー
5時って言われたからその通りに来たのに、家主はまだ帰宅してなかったらしい。これを使うのも最後かなと思いながら合鍵で部屋の中に入ると、いつも通りサラテが玄関の前におすわりをして待ってくれていた。
「サラテ、かわいいにゃーん!」
「ニャー!」
いそいそと用意してきたお菓子をあげていると、玄関先からガチャガチャと音がした。どうやら家主が帰ってきたらしいが、サラテは目の前のちゅ〜るに猫まっしぐら状態だ。いいぞ、もっとやれサラテ。
「随分懐いているんだな」
ただいまを言うわけでもなく、お礼を言うわけでもなく、開口一番にコレ。あぁ、宮田一郎だ〜と思いながら、なんだか懐かしさで呆れる前に笑みが溢れた。
「サラテ、私のこと大好きみたい」
「へぇ。そのまま飼えばいいじゃん」
「だからうちはペット禁止なんですぅ」
一郎が手を洗って荷物を整理して、一息ついてドカッと床に座った途端、それまで私の足元でゴロゴロ喉を鳴らしていたサラテが、ふいっと一郎のもとへ飛び乗って、そのまま胡座の中心に丸く収まっていった。
その様子を見て、一郎は「ふふん」とでも言いたそうな顔をしながらこちらを一瞥。べ、別に取られたなんて思ってませんし?
「・・・じゃ、そういうことで。その自動飲水器だけど、しばらく貸しておいてあげるよ。実家じゃもう猫買うつもりないみたいだし。アンタが自分の買うまでは使ってていいよ」
「そうか、悪いな」
「うちも荷物が減って助かるし。でも、お母さんはあげるんじゃなくて貸すって言ってたから、なんかあったらまた返してもらうかも」
「OK」
「じゃ、帰るね」
そう言って部屋を出ようと支度をした途端だった。
一郎が徐に立ち上がって、帰宅した時に肩から下げていた重たそうなスポーツバッグの中から、何か小さな包みを取り出して、
「これ、土産」
・・・・ん?
”お礼”の聞き間違いではないよね?
「土産?」
「そう。今回の合宿、温泉が近くにあって。そこの土産」
「へぇ」
ポチ袋みたいな小さな薄い紙袋に何かが入っている。
セロテープを慎重に剥がして、袋を逆さまにして取り出すと、手のひらの中に鈴付きの可愛らしい招き猫のキーホルダーが現れた。
「・・・微妙な招き猫」
「うるさいよ」
「まぁ、でも縁起良さそう。ありがと」
そこでふと、合鍵を返し忘れていたことを思い出してポケットの中をまさぐった、その瞬間、
・・・・キーホルダー??
「どうした?」
「いや、えーと・・・なんでもない」
「なんだよ」
聞いちゃいけないって、わかってるのに。
「その・・・なんでキーホルダーなんて買ったの・・・と思って」
私は一体、どんな答えを期待して聞いてるの?
「気に入らないか?」
「い、いや!そういうんじゃなくて。かわいいよ、とっても」
「じゃあ・・・」
そうしてまたコイツは、私の度肝を抜いてくるんだ、いつも。
「付け替えておけよ。前のやつ、嫌いなんだろ」
あああ・・・・
やっぱり・・・・
「な、なんで付け替えなきゃなのよ。も、、もう今日鍵返すつもりだったんだから!」
日が暮れてきたけどお願い、もう部屋の電気をこのままつけないで。
真っ赤になってる顔なんて、見られたくもない。
「また世話を頼むかもしれないだろ」
「えー!そ、そんな便利な人見つけたって感じで見ないでよ!」
「それに・・・」
一郎は足元のサラテをひょいと抱え上げて、私の目の前にずずいっと差し出してきた。
「コイツとまた会いたいだろ?」
「う・・・うぐ・・・」
「じゃ、そういうことで」
一郎はふっと笑うと、テーブルに置いていた自分の携帯と財布をズボンのポケットに入れて、
「飯まだだろ?おごってやるよ。お礼にな」
と言って、頭をポンポンと叩いてきた。
「・・・今日誕生日の人に奢ってもらうの、なんかヤダな」
「じゃあ、ご馳走様」
「それもヤダ!あーもう、アンタって人は本当に・・・」
あーあ。
なんか変な感じ。
ご飯を食べて、久々にいろんな話をして、
気がついたら、合鍵のキーホルダーも新しいのに付け替えさせられて。
家の前まで送られて、
「またな」
って言われて1人、エレベーターに乗ってる。
アンタのことはわかるのよ。
これがどう言うことかって。
会いたくて寂しくて辛かった昔に比べて、私も大人になったから。
今ならもっといい感じに、関われるのかな。
それとも・・・
「あーあ」
とりあえず来年の誕生日もまた、2人でご飯を食べられたらいいな。
END
ーーーーーーー
名前変換なしで、2年越しの続編で失礼します(笑)。
宮田くんは今年53歳になるのかな。あーもう絶対イケオジの予感(誰)。
はじめの一歩は長期休載中ですが、私が宮田くんと同じ年齢になる頃までには完結してほしいなぁ。
宮田くん、お誕生日おめでとう!
2026.8.27 高杉R26号
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数年振りに連絡をしてきたと思ったら、
「猫の面倒を見ろ」
とかいう、相変わらず空気も乙女心も読めない元恋人・宮田一郎。
そして、微妙な気持ちを引きずりながらも断りきれず、仕事帰りに毎日寄り道して猫の世話をしているワタシ。
「サラテ、いい子にしてたよ」
「OK」
「今日はあんまり餌食べてなかった」
「OK」
「たっぷり遊んであげたら幸せそうに寝たよ」
「OK」
律儀に色々と報告してあげてるってのに、返事はいつも同じ。
コイツ、Botか何かなの?
もうさ、そういうところがさ、私にフラれる要因だったの、わからないのかな?
猫のお世話は1週間と言われている。
なんだかんだで今日で6日目。
「明日帰ってくるんだったら今日まで面倒見ておけばいい?」
ちょっと意地悪なメールをしてやった。
いつもの調子で「OK」とか返事をよこせばいいのに、今日に限って
「明日も頼む。5時。礼はする」
・・・お礼なんて別にいらないんだけど。
でもま、無償で世話ってことも・・・ないよね?
ペットショップに預けるとかしたら、結構高くつくわけだし。
しかるべき報酬があったとしても、まあ、当然よね?
「OK」
って嫌味を込めて真似して返事をしてやった。
ベッドに携帯を放りなげて、遠慮なく仰向けに体を沈めると、それまで床で寝ていたサラテが起き上がって、私の胸に飛び乗ってきた。あぁかわいい。あんな無愛想な男に、こんな愛想のいい猫ちゃんが飼われてるなんて。ペット禁止じゃなかったら私が引き取るのに・・・って、この家もペット禁止らしいけど。
明日、1週間振りに一郎に会う。
とっくの昔に別れた男とはいえ、やっぱりなんだか緊張する。
相変わらず、私好みの顔面だったし、相変わらず、なんか良くわからないけど波長が合う。
それに・・・
数年前から変わってない、部屋の鍵をつけたキーホルダー。
なんなの?未練でもあるの?あの時あっさり「OK」とか言って別れたくせにさ。
「しかも明日・・・アイツ誕生日じゃん・・・流石にアレかな・・・なんかあげた方がいいのかな・・・」
ブツブツと文句を言っていると、サラテが遊んで欲しそうに頭を擦り付けてきた。猫じゃらしをブンブン振り回しながら、
「いやいや、そもそも何かもらうのはむしろこっちの方よ?お礼の一つや二つあってもいいよねこれって!」
「ニャー!」
サラテもそう思うよね。うんうん。
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5時って言われたからその通りに来たのに、家主はまだ帰宅してなかったらしい。これを使うのも最後かなと思いながら合鍵で部屋の中に入ると、いつも通りサラテが玄関の前におすわりをして待ってくれていた。
「サラテ、かわいいにゃーん!」
「ニャー!」
いそいそと用意してきたお菓子をあげていると、玄関先からガチャガチャと音がした。どうやら家主が帰ってきたらしいが、サラテは目の前のちゅ〜るに猫まっしぐら状態だ。いいぞ、もっとやれサラテ。
「随分懐いているんだな」
ただいまを言うわけでもなく、お礼を言うわけでもなく、開口一番にコレ。あぁ、宮田一郎だ〜と思いながら、なんだか懐かしさで呆れる前に笑みが溢れた。
「サラテ、私のこと大好きみたい」
「へぇ。そのまま飼えばいいじゃん」
「だからうちはペット禁止なんですぅ」
一郎が手を洗って荷物を整理して、一息ついてドカッと床に座った途端、それまで私の足元でゴロゴロ喉を鳴らしていたサラテが、ふいっと一郎のもとへ飛び乗って、そのまま胡座の中心に丸く収まっていった。
その様子を見て、一郎は「ふふん」とでも言いたそうな顔をしながらこちらを一瞥。べ、別に取られたなんて思ってませんし?
「・・・じゃ、そういうことで。その自動飲水器だけど、しばらく貸しておいてあげるよ。実家じゃもう猫買うつもりないみたいだし。アンタが自分の買うまでは使ってていいよ」
「そうか、悪いな」
「うちも荷物が減って助かるし。でも、お母さんはあげるんじゃなくて貸すって言ってたから、なんかあったらまた返してもらうかも」
「OK」
「じゃ、帰るね」
そう言って部屋を出ようと支度をした途端だった。
一郎が徐に立ち上がって、帰宅した時に肩から下げていた重たそうなスポーツバッグの中から、何か小さな包みを取り出して、
「これ、土産」
・・・・ん?
”お礼”の聞き間違いではないよね?
「土産?」
「そう。今回の合宿、温泉が近くにあって。そこの土産」
「へぇ」
ポチ袋みたいな小さな薄い紙袋に何かが入っている。
セロテープを慎重に剥がして、袋を逆さまにして取り出すと、手のひらの中に鈴付きの可愛らしい招き猫のキーホルダーが現れた。
「・・・微妙な招き猫」
「うるさいよ」
「まぁ、でも縁起良さそう。ありがと」
そこでふと、合鍵を返し忘れていたことを思い出してポケットの中をまさぐった、その瞬間、
・・・・キーホルダー??
「どうした?」
「いや、えーと・・・なんでもない」
「なんだよ」
聞いちゃいけないって、わかってるのに。
「その・・・なんでキーホルダーなんて買ったの・・・と思って」
私は一体、どんな答えを期待して聞いてるの?
「気に入らないか?」
「い、いや!そういうんじゃなくて。かわいいよ、とっても」
「じゃあ・・・」
そうしてまたコイツは、私の度肝を抜いてくるんだ、いつも。
「付け替えておけよ。前のやつ、嫌いなんだろ」
あああ・・・・
やっぱり・・・・
「な、なんで付け替えなきゃなのよ。も、、もう今日鍵返すつもりだったんだから!」
日が暮れてきたけどお願い、もう部屋の電気をこのままつけないで。
真っ赤になってる顔なんて、見られたくもない。
「また世話を頼むかもしれないだろ」
「えー!そ、そんな便利な人見つけたって感じで見ないでよ!」
「それに・・・」
一郎は足元のサラテをひょいと抱え上げて、私の目の前にずずいっと差し出してきた。
「コイツとまた会いたいだろ?」
「う・・・うぐ・・・」
「じゃ、そういうことで」
一郎はふっと笑うと、テーブルに置いていた自分の携帯と財布をズボンのポケットに入れて、
「飯まだだろ?おごってやるよ。お礼にな」
と言って、頭をポンポンと叩いてきた。
「・・・今日誕生日の人に奢ってもらうの、なんかヤダな」
「じゃあ、ご馳走様」
「それもヤダ!あーもう、アンタって人は本当に・・・」
あーあ。
なんか変な感じ。
ご飯を食べて、久々にいろんな話をして、
気がついたら、合鍵のキーホルダーも新しいのに付け替えさせられて。
家の前まで送られて、
「またな」
って言われて1人、エレベーターに乗ってる。
アンタのことはわかるのよ。
これがどう言うことかって。
会いたくて寂しくて辛かった昔に比べて、私も大人になったから。
今ならもっといい感じに、関われるのかな。
それとも・・・
「あーあ」
とりあえず来年の誕生日もまた、2人でご飯を食べられたらいいな。
END
ーーーーーーー
名前変換なしで、2年越しの続編で失礼します(笑)。
宮田くんは今年53歳になるのかな。あーもう絶対イケオジの予感(誰)。
はじめの一歩は長期休載中ですが、私が宮田くんと同じ年齢になる頃までには完結してほしいなぁ。
宮田くん、お誕生日おめでとう!
2026.8.27 高杉R26号
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