宮田短編
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『生真面目な男』
「ねぇ、宮田くん」
「何だよ?」
ソファに座りながら、奈々が何となく口を開いた。
宮田もテレビを見ながら何となく答える。
テレビでは適当なニュース番組が流れていて、二人は見ているのか見ていないのか、音だけがやたら騒々しく室内に溢れていた。
「カウンターってどうやるの?」
すると奈々に背を向けて座っていた格好の宮田がくるりと振り返った。
「どうって・・・・」
「難しそうだよね。こうやって相手が手を伸ばして来たところに、パンチを出すんでしょ?」
奈々はたどたどしいボクシングの構えから、ゆっくりと宮田の顔面に拳を突き出した。
「まぁ、そうだけど」
「なんか実感沸かないなぁ」
ボクシングに関しては、奈々はド素人同然である。
もちろん生で試合を見ても、その後のテレビ放送を見ても、宮田の打っている「カウンター」というものがよくわからないのだった。
「・・・じゃあ、ちょっとパンチ打ってみろよ」
「へ?」
「オレに向かって」
宮田は奈々と自分の間にあったクッションを抱えるようにして、ソファの上にあぐらをかいた。
いきなり「パンチを打ってみろ」と言われても、他人に対して拳を伸ばすなど、今まで一度も無い体験だ。
それに、拳を伸ばしただけですぐに当たってしまいそうな至近距離である。
奈々がためらっていると、宮田は「いいから打ってみろって」と言い、真剣な顔を崩さない。
「じゃあ・・・・行くね」
ええい、ままよ、と奈々は拳を握り、意を決して腕を伸ばした。
「えいっ・・きゃあっ!!」
拳を突き出したその瞬間、ボスンという鈍い音とともに顔面に軽い衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。
自分の拳には何の感触も無い。
そしてポトリと、自分の足下に何かが落ちたのが分かった。
さっきまで、宮田が抱えていたクッションだ。
「・・・・とまぁ、これがカウンターってやつ・・・」
何事もなかったような平然な顔で、足下に落ちたクッションを拾う宮田に、奈々はつかみかかった。
「ちょ、ちょっとお!いきなり何よ!?」
「実感沸いただろ?」
「知らないわよ!!もう!!バカ!大っ嫌い!!!」
「だ・・・」
奈々はカンカンに怒って、宮田に背を向けてしまった。
自分はただカウンターの実感を手伝ってやろうと思っただけなのに、まさかこれほど怒られるとは、と宮田は女心というものはつくづく理解できないと思った。
「お前の態度の方がよっぽどカウンターだよ」
「・・・なによ?」
「別に」
お互いにバチバチっと火花の音が聞こえるほど、長い一瞥を送る。
それから奈々は「ふんっ」と悪態をついて、宮田に背を向けた。
後ろで、宮田が小さなため息をついたのが聞こえた。
クッション一個分の距離が空いた、ソファの上の二人。
部屋の中には、ニュースを読むアナウンサーの声しかない。
奈々はいきなりクッションを投げられたショックを引きずりつつも、ふと考えた。
自分に投げられたのはクッションで全然痛くないけれど、宮田の場合は相手の拳が飛んでくるわけだ。
よくもこんなおっかないことを「得意技」とか言って戦っているな、とそら恐ろしい気がした。
「宮田くん」
「なんだよ」
「キミはすごいね」
「・・・・実感沸いたか?」
「ちょっとね」
二人は互いに背中を預けながら、ただ無機質なニュースの音を聞いていた。
END
---------------
2011.2.17 高杉R26号
女心の分からない宮田くん。ボクシングに対しては更に真面目になっちゃうんですね(たぶん)。
ちなみにこの話を書いているときの仮タイトルは「やっぱり宮田くんはすごいや」でした(笑)
「ねぇ、宮田くん」
「何だよ?」
ソファに座りながら、奈々が何となく口を開いた。
宮田もテレビを見ながら何となく答える。
テレビでは適当なニュース番組が流れていて、二人は見ているのか見ていないのか、音だけがやたら騒々しく室内に溢れていた。
「カウンターってどうやるの?」
すると奈々に背を向けて座っていた格好の宮田がくるりと振り返った。
「どうって・・・・」
「難しそうだよね。こうやって相手が手を伸ばして来たところに、パンチを出すんでしょ?」
奈々はたどたどしいボクシングの構えから、ゆっくりと宮田の顔面に拳を突き出した。
「まぁ、そうだけど」
「なんか実感沸かないなぁ」
ボクシングに関しては、奈々はド素人同然である。
もちろん生で試合を見ても、その後のテレビ放送を見ても、宮田の打っている「カウンター」というものがよくわからないのだった。
「・・・じゃあ、ちょっとパンチ打ってみろよ」
「へ?」
「オレに向かって」
宮田は奈々と自分の間にあったクッションを抱えるようにして、ソファの上にあぐらをかいた。
いきなり「パンチを打ってみろ」と言われても、他人に対して拳を伸ばすなど、今まで一度も無い体験だ。
それに、拳を伸ばしただけですぐに当たってしまいそうな至近距離である。
奈々がためらっていると、宮田は「いいから打ってみろって」と言い、真剣な顔を崩さない。
「じゃあ・・・・行くね」
ええい、ままよ、と奈々は拳を握り、意を決して腕を伸ばした。
「えいっ・・きゃあっ!!」
拳を突き出したその瞬間、ボスンという鈍い音とともに顔面に軽い衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。
自分の拳には何の感触も無い。
そしてポトリと、自分の足下に何かが落ちたのが分かった。
さっきまで、宮田が抱えていたクッションだ。
「・・・・とまぁ、これがカウンターってやつ・・・」
何事もなかったような平然な顔で、足下に落ちたクッションを拾う宮田に、奈々はつかみかかった。
「ちょ、ちょっとお!いきなり何よ!?」
「実感沸いただろ?」
「知らないわよ!!もう!!バカ!大っ嫌い!!!」
「だ・・・」
奈々はカンカンに怒って、宮田に背を向けてしまった。
自分はただカウンターの実感を手伝ってやろうと思っただけなのに、まさかこれほど怒られるとは、と宮田は女心というものはつくづく理解できないと思った。
「お前の態度の方がよっぽどカウンターだよ」
「・・・なによ?」
「別に」
お互いにバチバチっと火花の音が聞こえるほど、長い一瞥を送る。
それから奈々は「ふんっ」と悪態をついて、宮田に背を向けた。
後ろで、宮田が小さなため息をついたのが聞こえた。
クッション一個分の距離が空いた、ソファの上の二人。
部屋の中には、ニュースを読むアナウンサーの声しかない。
奈々はいきなりクッションを投げられたショックを引きずりつつも、ふと考えた。
自分に投げられたのはクッションで全然痛くないけれど、宮田の場合は相手の拳が飛んでくるわけだ。
よくもこんなおっかないことを「得意技」とか言って戦っているな、とそら恐ろしい気がした。
「宮田くん」
「なんだよ」
「キミはすごいね」
「・・・・実感沸いたか?」
「ちょっとね」
二人は互いに背中を預けながら、ただ無機質なニュースの音を聞いていた。
END
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2011.2.17 高杉R26号
女心の分からない宮田くん。ボクシングに対しては更に真面目になっちゃうんですね(たぶん)。
ちなみにこの話を書いているときの仮タイトルは「やっぱり宮田くんはすごいや」でした(笑)