2021年宮誕記念SS
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「わぁ〜いちろーちゃんの部屋」
前田は最初こそ好奇心いっぱいで上がり込んできたが、あまりにも特徴のない部屋に首を2週ほど回しただけで内見が終わってしまった。
「なんにもないね」
「悪かったな」
「でもなんか同じ雑誌がすっごい並んでる。何これ」
「おい」
宮田の制止も聞かず、前田は部屋の奥にある本棚をじろじろ見始め、そのうちの1冊を適当に抜き取って表紙を確かめた。
「ボクシング好きなん?グローブもかかってるし」
「・・・」
前田が宮田について知っているのは名前と電話番号とメルアドだけだった。そして宮田もまた同じ。
「意外な趣味持ってんだぁ・・・って、あれ!?」
パラパラとページをめくる前田の手が止まり、思わず素っ頓狂な声が出た。開いたページの見出しには
『特集 OPBF東洋太平洋フェザー級王者 宮田一郎のカウンター技術』
とあったからだ。
「こ、これ・・・って、いちろーちゃん?」
「・・・そうだけど」
宮田はポーカーフェイスで淡々と答えた。家に招いた時点で、そして前田の性格からして、こうなる展開は十分に予想できていたからだ。
「へぇ〜・・・見た目と違ってマッチョで良いカラダしてるとは思ってたけど」
前田は驚きながら、雑誌と目の前の宮田を交互に見ていた。
「プロフィール・・なになに・・“宮田一郎 1973年8月27日生まれ”・・・へぇ、いちろーちゃん今25歳なんだぁ」
自分だけが年齢を知られ、妙に不愉快な気持ちが残る。
「誕生日8月27日・・・って、あれ?今日じゃね!?」
前田は慌てて自分の携帯電話のディスプレイを眺めた。そこには1998年8月27日(木)午前3時13分と書いてある。
宮田は雑誌を読まれボクサーであることがバレる展開までは予想していたが、まさか誕生日を知られるとは思ってもいなかった。至極面倒くさそうな表情を浮かべて、それを隠すように額を掌で覆った。
「いちろーちゃん、なんで教えてくれなかったのぉ。何にも用意してないよ」
「知るかよ」
「えー!せっかくの誕生日なのにさ。ケーキでも買ってくる?」
「要らねぇよ」
冷たいそぶりで答える宮田に対し、前田は雑誌をベッドに放り出して、無邪気な笑みを浮かべたままぎゅっと抱きついてきた。
「じゃあ、すっごく気持ちよくしてあげる」
(女が言うセリフか・・・・?)と宮田はまたも思いながら、手に持っていたバスタオルを前田の顔に押し付けた。
「うぐ」
「さっさと浴びてこい。眠いんだよ」
「はーい♪ってシャワーどこ?ここ?あ、いちろーちゃんも一緒に…」
「早くしろよ」
「はーいはい」
シャワーの音を聞きながら、宮田はベッドに放り投げられた雑誌を本棚に戻して、ベッドの淵に腰掛けた。
名前、電話番号、メールアドレス、住所、職業、誕生日・・・
知られたモンが一気に3つも増えた。
オレはまだ3つしか知らないってのに。
勘弁してくれ。
オレは…そんなの望んじゃいない。
宮田は電気を消して、カーテンの隙間からこぼれる薄明かりから目を背けた。
END
前田は最初こそ好奇心いっぱいで上がり込んできたが、あまりにも特徴のない部屋に首を2週ほど回しただけで内見が終わってしまった。
「なんにもないね」
「悪かったな」
「でもなんか同じ雑誌がすっごい並んでる。何これ」
「おい」
宮田の制止も聞かず、前田は部屋の奥にある本棚をじろじろ見始め、そのうちの1冊を適当に抜き取って表紙を確かめた。
「ボクシング好きなん?グローブもかかってるし」
「・・・」
前田が宮田について知っているのは名前と電話番号とメルアドだけだった。そして宮田もまた同じ。
「意外な趣味持ってんだぁ・・・って、あれ!?」
パラパラとページをめくる前田の手が止まり、思わず素っ頓狂な声が出た。開いたページの見出しには
『特集 OPBF東洋太平洋フェザー級王者 宮田一郎のカウンター技術』
とあったからだ。
「こ、これ・・・って、いちろーちゃん?」
「・・・そうだけど」
宮田はポーカーフェイスで淡々と答えた。家に招いた時点で、そして前田の性格からして、こうなる展開は十分に予想できていたからだ。
「へぇ〜・・・見た目と違ってマッチョで良いカラダしてるとは思ってたけど」
前田は驚きながら、雑誌と目の前の宮田を交互に見ていた。
「プロフィール・・なになに・・“宮田一郎 1973年8月27日生まれ”・・・へぇ、いちろーちゃん今25歳なんだぁ」
自分だけが年齢を知られ、妙に不愉快な気持ちが残る。
「誕生日8月27日・・・って、あれ?今日じゃね!?」
前田は慌てて自分の携帯電話のディスプレイを眺めた。そこには1998年8月27日(木)午前3時13分と書いてある。
宮田は雑誌を読まれボクサーであることがバレる展開までは予想していたが、まさか誕生日を知られるとは思ってもいなかった。至極面倒くさそうな表情を浮かべて、それを隠すように額を掌で覆った。
「いちろーちゃん、なんで教えてくれなかったのぉ。何にも用意してないよ」
「知るかよ」
「えー!せっかくの誕生日なのにさ。ケーキでも買ってくる?」
「要らねぇよ」
冷たいそぶりで答える宮田に対し、前田は雑誌をベッドに放り出して、無邪気な笑みを浮かべたままぎゅっと抱きついてきた。
「じゃあ、すっごく気持ちよくしてあげる」
(女が言うセリフか・・・・?)と宮田はまたも思いながら、手に持っていたバスタオルを前田の顔に押し付けた。
「うぐ」
「さっさと浴びてこい。眠いんだよ」
「はーい♪ってシャワーどこ?ここ?あ、いちろーちゃんも一緒に…」
「早くしろよ」
「はーいはい」
シャワーの音を聞きながら、宮田はベッドに放り投げられた雑誌を本棚に戻して、ベッドの淵に腰掛けた。
名前、電話番号、メールアドレス、住所、職業、誕生日・・・
知られたモンが一気に3つも増えた。
オレはまだ3つしか知らないってのに。
勘弁してくれ。
オレは…そんなの望んじゃいない。
宮田は電気を消して、カーテンの隙間からこぼれる薄明かりから目を背けた。
END