宮田短編
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『Release』
逞しい二本の腕に体を抱えられ、鍛え抜かれ無駄な肉のついてない彫刻物のような体に肌を滑らす。
それだけでも随分な贅沢なのに、彼の上玉のルックスも加わって、ただでさえ上がる気分が上限を知らない。
「あー、今日も最高だったぁ」
コトが終わってベッドの中でぐいっと大きな背伸びをしながら言う。
だけど、相手からの返事が来た試しは一度もない。
「は〜帰りたくないなぁ」
「無理」
「まだ何も言ってないんですけど?」
ムッとふて腐れたように言い返したら、相手は嬉しそうにフッと笑った。
いつも辛気臭い顔してるのに、こういうジョークは好きなのか時々表情を崩すことがある。
一度も染めたことがないんだろうなって言うサラサラの黒髪。
一度も鍛錬をサボったことがないんだろうなって言うゴツゴツだけどしなやかな身体。
真面目なおぼっちゃま?みたいな見た目なのに、こんなギャルをセフレにしてる時点で、実はロクなモンじゃないんだろうな。
「一郎ちゃんが冷たいからもう帰ろ〜っと」
意地悪そうに言ってみたけど、相手はベッドに寝転がったまま寝たフリだ。
ベッドの中じゃそれなりに優しかったりするのにな。
「あんまり遅く帰るとカレシに怒られるし」
服を着ながら何の気なしに呟いた言葉に、相手は珍しく反応した。
「彼氏?」
「あ、言ってなかったっけ?最近できたんだよね。リーマンで普通〜の男よ」
さらりと終わらせるはずの話題だったのに、相手にとっては意外な情報だったらしい。いつもは自分が玄関を出るまで体も起こさないで寝たフリするくせに、今日は珍しく半身を起こしてこちらを見てきた。
「あ!一郎ちゃんまさか気にしてる?大丈夫だって。それはそれ、これはこれ。ちゃんと一郎ちゃんが処理したいときに来てあげるから」
相手はベッドで半身を起こしたまま、腕だけをグッと伸ばしてベッド下に落ちていた私のコートを拾い、投げつけてきた。コートは顔面に当たって視界を塞ぐ。
「ちょ、ちょっとぉ!」
「なんで早く言わない」
「え〜?だって忘れてたんだもん。それに一郎ちゃんとしたかったし」
「オレは」
ブツブツ文句を言いながら顔に投げつけられたコートを避けると、目の前の相手はもうズボンを履いていて、Tシャツを着ているところだった。
「他人のモンに用はねぇよ」
「あたしは別に気にしないけど」
「さっさと着替えろ」
「はーい」
いつもは始発が動き出す頃、宮田が寝ているか寝たフリをしている間にこっそり一人で部屋を出て行くのが通例だったが、今日はどうやら勝手が違って。
ジーパンとTシャツなんて簡単な服装に身を包んでる宮田。
チャリン、と棚の上から玄関の鍵を取る音が聞こえた。
「送るよ」
うっすらと夜が明けて、凛とした空気が地面から30センチくらいのところに浮いている。
霞の中を歩いているような、夢と現の狭間を漂うような感覚。
手を繋ごうと伸ばしたら、思いっきり振り解かれてしまった。
通りがかったタクシーに宮田が手を上げる。
心の準備もないままに、開いたドアから中に入るよう促される。
「じゃあな」
「・・・また呼んでよ」
膨れっ面で睨むように言うと、宮田はぽんと頭に掌を置いて、ガシガシとかき混ぜるみたいにして撫でて言った。
「大事にしろよ」
こうなることは何となく予想はついてた。
黙っていようかなと思ったこともあったけど。
彼氏ができたなんて言えば妬いて、ひょっとしたら“自分のもの”にしてくれるかな?
な〜んて、淡い期待もあったりしたわけだけど。
「見事になかったなぁ〜」
自重気味に笑ったところで、いつのまにかちゃんとした朝が来ていた。
走り出したタクシー。
後ろを振り返って見たけど、もはや人影もなく。
最後までクールなヤツ。なんてあたしはまた膨れっ面をしてしまう。
クールならいっそのこといつもみたいに、今日も寝たふりしてくれればよかったのに。
そうしたらあたしはまた、私物を置いて帰るとかいろんな口実を作れたのに。
ああバカだな。
今頃気づいちゃった。
あたしは一郎ちゃんが好きだったんだ。
「釣り合う感がゼロだけどな」
性つながりのドライな関係だったはずなのに。
こんなビチョビチョな結末、笑っちゃうわ。
END
-------------------------
久々の短編は、宮田くんがちょっと壊れて闇落ちして女性と刹那的な関係ばかりを続けていた頃の話です(高杉の中での設定)。
闇落ちしていたとはいえ底までは落ちきれずに、人のものには手を出さない&出したくない律儀で真面目な倫理観は崩せないようでした。そして彼は意外と人情派なので、できるだけ相手に情を移さないようにしてるんじゃないかなぁと思ってます。
宮田くんは鷹村さんにも懐いているし、案外ギャルとの相性が良いのではないでしょうか。明るいのにズケズケと入り込んでこない絶妙な距離感ありますよねギャル(偏見?)。あー高杉もギャルになって一郎と刹那的な関係を結びt(ガガガガガガガ ←妄想の処理能力をオーバーしました。ポンコツロボだしな。
ご覧いただきましてありがとうございました!
2021.1.3 高杉R26号
逞しい二本の腕に体を抱えられ、鍛え抜かれ無駄な肉のついてない彫刻物のような体に肌を滑らす。
それだけでも随分な贅沢なのに、彼の上玉のルックスも加わって、ただでさえ上がる気分が上限を知らない。
「あー、今日も最高だったぁ」
コトが終わってベッドの中でぐいっと大きな背伸びをしながら言う。
だけど、相手からの返事が来た試しは一度もない。
「は〜帰りたくないなぁ」
「無理」
「まだ何も言ってないんですけど?」
ムッとふて腐れたように言い返したら、相手は嬉しそうにフッと笑った。
いつも辛気臭い顔してるのに、こういうジョークは好きなのか時々表情を崩すことがある。
一度も染めたことがないんだろうなって言うサラサラの黒髪。
一度も鍛錬をサボったことがないんだろうなって言うゴツゴツだけどしなやかな身体。
真面目なおぼっちゃま?みたいな見た目なのに、こんなギャルをセフレにしてる時点で、実はロクなモンじゃないんだろうな。
「一郎ちゃんが冷たいからもう帰ろ〜っと」
意地悪そうに言ってみたけど、相手はベッドに寝転がったまま寝たフリだ。
ベッドの中じゃそれなりに優しかったりするのにな。
「あんまり遅く帰るとカレシに怒られるし」
服を着ながら何の気なしに呟いた言葉に、相手は珍しく反応した。
「彼氏?」
「あ、言ってなかったっけ?最近できたんだよね。リーマンで普通〜の男よ」
さらりと終わらせるはずの話題だったのに、相手にとっては意外な情報だったらしい。いつもは自分が玄関を出るまで体も起こさないで寝たフリするくせに、今日は珍しく半身を起こしてこちらを見てきた。
「あ!一郎ちゃんまさか気にしてる?大丈夫だって。それはそれ、これはこれ。ちゃんと一郎ちゃんが処理したいときに来てあげるから」
相手はベッドで半身を起こしたまま、腕だけをグッと伸ばしてベッド下に落ちていた私のコートを拾い、投げつけてきた。コートは顔面に当たって視界を塞ぐ。
「ちょ、ちょっとぉ!」
「なんで早く言わない」
「え〜?だって忘れてたんだもん。それに一郎ちゃんとしたかったし」
「オレは」
ブツブツ文句を言いながら顔に投げつけられたコートを避けると、目の前の相手はもうズボンを履いていて、Tシャツを着ているところだった。
「他人のモンに用はねぇよ」
「あたしは別に気にしないけど」
「さっさと着替えろ」
「はーい」
いつもは始発が動き出す頃、宮田が寝ているか寝たフリをしている間にこっそり一人で部屋を出て行くのが通例だったが、今日はどうやら勝手が違って。
ジーパンとTシャツなんて簡単な服装に身を包んでる宮田。
チャリン、と棚の上から玄関の鍵を取る音が聞こえた。
「送るよ」
うっすらと夜が明けて、凛とした空気が地面から30センチくらいのところに浮いている。
霞の中を歩いているような、夢と現の狭間を漂うような感覚。
手を繋ごうと伸ばしたら、思いっきり振り解かれてしまった。
通りがかったタクシーに宮田が手を上げる。
心の準備もないままに、開いたドアから中に入るよう促される。
「じゃあな」
「・・・また呼んでよ」
膨れっ面で睨むように言うと、宮田はぽんと頭に掌を置いて、ガシガシとかき混ぜるみたいにして撫でて言った。
「大事にしろよ」
こうなることは何となく予想はついてた。
黙っていようかなと思ったこともあったけど。
彼氏ができたなんて言えば妬いて、ひょっとしたら“自分のもの”にしてくれるかな?
な〜んて、淡い期待もあったりしたわけだけど。
「見事になかったなぁ〜」
自重気味に笑ったところで、いつのまにかちゃんとした朝が来ていた。
走り出したタクシー。
後ろを振り返って見たけど、もはや人影もなく。
最後までクールなヤツ。なんてあたしはまた膨れっ面をしてしまう。
クールならいっそのこといつもみたいに、今日も寝たふりしてくれればよかったのに。
そうしたらあたしはまた、私物を置いて帰るとかいろんな口実を作れたのに。
ああバカだな。
今頃気づいちゃった。
あたしは一郎ちゃんが好きだったんだ。
「釣り合う感がゼロだけどな」
性つながりのドライな関係だったはずなのに。
こんなビチョビチョな結末、笑っちゃうわ。
END
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久々の短編は、宮田くんがちょっと壊れて闇落ちして女性と刹那的な関係ばかりを続けていた頃の話です(高杉の中での設定)。
闇落ちしていたとはいえ底までは落ちきれずに、人のものには手を出さない&出したくない律儀で真面目な倫理観は崩せないようでした。そして彼は意外と人情派なので、できるだけ相手に情を移さないようにしてるんじゃないかなぁと思ってます。
宮田くんは鷹村さんにも懐いているし、案外ギャルとの相性が良いのではないでしょうか。明るいのにズケズケと入り込んでこない絶妙な距離感ありますよねギャル(偏見?)。あー高杉もギャルになって一郎と刹那的な関係を結びt(ガガガガガガガ ←妄想の処理能力をオーバーしました。ポンコツロボだしな。
ご覧いただきましてありがとうございました!
2021.1.3 高杉R26号