宮田短編
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「あーーーー」
扇風機の前で声を出す。
震えた宇宙人のような音が部屋に響く。
「あーーーーーあついーーーー」
「そうだな」
「一郎は暑くないの?」
「暑いよ」
言葉とは裏腹に、宮田はいたって涼しそうな顔をして言う。
「暑い暑い暑いあついあついあつい」
「うるさい」
「だって暑いんだもん暑い暑い暑い」
部屋の中をゴロゴロとのたうち回り、手足をバタバタさせる。
いい歳して恥じらいもない幼馴染に、宮田は呆れてため息をついた。
「じゃあウチに来ないで、クーラーのきいているところでもいけよ」
「あ、今の冷たい。ひんやり〜」
「あ、そ」
宮田は団扇で自らを仰ぎながら、手元の雑誌に目を落とす。
「ねーもっと冷たいのちょうだいよ」
「ねぇよ」
「お、来た来た」
「バカじゃねぇの、さっさと帰れよ」
ぐいっと相手の顔を押して引き離そうとするが、幼馴染はワハハと笑いながら御構い無しに突っ込んでくる。
「あー暇」
「だったら帰ってテレビでも見てろ」
「遊ぼうよぉ、一郎ちゃん」
「嫌だね」
「あー涼しい」
体を密着させてくる無防備な幼馴染に顔の火照りを悟られないように、宮田は必死に団扇を仰ぐ。
「ってか一郎の身体、熱っつい」
「お前がくっついてくるからだろ」
「あ、そうか」
幼馴染はケラケラと笑って体を離す。
全く、いい加減にしてほしい。
今年はただでさえ猛暑なのに。
あっけらかんと笑う幼馴染の頰を、宮田は団扇で軽く叩いた。