宮田短編
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『不意打ち』
「よぉ宮田ぁ、お前今日は相変わらずモテモテだったろうな」
「チョコいくつもらったんだ?」
「ってあれ、お前、一個ももらってねぇの?」
帰り支度をしている宮田くんに男子が何やら話しかけていた。
噂に聞いた話だけど、中学の頃の宮田くんはすごかったらしい。
机やら玄関やら直接手渡しやらで、たくさんチョコをもらって
んで、鞄に入りきらなくて、その辺の誰かが用意した紙袋に入れて帰ったとか。
でも今日は、宮田くんはそれらしきものを何も持っていない。
「受け取ってねぇんだよ」
宮田くんが面白くなさそうに答える。
「すげぇ答えだなそれ」
「一郎ったら嫌味ぃ~」
「本命以外からは受け取らないってやつ?」
男子が呆れたように、かつ羨ましそうな声で更に茶化した。
「そんなとこだな」
宮田くんは少しだけ笑みを浮かべて、それから教室を出て行った。
それから男子は、宮田くんがいかにモテるかとか、
何故モテるのかとか、秘訣は何なんだとか、色々なことを好き勝手に話していた。
別に後を追ったわけじゃない、ただもう掃除も終わったし、ってことで
私も鞄を持って教室を出て、玄関へ向かった。
玄関まで降りる階段で、泣いている女の子と、それを慰める子とすれ違った。
そして玄関には、まだ宮田くんが居た。
「あ、まだ居たんだ?」
思わず漏れた言葉。
「居ちゃ悪いかよ」
宮田くんが、またも面白くなさそうに答えた。
そこでピンと来た。
さっきすれ違った子に、呼び止められていたんだろう。
あのクールで冷静な宮田くんが今日は、少し気疲れしてそうに見えた。
「今日は大変だったね」
私も面白くなってつい、こんな風に茶化してみたくなった。
すると宮田くんは、少しため息をついて
「まぁな」
と答えた。
「そんな宮田くんに、ご褒美あげようか」
「何だよ」
宮田くんが少し身構えるような態度で聞き返す。
私はポケットをまさぐって、“それ”を宮田くんの前に差し出した。
「バレンタインお疲れさまでしたっ」
手のひらの小さなチロルチョコ。
今日、友達が配ってたやつの、残り1つ。
今日一日中、こんな風にチョコをさんざん渡されたであろう宮田くん。
そんな彼に、ちょっとしたイタズラ心というか、
今年は誰にもチョコをあげず流行に乗り遅れてしまった私の、
ただの腹いせにも似た意地悪心ってやつだったんだけど。
「どうもな」
宮田くんは私の手のひらのチョコを受け取って、
そしてその場で開けて、口の中に放り込んだ。
「う、受け取るんだ?」
「ん?」
少し驚いて私が聞くと、宮田くんは
「オレは本命以外からは受け取らないぜ」
その言葉に、思いっきり体が硬直した。
すると宮田くん、意地悪そうに笑って
「バカ、冗談だ」
「えっ?」
「明らかに義理なモンすら断るほど自意識過剰じゃねーよ」
確かに義理といえば義理だけど。
っていうか特に何も考えずに差し出したチロルチョコに
こんな風に、心を揺さぶられるとは思わなかった。
「じゃあな、高杉」
宮田くんの後ろ姿を眺めている今の私は、ただの完璧な乙女。
あまりの不意打ちに、身体が動かない。
すごいね、宮田くん。
君は無意識に、女の子をトリコにしちゃうんだ。
好きでもない子に、そんなセリフ吐いて。
そうやって種を撒いて、育てた花には見向きもしないなんて。
私、今度からあなたを「ジゴロ宮田」と呼びたいです。
愛を込めて。
完
---------------
2011.2.12 高杉R26号
バレンタインデー企画です。
なのにこの甘さの欠片もない話!
いいんです、減量苦の宮田に甘いモノは厳禁ですからッッ
「よぉ宮田ぁ、お前今日は相変わらずモテモテだったろうな」
「チョコいくつもらったんだ?」
「ってあれ、お前、一個ももらってねぇの?」
帰り支度をしている宮田くんに男子が何やら話しかけていた。
噂に聞いた話だけど、中学の頃の宮田くんはすごかったらしい。
机やら玄関やら直接手渡しやらで、たくさんチョコをもらって
んで、鞄に入りきらなくて、その辺の誰かが用意した紙袋に入れて帰ったとか。
でも今日は、宮田くんはそれらしきものを何も持っていない。
「受け取ってねぇんだよ」
宮田くんが面白くなさそうに答える。
「すげぇ答えだなそれ」
「一郎ったら嫌味ぃ~」
「本命以外からは受け取らないってやつ?」
男子が呆れたように、かつ羨ましそうな声で更に茶化した。
「そんなとこだな」
宮田くんは少しだけ笑みを浮かべて、それから教室を出て行った。
それから男子は、宮田くんがいかにモテるかとか、
何故モテるのかとか、秘訣は何なんだとか、色々なことを好き勝手に話していた。
別に後を追ったわけじゃない、ただもう掃除も終わったし、ってことで
私も鞄を持って教室を出て、玄関へ向かった。
玄関まで降りる階段で、泣いている女の子と、それを慰める子とすれ違った。
そして玄関には、まだ宮田くんが居た。
「あ、まだ居たんだ?」
思わず漏れた言葉。
「居ちゃ悪いかよ」
宮田くんが、またも面白くなさそうに答えた。
そこでピンと来た。
さっきすれ違った子に、呼び止められていたんだろう。
あのクールで冷静な宮田くんが今日は、少し気疲れしてそうに見えた。
「今日は大変だったね」
私も面白くなってつい、こんな風に茶化してみたくなった。
すると宮田くんは、少しため息をついて
「まぁな」
と答えた。
「そんな宮田くんに、ご褒美あげようか」
「何だよ」
宮田くんが少し身構えるような態度で聞き返す。
私はポケットをまさぐって、“それ”を宮田くんの前に差し出した。
「バレンタインお疲れさまでしたっ」
手のひらの小さなチロルチョコ。
今日、友達が配ってたやつの、残り1つ。
今日一日中、こんな風にチョコをさんざん渡されたであろう宮田くん。
そんな彼に、ちょっとしたイタズラ心というか、
今年は誰にもチョコをあげず流行に乗り遅れてしまった私の、
ただの腹いせにも似た意地悪心ってやつだったんだけど。
「どうもな」
宮田くんは私の手のひらのチョコを受け取って、
そしてその場で開けて、口の中に放り込んだ。
「う、受け取るんだ?」
「ん?」
少し驚いて私が聞くと、宮田くんは
「オレは本命以外からは受け取らないぜ」
その言葉に、思いっきり体が硬直した。
すると宮田くん、意地悪そうに笑って
「バカ、冗談だ」
「えっ?」
「明らかに義理なモンすら断るほど自意識過剰じゃねーよ」
確かに義理といえば義理だけど。
っていうか特に何も考えずに差し出したチロルチョコに
こんな風に、心を揺さぶられるとは思わなかった。
「じゃあな、高杉」
宮田くんの後ろ姿を眺めている今の私は、ただの完璧な乙女。
あまりの不意打ちに、身体が動かない。
すごいね、宮田くん。
君は無意識に、女の子をトリコにしちゃうんだ。
好きでもない子に、そんなセリフ吐いて。
そうやって種を撒いて、育てた花には見向きもしないなんて。
私、今度からあなたを「ジゴロ宮田」と呼びたいです。
愛を込めて。
完
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2011.2.12 高杉R26号
バレンタインデー企画です。
なのにこの甘さの欠片もない話!
いいんです、減量苦の宮田に甘いモノは厳禁ですからッッ