太陽の少年
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7.言葉の意味
帰り道、千堂は一言も口を開かない。
そろそろ"おんぶ"も一目を惹く大通りにさしかかって来た。
「降ろして」
倉庫を出てから、初めての言葉だった。
千堂は奈々を降ろすと、双手をポケットに入れてつぶやいた。
「送ってやるさかい。家どこや?」
「いいわよ」
「アカンて。また拉致られたらどないすんねや」
元はと言えばアンタのせいでしょ、というセリフが喉まで出かかったが押さえた。
奈々が「こっち」と指差すと、千堂はくるりと向きを変えて歩き出した。
不良がたむろするような場所ではない、普通の住宅街。
ここまで来て、ようやく奈々は心の緊張が少しほぐれた気がした。
しかし、ふとした瞬間にビジョンがフラッシュバックし、身体が震えだす。
血まみれで倒れている人間たちのグロテスクな風景、ナイフを突きつけられた恐怖、目の前で飛び交う拳と鈍い音。
どれもこれも、今までの人生には無かった。そして、一生縁がないものだと思っていた。
隣を歩く千堂は、そんな死闘があったことすらも伺わせない、涼しい顔をしている。
千堂のせいで変な争いに巻き込まれたというのに、謝罪のひとつもない。
さらに自分の心身を気遣うようなセリフすら、一言も言わないのだ。
おそらくこんなことは、さほど珍しいことでもないのだろう。
ほどなくして、奈々の自宅前に到着した。
「うち・・・ここだから」
「そか」
「送ってくれてありがとう」
奈々が入ろうとしたところで、千堂が言った。
「またなんかあったら助けたるからな」
その言葉を聞いた瞬間、奈々はものすごい怒りを覚えた。
ピタリと足を止め、くるりと振り返り、千堂のもとへ近づく。
「誰のせいだと思ってるの?」
「あ?」
千堂が意外そうな声で聞き返すと、奈々の怒りは頂点に達した。
「アンタのせいで巻き込まれたのよ?」
「せやけど、ちゃんと守ったやろ?ええやないけ」
千堂は本気でそう思っているらしい。奈々に声を荒げられて、些か不本意そうに答えた。
「ふざけないでよ!どつき合いが大好きなのは、アンタの勝手だとしても・・・・」
強いって何?
自分のセリフが頭の中を駆け巡った。
「何が"助ける"よ!?何が"守った"よ!?人を傷つけるだけの拳に、何の意味があるっていうのよ!!」
奈々の言葉に、千堂はただ呆然としている。
「そんな価値のない拳に、私が助けられたなんて思わないで!!!」
奈々はそう叫んで、マンションの中へと駆けて行った。
一人取り残された千堂は、今言われた言葉の意味を理解できずに、ただ怒鳴られたという事実に驚いていた。
そうしてしばし立ちすくんだあと、面白くなさそうに
「なんや、あの女」
とつぶやいて、帰路についた。
帰り道、千堂は一言も口を開かない。
そろそろ"おんぶ"も一目を惹く大通りにさしかかって来た。
「降ろして」
倉庫を出てから、初めての言葉だった。
千堂は奈々を降ろすと、双手をポケットに入れてつぶやいた。
「送ってやるさかい。家どこや?」
「いいわよ」
「アカンて。また拉致られたらどないすんねや」
元はと言えばアンタのせいでしょ、というセリフが喉まで出かかったが押さえた。
奈々が「こっち」と指差すと、千堂はくるりと向きを変えて歩き出した。
不良がたむろするような場所ではない、普通の住宅街。
ここまで来て、ようやく奈々は心の緊張が少しほぐれた気がした。
しかし、ふとした瞬間にビジョンがフラッシュバックし、身体が震えだす。
血まみれで倒れている人間たちのグロテスクな風景、ナイフを突きつけられた恐怖、目の前で飛び交う拳と鈍い音。
どれもこれも、今までの人生には無かった。そして、一生縁がないものだと思っていた。
隣を歩く千堂は、そんな死闘があったことすらも伺わせない、涼しい顔をしている。
千堂のせいで変な争いに巻き込まれたというのに、謝罪のひとつもない。
さらに自分の心身を気遣うようなセリフすら、一言も言わないのだ。
おそらくこんなことは、さほど珍しいことでもないのだろう。
ほどなくして、奈々の自宅前に到着した。
「うち・・・ここだから」
「そか」
「送ってくれてありがとう」
奈々が入ろうとしたところで、千堂が言った。
「またなんかあったら助けたるからな」
その言葉を聞いた瞬間、奈々はものすごい怒りを覚えた。
ピタリと足を止め、くるりと振り返り、千堂のもとへ近づく。
「誰のせいだと思ってるの?」
「あ?」
千堂が意外そうな声で聞き返すと、奈々の怒りは頂点に達した。
「アンタのせいで巻き込まれたのよ?」
「せやけど、ちゃんと守ったやろ?ええやないけ」
千堂は本気でそう思っているらしい。奈々に声を荒げられて、些か不本意そうに答えた。
「ふざけないでよ!どつき合いが大好きなのは、アンタの勝手だとしても・・・・」
強いって何?
自分のセリフが頭の中を駆け巡った。
「何が"助ける"よ!?何が"守った"よ!?人を傷つけるだけの拳に、何の意味があるっていうのよ!!」
奈々の言葉に、千堂はただ呆然としている。
「そんな価値のない拳に、私が助けられたなんて思わないで!!!」
奈々はそう叫んで、マンションの中へと駆けて行った。
一人取り残された千堂は、今言われた言葉の意味を理解できずに、ただ怒鳴られたという事実に驚いていた。
そうしてしばし立ちすくんだあと、面白くなさそうに
「なんや、あの女」
とつぶやいて、帰路についた。