太陽の少年
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2.姐御
「アイツや、アイツ」
「なんや、普通の女やんけ」
「ごっつ強いらしいで」
「千堂さんにビンタ食らわせたちゅうて」
あの日から、奈々を見に来る見学者が絶えない。
しかもたいていは、教室の外から一方的に眺め、一方的に批評し、一方的に去っていくのだ。
そして、元々誰とも交流していなかった奈々であるが、ますます他人との距離が出来た気がしていた。
というのも、自分が歩いているだけで、他人が道を避けるようになったからである。
先日、自分が平手打ちをした相手は「千堂」という男だと言うことが分かった。
そして彼が、同じクラスであり、実は隣の席だったということも知った。
もちろん、クラス内で見かけたことは、あの日まで一度もなかった。
他にも見かけたことのない人は大勢いるので、何も珍しいことではない。
それなのに・・・・
「なんや、アンタ同じクラスやったんか」
奈々はまさか、平手打ちした翌日に教室で会うとは思わなかった。
それから千堂は、割とクラスに顔を出すようになった。
だからといって、別に自分に話しかけてくるわけではない。
千堂の周りには常に"下っ端"の様なヤンキーがつきまとっていて、奈々と千堂の間にはヤンキーの壁が出来ている。
そのせいもあって、平手打ちを謝ることも、弁解することも出来ないでいた。
「千堂さん、南高のアホ共が、ウチの1年共に次々とヤキ入れてるらしいでっせ」
「この辺でシメとかなあきませんよ」
彼ら常に物騒な話をしている。千堂はあくびをして
「アホくさ。勝手にしい」
「千堂さん!」
「ミナミのアレ、大した強ないやろ?おもろないねん。勝手にやれや」
ここ数日で分かったことは、千堂がこの学校で一番"強いヤンキー"であるということ。
その割に、勢力争い等の話題には興味がないのか、殆どの"手下"の話を退屈そうに流している。
そしてこの図、休み時間ではない。授業中である。
全く凄いところに居るな、と奈々は自分で自分がおかしくなった。
奈々はそんな環境にありながらも、自分で教科書を広げて、勝手に勉強している。
誰も自分を気に懸けない環境は、思いの外集中できるものだ。
ふと、奈々は手を滑らせて消しゴムを落としてしまった。
消しゴムはコロコロと転がって、ヤンキーの群れの中に入り込んでいく。
「あの・・・消しゴム・・・」
「ああ!?」
ヤンキーのうちの1人が凄い形相で奈々を睨んできた。
するともう1人が奈々を見て、慌ててそのヤンキーを制止し
「お前、姐御になんてこと言うんや!」
あ、あねご・・・・・?
「あっ、姐さん!えらいすんまへん!」
「いや、その消しゴムを・・・」
「はい!これですね!どうぞ!」
奈々は自分の立場が全然理解できていなかった。
姐御というのは一体・・・・
ひょっとして、先日、千堂にビンタを食らわせたあの1件が、何か間違った方向へ進んでいるのか・・・!?
すると千堂が怠そうに聞く。
「姐御ってなんや」
「せ、千堂さんの大切な方やと・・・」
「誰がやねん」
「いや、せやからこの高杉さんが・・・」
「アホか」
不機嫌そうに席を立ち、千堂が続ける。
「ごっついビンタ食らっただけや」
奈々を一瞬ちらりと見て、千堂は教室を出て行った。
それにつられて、取り巻き達もゴソゴソと出て行く。
先ほどまでの喧噪が一気にすぎさり、辺りはしーんとなった。
教室には先生と、寝ている5人と、自習をしている奈々の、計7人しか居なくなった。
「アイツや、アイツ」
「なんや、普通の女やんけ」
「ごっつ強いらしいで」
「千堂さんにビンタ食らわせたちゅうて」
あの日から、奈々を見に来る見学者が絶えない。
しかもたいていは、教室の外から一方的に眺め、一方的に批評し、一方的に去っていくのだ。
そして、元々誰とも交流していなかった奈々であるが、ますます他人との距離が出来た気がしていた。
というのも、自分が歩いているだけで、他人が道を避けるようになったからである。
先日、自分が平手打ちをした相手は「千堂」という男だと言うことが分かった。
そして彼が、同じクラスであり、実は隣の席だったということも知った。
もちろん、クラス内で見かけたことは、あの日まで一度もなかった。
他にも見かけたことのない人は大勢いるので、何も珍しいことではない。
それなのに・・・・
「なんや、アンタ同じクラスやったんか」
奈々はまさか、平手打ちした翌日に教室で会うとは思わなかった。
それから千堂は、割とクラスに顔を出すようになった。
だからといって、別に自分に話しかけてくるわけではない。
千堂の周りには常に"下っ端"の様なヤンキーがつきまとっていて、奈々と千堂の間にはヤンキーの壁が出来ている。
そのせいもあって、平手打ちを謝ることも、弁解することも出来ないでいた。
「千堂さん、南高のアホ共が、ウチの1年共に次々とヤキ入れてるらしいでっせ」
「この辺でシメとかなあきませんよ」
彼ら常に物騒な話をしている。千堂はあくびをして
「アホくさ。勝手にしい」
「千堂さん!」
「ミナミのアレ、大した強ないやろ?おもろないねん。勝手にやれや」
ここ数日で分かったことは、千堂がこの学校で一番"強いヤンキー"であるということ。
その割に、勢力争い等の話題には興味がないのか、殆どの"手下"の話を退屈そうに流している。
そしてこの図、休み時間ではない。授業中である。
全く凄いところに居るな、と奈々は自分で自分がおかしくなった。
奈々はそんな環境にありながらも、自分で教科書を広げて、勝手に勉強している。
誰も自分を気に懸けない環境は、思いの外集中できるものだ。
ふと、奈々は手を滑らせて消しゴムを落としてしまった。
消しゴムはコロコロと転がって、ヤンキーの群れの中に入り込んでいく。
「あの・・・消しゴム・・・」
「ああ!?」
ヤンキーのうちの1人が凄い形相で奈々を睨んできた。
するともう1人が奈々を見て、慌ててそのヤンキーを制止し
「お前、姐御になんてこと言うんや!」
あ、あねご・・・・・?
「あっ、姐さん!えらいすんまへん!」
「いや、その消しゴムを・・・」
「はい!これですね!どうぞ!」
奈々は自分の立場が全然理解できていなかった。
姐御というのは一体・・・・
ひょっとして、先日、千堂にビンタを食らわせたあの1件が、何か間違った方向へ進んでいるのか・・・!?
すると千堂が怠そうに聞く。
「姐御ってなんや」
「せ、千堂さんの大切な方やと・・・」
「誰がやねん」
「いや、せやからこの高杉さんが・・・」
「アホか」
不機嫌そうに席を立ち、千堂が続ける。
「ごっついビンタ食らっただけや」
奈々を一瞬ちらりと見て、千堂は教室を出て行った。
それにつられて、取り巻き達もゴソゴソと出て行く。
先ほどまでの喧噪が一気にすぎさり、辺りはしーんとなった。
教室には先生と、寝ている5人と、自習をしている奈々の、計7人しか居なくなった。