太陽の少年
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14.決別
「すまん、間に合わんかって」
つかつかと近づいて来た千堂を、奈々は思わず避けてしまった。
久々に見る、ケンカ直後の千堂に、頭で考えるよりも反射的に怯んでしまったのだ。
フラッシュバックする血のにおい。
顔に当てられたナイフのギラつき。
狂ったように笑みを浮かべて、人を殴りつける千堂の顔。
「なんで、避けるんや」
後ずさりした奈々を見て、不思議そうに千堂が尋ねる。
その目はいつもの千堂とは違って、獲物を狩る虎のように獰猛に見えた。
「・・・怖いよ」
「ああ?」
奈々はギュッと拳を握りしめて、下を向きながら続けた。
「千堂くんが怖いって言ってるの」
「・・・・今更、何言うてんねや?」
千堂は、奈々の手首をやや乱暴に掴んで言った。
「高杉、言いたいことがあんねん」
「・・・聞きたくない」
奈々の答えを聞いて、千堂は更に力を強めて、奈々を引き寄せるように腕を引っ張った。
「痛いってば!」
「ええから聞けや!」
「聞きたくないってば!」
「やかましいわ!聞けや!!お前が好きなんや!!」
千堂の目は相変わらず獰猛で、今にも人を殴りそうな気配を醸し出している。
なのに、その目とは全く不似合いな単語が飛び出して、奈々は大いに面食らった。
手首を掴む、千堂の手のひらが熱い。
千堂はしばらくして、奈々のおびえた様子にようやく気づき、手を離した。
「せやから・・・・このままお別れなんてできるかい」
その言葉に奈々は固まるしか無かった。
千堂は更に一歩近づいて、奈々を捕まえようとした。
その刹那、奈々は無意識に身体をこわばらせ、考えるより先に身を引いた。
「・・・なにをそんなに怯えとんねん」
千堂がつまらなそうに言う。
相変わらず千堂は分かっていない、自分とは根本的に住む世界が違うのだ、と奈々は思った。
「私のことが好きだっていうなら・・・」
奈々が静かに口を開くと、千堂は静かに耳を傾けた。
「どうして学校に来てくれないで、ケンカしてたのよ」
「しゃーないやろ、行く途中で売られたんやから」
明らかに不機嫌そうな態度を取って、千堂はつまらなそうに言い返した。
「ケンカした後の千堂くん・・・怖いよ」
「あ?」
「私とは別世界にいるみたい」
「なんやそれ」
そういって、再度奈々の手首を掴もうとした千堂の手をすり抜けるようにかわした。
「どうしてケンカばっかりするのよ・・・?」
「前にも言ったやろ、どつき合いが好きやって」
ため息まじりで答える千堂に、奈々が言い返す。
「それって、自分が強いって思えるからなんでしょ?」
「そうや」
「じゃあ、強いって何よ?」
奈々が声を荒げると、千堂は一瞬驚いて、言葉を失った。
「相手を殴り倒すことが、千堂くんの目指す強さだっていうの?」
千堂は返す言葉もなく、ただ黙って奈々を見ている。
その様子は明らかに不服そうで、睨んでいるという言葉の方がお似合いかもしれない。
千堂くんは、決して弱くない。
むしろ私は、彼の強さを知ってる。
でも、それは相手を力でねじ伏せる強さじゃない。
もっと尊くて、もっと誇り高い強さを持っているのに。
どうしてその強さを汚すようなことしかできないんだろう。
「言ったでしょ、そんなの何も価値がないって」
「知るか!ワイはこれしか知らんねん!」
千堂は苛立を分散させるかのように、拳を豪快に塀に打ち付けた。
拳と壁の間から、真っ赤な血が滴り落ちる。
微かに、拳が震えている気がした。
「・・・もぉええ。わかったわ」
「何がよ」
「もう二度と会わん」
千堂はそういうと、くるりと身を翻して奈々に背を向けた。
それから振り返らずに、そのまま立ち去っていった。
塀にはどす黒い血の跡が、くっきりと残っていた。
「すまん、間に合わんかって」
つかつかと近づいて来た千堂を、奈々は思わず避けてしまった。
久々に見る、ケンカ直後の千堂に、頭で考えるよりも反射的に怯んでしまったのだ。
フラッシュバックする血のにおい。
顔に当てられたナイフのギラつき。
狂ったように笑みを浮かべて、人を殴りつける千堂の顔。
「なんで、避けるんや」
後ずさりした奈々を見て、不思議そうに千堂が尋ねる。
その目はいつもの千堂とは違って、獲物を狩る虎のように獰猛に見えた。
「・・・怖いよ」
「ああ?」
奈々はギュッと拳を握りしめて、下を向きながら続けた。
「千堂くんが怖いって言ってるの」
「・・・・今更、何言うてんねや?」
千堂は、奈々の手首をやや乱暴に掴んで言った。
「高杉、言いたいことがあんねん」
「・・・聞きたくない」
奈々の答えを聞いて、千堂は更に力を強めて、奈々を引き寄せるように腕を引っ張った。
「痛いってば!」
「ええから聞けや!」
「聞きたくないってば!」
「やかましいわ!聞けや!!お前が好きなんや!!」
千堂の目は相変わらず獰猛で、今にも人を殴りそうな気配を醸し出している。
なのに、その目とは全く不似合いな単語が飛び出して、奈々は大いに面食らった。
手首を掴む、千堂の手のひらが熱い。
千堂はしばらくして、奈々のおびえた様子にようやく気づき、手を離した。
「せやから・・・・このままお別れなんてできるかい」
その言葉に奈々は固まるしか無かった。
千堂は更に一歩近づいて、奈々を捕まえようとした。
その刹那、奈々は無意識に身体をこわばらせ、考えるより先に身を引いた。
「・・・なにをそんなに怯えとんねん」
千堂がつまらなそうに言う。
相変わらず千堂は分かっていない、自分とは根本的に住む世界が違うのだ、と奈々は思った。
「私のことが好きだっていうなら・・・」
奈々が静かに口を開くと、千堂は静かに耳を傾けた。
「どうして学校に来てくれないで、ケンカしてたのよ」
「しゃーないやろ、行く途中で売られたんやから」
明らかに不機嫌そうな態度を取って、千堂はつまらなそうに言い返した。
「ケンカした後の千堂くん・・・怖いよ」
「あ?」
「私とは別世界にいるみたい」
「なんやそれ」
そういって、再度奈々の手首を掴もうとした千堂の手をすり抜けるようにかわした。
「どうしてケンカばっかりするのよ・・・?」
「前にも言ったやろ、どつき合いが好きやって」
ため息まじりで答える千堂に、奈々が言い返す。
「それって、自分が強いって思えるからなんでしょ?」
「そうや」
「じゃあ、強いって何よ?」
奈々が声を荒げると、千堂は一瞬驚いて、言葉を失った。
「相手を殴り倒すことが、千堂くんの目指す強さだっていうの?」
千堂は返す言葉もなく、ただ黙って奈々を見ている。
その様子は明らかに不服そうで、睨んでいるという言葉の方がお似合いかもしれない。
千堂くんは、決して弱くない。
むしろ私は、彼の強さを知ってる。
でも、それは相手を力でねじ伏せる強さじゃない。
もっと尊くて、もっと誇り高い強さを持っているのに。
どうしてその強さを汚すようなことしかできないんだろう。
「言ったでしょ、そんなの何も価値がないって」
「知るか!ワイはこれしか知らんねん!」
千堂は苛立を分散させるかのように、拳を豪快に塀に打ち付けた。
拳と壁の間から、真っ赤な血が滴り落ちる。
微かに、拳が震えている気がした。
「・・・もぉええ。わかったわ」
「何がよ」
「もう二度と会わん」
千堂はそういうと、くるりと身を翻して奈々に背を向けた。
それから振り返らずに、そのまま立ち去っていった。
塀にはどす黒い血の跡が、くっきりと残っていた。