LUCKY STAR
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9.せいせいした背中
しばらくの沈黙が続いた。
飯村はマグカップを手に取り、すっかり冷めた紅茶をすすって答えた。
「それで、あなたは…外の世界から、私たちの“漫画の世界”に来たっていうのね」
「わ、分かってくれましたか?」
「・・・分かりたくないけど」
神妙な面持ちから、急にふっと優しい表情に戻る。
どうやら何か、吹っ切れたものがあるようだ。
「で、あなたは宮田くんと恋するために、ここに来たのね」
「は、はい・・・まぁ、思いっきり嫌われてますけど」
奈々の言葉に飯村は思わず吹き出した。
ちくしょう吹き出した顔も美人だなこんにゃろ、と奈々は思った。
「じゃあ・・・あなた、ココに居てはだめね」
「そ、そうなんです」
「宮田くんのところに帰らないとね?」
「そ、そういうことです」
すると飯村、ゆっくりと腰を上げ、空になった二つのマグカップを持ってキッチンへ向かった。それから、
「自分の事が日本全国に知れ渡ってて、プライベートまで丸裸にされてるなんて、正直気分が悪いけど」
マグカップを軽く濯ぎながら、続ける。
「一人でこんなところに来たあなたの方が、大変かもしれないわね」
その言葉に、また奈々は自然と涙がこぼれてくるのが分かった。
宮田宮田と浮かれていたけど、正直、不安があった。
よくわからない世界に迷い込んで、元の世界に戻れるのかな?
お母さんにもう一度会えるんだろうか?
このまま戻れなくて、宮田くんにも相手にされなかったら?
見ないようにしていた不安が、飯村のひと言で急に眼前に降り立ち、奈々は体が震えてくるのを感じていた。
「大丈夫よ」
飯村はキッチンから再びリビングに戻り、ソファに腰掛けた。
「頃合いを見て、宮田くんのところにあなたを返すわ」
————————
次の日、宮田が律儀に荷物を届けにきた。
マンションの入り口とは言え、宮田が女性の家に来た事をちょっと面白く思わない自分を、奈々は感じていた。
飯村は何も言わず、快く荷物を受け取った。
宮田が去ったのを確認してから、奈々は
「真理さぁん、どうして・・・」
「私が急に態度を変えたら変に思うでしょ?こういうものは作戦ありきよ」
お、大人だ・・・・
真理さん、やっぱりカッコいいわ・・・
なのに一歩がらみになると、とたんにカッコ悪いのよね。
宮田が去り際に、こちらに一瞥もくれなかったことが気になった。
自分のことなんて、このバッグと同じ、お荷物程度にしか感じていないのかなと奈々は正直、胸が苦しかった。
「見て、あの背中。せいせいした感じよね」
「・・・嫌みですか、真理さん」
しばらくの沈黙が続いた。
飯村はマグカップを手に取り、すっかり冷めた紅茶をすすって答えた。
「それで、あなたは…外の世界から、私たちの“漫画の世界”に来たっていうのね」
「わ、分かってくれましたか?」
「・・・分かりたくないけど」
神妙な面持ちから、急にふっと優しい表情に戻る。
どうやら何か、吹っ切れたものがあるようだ。
「で、あなたは宮田くんと恋するために、ここに来たのね」
「は、はい・・・まぁ、思いっきり嫌われてますけど」
奈々の言葉に飯村は思わず吹き出した。
ちくしょう吹き出した顔も美人だなこんにゃろ、と奈々は思った。
「じゃあ・・・あなた、ココに居てはだめね」
「そ、そうなんです」
「宮田くんのところに帰らないとね?」
「そ、そういうことです」
すると飯村、ゆっくりと腰を上げ、空になった二つのマグカップを持ってキッチンへ向かった。それから、
「自分の事が日本全国に知れ渡ってて、プライベートまで丸裸にされてるなんて、正直気分が悪いけど」
マグカップを軽く濯ぎながら、続ける。
「一人でこんなところに来たあなたの方が、大変かもしれないわね」
その言葉に、また奈々は自然と涙がこぼれてくるのが分かった。
宮田宮田と浮かれていたけど、正直、不安があった。
よくわからない世界に迷い込んで、元の世界に戻れるのかな?
お母さんにもう一度会えるんだろうか?
このまま戻れなくて、宮田くんにも相手にされなかったら?
見ないようにしていた不安が、飯村のひと言で急に眼前に降り立ち、奈々は体が震えてくるのを感じていた。
「大丈夫よ」
飯村はキッチンから再びリビングに戻り、ソファに腰掛けた。
「頃合いを見て、宮田くんのところにあなたを返すわ」
————————
次の日、宮田が律儀に荷物を届けにきた。
マンションの入り口とは言え、宮田が女性の家に来た事をちょっと面白く思わない自分を、奈々は感じていた。
飯村は何も言わず、快く荷物を受け取った。
宮田が去ったのを確認してから、奈々は
「真理さぁん、どうして・・・」
「私が急に態度を変えたら変に思うでしょ?こういうものは作戦ありきよ」
お、大人だ・・・・
真理さん、やっぱりカッコいいわ・・・
なのに一歩がらみになると、とたんにカッコ悪いのよね。
宮田が去り際に、こちらに一瞥もくれなかったことが気になった。
自分のことなんて、このバッグと同じ、お荷物程度にしか感じていないのかなと奈々は正直、胸が苦しかった。
「見て、あの背中。せいせいした感じよね」
「・・・嫌みですか、真理さん」