LUCKY STAR
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30.星がキラリ
「もっと振りをコンパクトに。体が開いてるぞ!」
「OK父さん」
ジムでのミット打ちも、今日はまだ3ラウンド程度しかしていないにもかかわらず、宮田はどこか調子が悪そうだ。
「どうした、下半身がふらついているぞ」
「…わかってるよ」
朝起きたら、なぜか知らないが全身に力が入らない。
激しい運動なら毎日やってはいるが、何か別の筋肉を使ったような感じがする。
日中のバイトでも、腰がフラついている自分に気がついていた。
一体、何をしたんだろう…まったく記憶にない。
インターバルで、へたり込む息子に、父親が話しかける。
「その…なんだ。お前も年頃だから仕方はないが…」
ゴホン、と咳払いを一つ挟み込む。
「適度にな。あと、試合前は、やめておけよ」
父親の指摘に、最初は大きな疑問符が浮かんだが、何を言っているのかの察しはすぐについた。
「違うよ父さん…そんなんじゃ…」
「言い訳はいらん」
「本当だって!」
「今日はもう終いだ。使い物にならん。帰れ!」
まったく身に覚えのない疲労感を、若者の性衝動と誤解されては敵わないと宮田は怒りすら覚えたが、不思議となぜか、毅然とした反論ができない自分にも気がついていた。
かすかに、なんとなく、そんなことをしたような気が、しないでもない…
ジムワークを早めに終え、宮田は帰路につく。
「ただいま」
ドアを開けて、誰もいない部屋に向かって呟いたところで、宮田は我に返った。
ただいまって…誰に言ってんだ?
打たれすぎて、頭おかしくなったか…
無造作にカバンを床に置いて、どっかと座り込む。
なんの音もない、静かな空間。
何か、違和感がある。
何か、足りないような気がする。
「はぁ」
ため息をついたところで、ふっと後ろに伸ばした手の先に、何かいびつな形のモノが触れた。
ベッドの脇に、何かが落ちている。
「…なんだこれ」
星型の、小さなモニュメント。
タイ修行時に、道端のスラムの子供にいくつか安い飾り物を(半ば強引に)買わされたことがあったのを、宮田は思い出した。
「あの時…こんなの…買ったか?」
記憶が曖昧で、思い出せない。
買っていたとして、どうしてそれがベッドの脇に落ちているのか…
「…まぁいい」
宮田はジャージ姿のまま、ベッドに寄りかかって寝てしまった。
星が一度だけキラリと光ったのを、宮田は知らない。
END
「もっと振りをコンパクトに。体が開いてるぞ!」
「OK父さん」
ジムでのミット打ちも、今日はまだ3ラウンド程度しかしていないにもかかわらず、宮田はどこか調子が悪そうだ。
「どうした、下半身がふらついているぞ」
「…わかってるよ」
朝起きたら、なぜか知らないが全身に力が入らない。
激しい運動なら毎日やってはいるが、何か別の筋肉を使ったような感じがする。
日中のバイトでも、腰がフラついている自分に気がついていた。
一体、何をしたんだろう…まったく記憶にない。
インターバルで、へたり込む息子に、父親が話しかける。
「その…なんだ。お前も年頃だから仕方はないが…」
ゴホン、と咳払いを一つ挟み込む。
「適度にな。あと、試合前は、やめておけよ」
父親の指摘に、最初は大きな疑問符が浮かんだが、何を言っているのかの察しはすぐについた。
「違うよ父さん…そんなんじゃ…」
「言い訳はいらん」
「本当だって!」
「今日はもう終いだ。使い物にならん。帰れ!」
まったく身に覚えのない疲労感を、若者の性衝動と誤解されては敵わないと宮田は怒りすら覚えたが、不思議となぜか、毅然とした反論ができない自分にも気がついていた。
かすかに、なんとなく、そんなことをしたような気が、しないでもない…
ジムワークを早めに終え、宮田は帰路につく。
「ただいま」
ドアを開けて、誰もいない部屋に向かって呟いたところで、宮田は我に返った。
ただいまって…誰に言ってんだ?
打たれすぎて、頭おかしくなったか…
無造作にカバンを床に置いて、どっかと座り込む。
なんの音もない、静かな空間。
何か、違和感がある。
何か、足りないような気がする。
「はぁ」
ため息をついたところで、ふっと後ろに伸ばした手の先に、何かいびつな形のモノが触れた。
ベッドの脇に、何かが落ちている。
「…なんだこれ」
星型の、小さなモニュメント。
タイ修行時に、道端のスラムの子供にいくつか安い飾り物を(半ば強引に)買わされたことがあったのを、宮田は思い出した。
「あの時…こんなの…買ったか?」
記憶が曖昧で、思い出せない。
買っていたとして、どうしてそれがベッドの脇に落ちているのか…
「…まぁいい」
宮田はジャージ姿のまま、ベッドに寄りかかって寝てしまった。
星が一度だけキラリと光ったのを、宮田は知らない。
END