LUCKY STAR
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29.証拠
「ほら、早く起きなさい!今日は友達と旅行に行くんでしょう?」
母親が部屋に入って来て、勢いよくカーテンを開けると、強烈な眩しい朝日が目に飛び込んで来た。
友達と旅行…?
ああ、そんなこと計画していたっけ。
じゃあ、そうか、今日は…
あのラッキースターを買った、次の日。
壮大な、夢オチ。
「はぁ」
「何を辛気臭い顔しているのよ。あんなに楽しみにしてた旅行なのに」
「うん…」
「バスターミナルで待ち合わせなんでしょう?遅刻しないように、さっさと支度するのよ。まったく幾つになってもこの子は子供みたいに…」
母親は小言を続けながら、階段を降りて行く。
奈々もぐっと体を起こして伸びをする。
筋肉痛らしい体の痛みが全身を襲った。
「…ったぁ…。なんだろ、体が痛い…」
部屋をざっと見渡すと、昨日用意したボストンバッグが目に入った。
ハッと思い立って、バッグを開ける。
ラッキースターが、ない。
「お母さん、私昨日、露店で変な星のおもちゃ買ったじゃない?」
1階に降りて、台所に立つ母親に尋ねる。
「あー、あの怪しい人が売ってたやつ?」
「そう。あれどこ行ったか知らない?」
「ママが知ってるわけないじゃない。あんたったらすぐに物なくすんだから…」
どうやら、私はラッキースターを買ったようだ。
それは夢ではないらしい。
でも、その肝心の本体が消えている。
これは一体…
「って、考えている時間ないわ!行ってくる!」
「あんたったら朝ごはんも食べないで」
「ごめん!お土産買ってくるからぁ~!」
適当な服に身を包み家を出て、化粧は行きの路線バスの中で(他人に白い目で見られながら)整えた。
バスターミナルに着くと、もうすでに友達は到着してて、奈々のことを待っていたようだった。
「ごめんごめん、お待たせ!」
「もー。来ないかと思った…って…まぁまぁ」
「あらあら、奈々ちゃん。そのせいでお寝坊したのかしらぁ?」
「え?」
友人二人が顔を見合わせてニヤニヤと笑っている。
「なになに?なんか顔についてる?」
「いや、顔っていうか」
「てかアンタ、朝、鏡見なかったの?」
「へ?」
なんのことかまったくわからない。
友人がこそりと、耳打ちで種明かしをする。
「首にがっつりキスマークついてるよ」
キスマーク?
誰の?
…まさか、宮田くんの?
「ええええ!!嘘!!嘘だって!!ありえない!」
奈々の顔がみるみる赤くなり、焦りを通り越してうろたえているのを見て、友人らは単に恥ずかしさでテンパっているのだと勘違いしはじめた。
「奈々ったらいつの間にぃ~」
「やることやってますなぁ、奈々嬢~」
肘でつづいて奈々を揶揄する二人の間で、奈々は首元を手で隠しながら必死に説明を続ける。
「いやいやいや何これ!え?嘘でしょ!?蚊でしょ多分!」
「バカ、蚊に刺されたくらいでそんな跡つかないから」
壮大な夢オチに、一つだけ残った、愛の証…
夢じゃ無かった?本当だった?
宮田くんは、私を、愛してくれた?
『保険をかけておく』
『またな』
このコトだったのか…
私が単なる夢だったと思わないための…
あれは確かに現実だったと示すための…
「ああ…なんか、泣けて来た」
「え、ちょっとどうしたの奈々、重い」
「わかったわかった、訳ありなのね。温泉でゆっくり聞いたげる」
ガヤガヤと騒ぐ友人の存在が心地よい。
間も無くバスがやって来て、私たちは相変わらずガヤガヤしながら乗り込んだ。
「こないだの授業、3限目のさあ」
「あ~、あの教授厳しいよねぇ」
「奈々は得意だよね、あの科目。“宮田くんの栄養指導するんだぁ”とか二次元こじらせたおかげで」
「あ…うん…」
「なあに今日の奈々、テンション低~い」
宮田くんの役に立ちたくて、選んだ将来の夢は「栄養士」。
宮田くんなんて、現実にいないのにね。
ああ、そうだ、私、帰って来たんだ。
私の世界に。
宮田くん、まだ話してないことたくさんあったんだよ。
もう一度、会いたいよ。もう一度…
いや…いつでも会えるじゃない。
本をひらけば、いつだって。
応援してるよ。
もう2度と会えなくても。
前と同じ、いや、それ以上に、君が好きだから。
宮田くん………またね。
温泉へ向かうバスの車窓で、奈々は再び眠りについた。
「ちょっとお、奈々。行き早々寝る?普通」
「まぁまぁ、お疲れなのよ、青春奈々ちゃんは」
「ってか相手誰だと思う?」
「宮田一郎じゃない?」
「ギャハハ、それウケる!」
友人の笑い声が、バス中にこだまする。
ああ、おかえり、私。
「ほら、早く起きなさい!今日は友達と旅行に行くんでしょう?」
母親が部屋に入って来て、勢いよくカーテンを開けると、強烈な眩しい朝日が目に飛び込んで来た。
友達と旅行…?
ああ、そんなこと計画していたっけ。
じゃあ、そうか、今日は…
あのラッキースターを買った、次の日。
壮大な、夢オチ。
「はぁ」
「何を辛気臭い顔しているのよ。あんなに楽しみにしてた旅行なのに」
「うん…」
「バスターミナルで待ち合わせなんでしょう?遅刻しないように、さっさと支度するのよ。まったく幾つになってもこの子は子供みたいに…」
母親は小言を続けながら、階段を降りて行く。
奈々もぐっと体を起こして伸びをする。
筋肉痛らしい体の痛みが全身を襲った。
「…ったぁ…。なんだろ、体が痛い…」
部屋をざっと見渡すと、昨日用意したボストンバッグが目に入った。
ハッと思い立って、バッグを開ける。
ラッキースターが、ない。
「お母さん、私昨日、露店で変な星のおもちゃ買ったじゃない?」
1階に降りて、台所に立つ母親に尋ねる。
「あー、あの怪しい人が売ってたやつ?」
「そう。あれどこ行ったか知らない?」
「ママが知ってるわけないじゃない。あんたったらすぐに物なくすんだから…」
どうやら、私はラッキースターを買ったようだ。
それは夢ではないらしい。
でも、その肝心の本体が消えている。
これは一体…
「って、考えている時間ないわ!行ってくる!」
「あんたったら朝ごはんも食べないで」
「ごめん!お土産買ってくるからぁ~!」
適当な服に身を包み家を出て、化粧は行きの路線バスの中で(他人に白い目で見られながら)整えた。
バスターミナルに着くと、もうすでに友達は到着してて、奈々のことを待っていたようだった。
「ごめんごめん、お待たせ!」
「もー。来ないかと思った…って…まぁまぁ」
「あらあら、奈々ちゃん。そのせいでお寝坊したのかしらぁ?」
「え?」
友人二人が顔を見合わせてニヤニヤと笑っている。
「なになに?なんか顔についてる?」
「いや、顔っていうか」
「てかアンタ、朝、鏡見なかったの?」
「へ?」
なんのことかまったくわからない。
友人がこそりと、耳打ちで種明かしをする。
「首にがっつりキスマークついてるよ」
キスマーク?
誰の?
…まさか、宮田くんの?
「ええええ!!嘘!!嘘だって!!ありえない!」
奈々の顔がみるみる赤くなり、焦りを通り越してうろたえているのを見て、友人らは単に恥ずかしさでテンパっているのだと勘違いしはじめた。
「奈々ったらいつの間にぃ~」
「やることやってますなぁ、奈々嬢~」
肘でつづいて奈々を揶揄する二人の間で、奈々は首元を手で隠しながら必死に説明を続ける。
「いやいやいや何これ!え?嘘でしょ!?蚊でしょ多分!」
「バカ、蚊に刺されたくらいでそんな跡つかないから」
壮大な夢オチに、一つだけ残った、愛の証…
夢じゃ無かった?本当だった?
宮田くんは、私を、愛してくれた?
『保険をかけておく』
『またな』
このコトだったのか…
私が単なる夢だったと思わないための…
あれは確かに現実だったと示すための…
「ああ…なんか、泣けて来た」
「え、ちょっとどうしたの奈々、重い」
「わかったわかった、訳ありなのね。温泉でゆっくり聞いたげる」
ガヤガヤと騒ぐ友人の存在が心地よい。
間も無くバスがやって来て、私たちは相変わらずガヤガヤしながら乗り込んだ。
「こないだの授業、3限目のさあ」
「あ~、あの教授厳しいよねぇ」
「奈々は得意だよね、あの科目。“宮田くんの栄養指導するんだぁ”とか二次元こじらせたおかげで」
「あ…うん…」
「なあに今日の奈々、テンション低~い」
宮田くんの役に立ちたくて、選んだ将来の夢は「栄養士」。
宮田くんなんて、現実にいないのにね。
ああ、そうだ、私、帰って来たんだ。
私の世界に。
宮田くん、まだ話してないことたくさんあったんだよ。
もう一度、会いたいよ。もう一度…
いや…いつでも会えるじゃない。
本をひらけば、いつだって。
応援してるよ。
もう2度と会えなくても。
前と同じ、いや、それ以上に、君が好きだから。
宮田くん………またね。
温泉へ向かうバスの車窓で、奈々は再び眠りについた。
「ちょっとお、奈々。行き早々寝る?普通」
「まぁまぁ、お疲れなのよ、青春奈々ちゃんは」
「ってか相手誰だと思う?」
「宮田一郎じゃない?」
「ギャハハ、それウケる!」
友人の笑い声が、バス中にこだまする。
ああ、おかえり、私。