LUCKY STAR
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24.最後の日曜日
日曜日の朝。
バイトもジムも休みの、完全なる休日。
宮田はいつも、日曜日を休養日として、軽いロードワークの他はせず、日々の疲労を抜くように過ごしている。
疲れを抜くのも、アスリートの仕事だ。
起床時間はいつもと同じ。
運動着に着替えて、ロードワークに出る。
相手を起こさないように、ゆっくり身体を起こすのには慣れた。
だが今日は…その、起こさないようにする相手の姿が、隣に無かった。
慌てて掛け布団を全てめくり上げる。
ひょっとしたら、中でうずくまっているんじゃないかと期待したが、残念ながら何もない。
キッチン、風呂場、玄関・・・
部屋中を探しても、どこにもいない。
「……ふざけんなよ」
消えないように
心を背けていたつもりなのに
「…う…ぅん……」
居間から突然間抜けな声が聞こえて来たので、宮田はすぐにベッドの方へ目を向けると、奈々が寝ているのが目に入った。
先ほどまでいなかった、その場所に。
ゆっくりと近づいて、ベッドに腰掛ける。
そして頭を撫でようと近づけた手が、空を切った。
前と同じ、ホログラム映像のように、実体が消えかかっているのだ。
オレがいくら見ないふりをしても、意味がないのなら。
それならいっそ・・・・
宮田はしばしうつむき、頭を抱えた。
そうして再び顔を上げた時には、何か決意めいた表情を浮かべていた。
-----------------------
宮田がロードワークから帰ると、奈々はすでに起きていて、部屋の掃除をしていた。
休養日である日曜は、宮田は以前なら溜まった洗濯物を片付けたり、部屋の掃除をしたりして終わっていたが、奈々が来てからはそれをする必要もなく…
研究用のビデオを見たり、雑誌を読んだり、買い物に行ったりして過ごしていた。
だが今日は、なにやら少し、様子が違うらしい。
どこかへ行くのか、着替えて支度を始めた宮田を、奈々は不思議そうに眺める。
「アンタも…出かける用意してくれ」
「え?」
突然の命令に、思わず声が上ずる。
「早く」
「は、はい」
言われるがままに、支度をして、二人で家を出る。
宮田は一歩先を歩いて振り返らず、奈々はずっと宮田の後ろ姿ばかりを見ながら歩いている。
なんだろう。
デートのつもり?
だったら手ぐらい繋ぎたい…
何度か手を伸ばしかけたが、結局、宮田の指にすら触れられなかった。
触れたら…消えてしまいそうな、気がした。
歩いて出て来た先は、河原。
ここは一歩と宮田くんがジュースを飲みながら話をしていたところではないか…?
そんな伝説の場所に案内してもらえるとは思わなかった、と奈々は顔がにやけるのを抑えるのに必死になっていた。
「どうした?」
「ううん、何も」
宮田は一瞬だけ振り返り、奈々の様子を伺った後、また前を見て川の向こうを眺め…そして、土手に腰掛けた。
奈々もその横に座る。
何も言わない宮田の横で、奈々は向こう岸を眺める。
向こうには何があるんだろう。
何を思って、向こうを見て居たんだろう。
いつの日も、何を思って…
ああ、今がそのチャンスだ。
思いの丈を、伝える時だ。
「ねぇ、宮田くん」
「なんだよ」
「好き」
「知ってるよ」
相変わらずの塩対応。
顔色一つ変えない。言われ慣れているのだろうか。
「いろいろありがとう」
「何もしてねぇよ」
「楽しかった。幸せだった」
宮田は何も言わずに、ただ目を開いたまま遠くを見ているだけだ。
ふわりと流れる風に、宮田の匂いが乗っている。
同じ目線で、同じものを見ている刹那。
肩がくっつくか、くっつかないかの距離。
奈々が意を決して、半歩、隣へ詰めようとした時だった。
「今夜」
宮田が口を開いたかと思うと、無表情のまま一瞥もせずに呟いた。
「アンタを抱く」
思わぬ発言に、奈々は我が耳を疑い、固まった。
一方の宮田は相変わらず、向こう岸を見ていた。
日曜日の朝。
バイトもジムも休みの、完全なる休日。
宮田はいつも、日曜日を休養日として、軽いロードワークの他はせず、日々の疲労を抜くように過ごしている。
疲れを抜くのも、アスリートの仕事だ。
起床時間はいつもと同じ。
運動着に着替えて、ロードワークに出る。
相手を起こさないように、ゆっくり身体を起こすのには慣れた。
だが今日は…その、起こさないようにする相手の姿が、隣に無かった。
慌てて掛け布団を全てめくり上げる。
ひょっとしたら、中でうずくまっているんじゃないかと期待したが、残念ながら何もない。
キッチン、風呂場、玄関・・・
部屋中を探しても、どこにもいない。
「……ふざけんなよ」
消えないように
心を背けていたつもりなのに
「…う…ぅん……」
居間から突然間抜けな声が聞こえて来たので、宮田はすぐにベッドの方へ目を向けると、奈々が寝ているのが目に入った。
先ほどまでいなかった、その場所に。
ゆっくりと近づいて、ベッドに腰掛ける。
そして頭を撫でようと近づけた手が、空を切った。
前と同じ、ホログラム映像のように、実体が消えかかっているのだ。
オレがいくら見ないふりをしても、意味がないのなら。
それならいっそ・・・・
宮田はしばしうつむき、頭を抱えた。
そうして再び顔を上げた時には、何か決意めいた表情を浮かべていた。
-----------------------
宮田がロードワークから帰ると、奈々はすでに起きていて、部屋の掃除をしていた。
休養日である日曜は、宮田は以前なら溜まった洗濯物を片付けたり、部屋の掃除をしたりして終わっていたが、奈々が来てからはそれをする必要もなく…
研究用のビデオを見たり、雑誌を読んだり、買い物に行ったりして過ごしていた。
だが今日は、なにやら少し、様子が違うらしい。
どこかへ行くのか、着替えて支度を始めた宮田を、奈々は不思議そうに眺める。
「アンタも…出かける用意してくれ」
「え?」
突然の命令に、思わず声が上ずる。
「早く」
「は、はい」
言われるがままに、支度をして、二人で家を出る。
宮田は一歩先を歩いて振り返らず、奈々はずっと宮田の後ろ姿ばかりを見ながら歩いている。
なんだろう。
デートのつもり?
だったら手ぐらい繋ぎたい…
何度か手を伸ばしかけたが、結局、宮田の指にすら触れられなかった。
触れたら…消えてしまいそうな、気がした。
歩いて出て来た先は、河原。
ここは一歩と宮田くんがジュースを飲みながら話をしていたところではないか…?
そんな伝説の場所に案内してもらえるとは思わなかった、と奈々は顔がにやけるのを抑えるのに必死になっていた。
「どうした?」
「ううん、何も」
宮田は一瞬だけ振り返り、奈々の様子を伺った後、また前を見て川の向こうを眺め…そして、土手に腰掛けた。
奈々もその横に座る。
何も言わない宮田の横で、奈々は向こう岸を眺める。
向こうには何があるんだろう。
何を思って、向こうを見て居たんだろう。
いつの日も、何を思って…
ああ、今がそのチャンスだ。
思いの丈を、伝える時だ。
「ねぇ、宮田くん」
「なんだよ」
「好き」
「知ってるよ」
相変わらずの塩対応。
顔色一つ変えない。言われ慣れているのだろうか。
「いろいろありがとう」
「何もしてねぇよ」
「楽しかった。幸せだった」
宮田は何も言わずに、ただ目を開いたまま遠くを見ているだけだ。
ふわりと流れる風に、宮田の匂いが乗っている。
同じ目線で、同じものを見ている刹那。
肩がくっつくか、くっつかないかの距離。
奈々が意を決して、半歩、隣へ詰めようとした時だった。
「今夜」
宮田が口を開いたかと思うと、無表情のまま一瞥もせずに呟いた。
「アンタを抱く」
思わぬ発言に、奈々は我が耳を疑い、固まった。
一方の宮田は相変わらず、向こう岸を見ていた。