LUCKY STAR
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22.嫌だね
ああ、ひどい嫌われよう。
来た時よりもさらに、嫌われている気がする。
冷たい氷みたいな態度。
そして…日に日に、薄まる自分の影。
「やっすい500円のオモチャに、何を期待したんだろう私は」
乾いた空気の中に、干からびた言葉が通り過ぎていく。
時々、指先が光って、透けて見える。
自分がこの世界に属していないことを、まざまざと見せつけられる。
これは、夢の世界なんだろうな。
今のところ悪夢。
好きな人に嫌われるだけの悪夢。
思いも感謝も届いてない悪夢。
それでもまだ消えない。
まだ夢は冷めない。
嫌われたくない
邪魔したくないのに
そばに、いたい。
-----------------------
「おはよう、宮田くん」
「……あぁ」
宮田はロクに顔をも見ずに、小さな声で挨拶を返すだけだった。
奈々は泣きたくなるのを堪えて、無理な笑顔を作ってみせる。
重くてウザい同居人なんて、絶対に思って欲しくない。
「残念ながら、まだ消えてないの…ごめんね」
「……別に」
「もうすぐ!頑張って!消えるからっ!それまでよろしくねっ」
ジョジョみたいな言い方だったけど、宮田くんはきっとジョジョとか知らないだろうからいいか、なんて呑気な考えが浮かんだりして。
「アンタは消える消えないを自分でコントロールできねぇのか?」
宮田から久々に、長いセリフが飛び出した。
「できないみたい」
「どうやったら成仏するんだよ」
「いや幽霊じゃないから…」
もはや宮田の中で、奈々はこの世のものではないと認定されているらしい。
たしかにこの世のものではないが…
「結ばれたら消えると思うんだけどね!」
明るくおどけて言ったのが逆に相手を不愉快にさせたのか、宮田はピクリと眉を動かして
「嫌だね」
と言った。
「あ、あはは、そうよね。うん…ごめんね…」
「じゃ、行くから」
「あ、うん…気をつけてね」
バタンと閉まるドアの音。
しんと静まる家の中。
誰の気配もない部屋。
透き通る自分の指先。
規則正しい秒針の音が憎いほど、耳に刺さってくる。
時間がない。
これが、最後の会話だったかもしれない。
宮田くん、宮田くん。
得体の知れない私を気持ち悪がる君の気持ちはよくわかる。
それでもここに置いていてくれる君の優しさを、私はよく知っている。
高望みはしないつもりだった。
だけど、こんな風に、冷たい距離の中で、
さようなら、なんて、辛いよ。
奈々は一人、込み上げてくる悲しみをこらえきれず、泣いた。
ああ、ひどい嫌われよう。
来た時よりもさらに、嫌われている気がする。
冷たい氷みたいな態度。
そして…日に日に、薄まる自分の影。
「やっすい500円のオモチャに、何を期待したんだろう私は」
乾いた空気の中に、干からびた言葉が通り過ぎていく。
時々、指先が光って、透けて見える。
自分がこの世界に属していないことを、まざまざと見せつけられる。
これは、夢の世界なんだろうな。
今のところ悪夢。
好きな人に嫌われるだけの悪夢。
思いも感謝も届いてない悪夢。
それでもまだ消えない。
まだ夢は冷めない。
嫌われたくない
邪魔したくないのに
そばに、いたい。
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「おはよう、宮田くん」
「……あぁ」
宮田はロクに顔をも見ずに、小さな声で挨拶を返すだけだった。
奈々は泣きたくなるのを堪えて、無理な笑顔を作ってみせる。
重くてウザい同居人なんて、絶対に思って欲しくない。
「残念ながら、まだ消えてないの…ごめんね」
「……別に」
「もうすぐ!頑張って!消えるからっ!それまでよろしくねっ」
ジョジョみたいな言い方だったけど、宮田くんはきっとジョジョとか知らないだろうからいいか、なんて呑気な考えが浮かんだりして。
「アンタは消える消えないを自分でコントロールできねぇのか?」
宮田から久々に、長いセリフが飛び出した。
「できないみたい」
「どうやったら成仏するんだよ」
「いや幽霊じゃないから…」
もはや宮田の中で、奈々はこの世のものではないと認定されているらしい。
たしかにこの世のものではないが…
「結ばれたら消えると思うんだけどね!」
明るくおどけて言ったのが逆に相手を不愉快にさせたのか、宮田はピクリと眉を動かして
「嫌だね」
と言った。
「あ、あはは、そうよね。うん…ごめんね…」
「じゃ、行くから」
「あ、うん…気をつけてね」
バタンと閉まるドアの音。
しんと静まる家の中。
誰の気配もない部屋。
透き通る自分の指先。
規則正しい秒針の音が憎いほど、耳に刺さってくる。
時間がない。
これが、最後の会話だったかもしれない。
宮田くん、宮田くん。
得体の知れない私を気持ち悪がる君の気持ちはよくわかる。
それでもここに置いていてくれる君の優しさを、私はよく知っている。
高望みはしないつもりだった。
だけど、こんな風に、冷たい距離の中で、
さようなら、なんて、辛いよ。
奈々は一人、込み上げてくる悲しみをこらえきれず、泣いた。