LUCKY STAR
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14.ヒットアンドアウェイ
「おはよう」
「…ああ」
昨日、近づいたと思った距離が再び離れた気がした。
宮田は無機質な態度で、さっさとロードワークへ行ってしまい、奈々は暖かい布団の中でもう一度、昨日のことを考える。
「…うふ」
いやいや、キス直前の映像を反芻している場合ではない。
真面目な話。
ラッキースターの話。
あの時、夢から覚めそうな感覚に襲われて…
でも、まだ帰りたくなかった。
夢なら覚めないでほしかった。
そして、なんとか、戻ってこられた。
どうして、あんなことになった?
「宮田くんと結ばれますように」の願いが叶いそうだったから?
あんな、作業じみたキスもどきで?
「ってか、してないじゃんよ!」
奈々は思わず枕を殴った。
ポフ、と間抜けな音がするだけで、怒りはちっとも発散されない。
ああ…と今度は枕に顔を埋める。
ゴロリと寝返りを打って仰向けになると、ボクシング雑誌が綺麗に並べられた、几帳面な本棚が視界に入った。
「…そういや、ここって本編でいうどの辺りなんだろ?」
興味本位で雑誌をめくる。
1番新しい号の特集は、「鷹村守、二階級制覇達成!」
…イーグル戦だ。
そして宮田はこの試合でメッガン・ダッチボーイに勝利して4度目の防衛に成功している。
試合は8月27日、宮田の22歳の誕生日だった。月刊ボクシングファンで、この試合の特集をしたということは、今は9月。一歩との対戦が決まる直前。
「私が一番好きな時代じゃない、これ………!」
雑誌を持つ手が震える。
「宮田くんが1番ノリノリでイケてて、今みたいに暗く湿っぽくスネて無かった時だ…それに試合が終わったばかりで減量もしてないし、カリカリイライラしてない貴重な時じゃない、ラッキー!」
我ながらひどいこと言うな…と思いながらも、この先の展開をウッカリ口にしないよう気をつけようと気を引き締めた。
私、変な願い事して、勝手にこんなところに飛ばされて…
目の前に好きな人が現れて、勝手に居座って、浮かれていたけど…
あれこれ考えるうちに、先ほどのテンションはどんどん下がっていき、最後には雑誌を閉じる音すら小さく小さくなってしまった。
宮田くんは一生懸命、頑張ってるんだよなぁ…
結ばれる結ばれない以前に、私はその姿を間近で見ることができただけで、幸せじゃない?
この体がいつ消えるのか分からないけど…
それまで、変なプレッシャーを宮田くんに与えるのはやめよう。
迷惑、かけたくない。
邪魔、したくない。
宮田くんを、ただ応援したい。
雑誌をすっと本棚に戻して、奈々は部屋の掃除を始めた。
「おはよう」
「…ああ」
昨日、近づいたと思った距離が再び離れた気がした。
宮田は無機質な態度で、さっさとロードワークへ行ってしまい、奈々は暖かい布団の中でもう一度、昨日のことを考える。
「…うふ」
いやいや、キス直前の映像を反芻している場合ではない。
真面目な話。
ラッキースターの話。
あの時、夢から覚めそうな感覚に襲われて…
でも、まだ帰りたくなかった。
夢なら覚めないでほしかった。
そして、なんとか、戻ってこられた。
どうして、あんなことになった?
「宮田くんと結ばれますように」の願いが叶いそうだったから?
あんな、作業じみたキスもどきで?
「ってか、してないじゃんよ!」
奈々は思わず枕を殴った。
ポフ、と間抜けな音がするだけで、怒りはちっとも発散されない。
ああ…と今度は枕に顔を埋める。
ゴロリと寝返りを打って仰向けになると、ボクシング雑誌が綺麗に並べられた、几帳面な本棚が視界に入った。
「…そういや、ここって本編でいうどの辺りなんだろ?」
興味本位で雑誌をめくる。
1番新しい号の特集は、「鷹村守、二階級制覇達成!」
…イーグル戦だ。
そして宮田はこの試合でメッガン・ダッチボーイに勝利して4度目の防衛に成功している。
試合は8月27日、宮田の22歳の誕生日だった。月刊ボクシングファンで、この試合の特集をしたということは、今は9月。一歩との対戦が決まる直前。
「私が一番好きな時代じゃない、これ………!」
雑誌を持つ手が震える。
「宮田くんが1番ノリノリでイケてて、今みたいに暗く湿っぽくスネて無かった時だ…それに試合が終わったばかりで減量もしてないし、カリカリイライラしてない貴重な時じゃない、ラッキー!」
我ながらひどいこと言うな…と思いながらも、この先の展開をウッカリ口にしないよう気をつけようと気を引き締めた。
私、変な願い事して、勝手にこんなところに飛ばされて…
目の前に好きな人が現れて、勝手に居座って、浮かれていたけど…
あれこれ考えるうちに、先ほどのテンションはどんどん下がっていき、最後には雑誌を閉じる音すら小さく小さくなってしまった。
宮田くんは一生懸命、頑張ってるんだよなぁ…
結ばれる結ばれない以前に、私はその姿を間近で見ることができただけで、幸せじゃない?
この体がいつ消えるのか分からないけど…
それまで、変なプレッシャーを宮田くんに与えるのはやめよう。
迷惑、かけたくない。
邪魔、したくない。
宮田くんを、ただ応援したい。
雑誌をすっと本棚に戻して、奈々は部屋の掃除を始めた。