君の背中
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9.尋問
「ひょっとして・・・高杉さんって宮田のこと好きなの?」
奈々はどう答えたらいいのかわからなかった。
確かに、宮田には好意を寄せてはいた。
でもそれは、単なる男性に対するトキメキ程度のものではないのかと思っている。
それよりも今は、宮田に言われたあの言葉が忘れられない。
宮田のいる世界、つまりはボクシングの厳しさの片鱗を知ってから・・・・
宮田には胸を張って会いたいと思うようになった。
今の自分では、彼に会う資格など無い。
命懸けて戦っている人だからこそ、自分も、命を懸けて戦う姿を見せたい。
同じ目線で話がしたい。
それって、本気で好きになっちゃったってこと?
それとも、仕事人の意地みたいなもの?
・・・自分でも、わからない。
「好きというか・・・」
しばらく間を置いてから、奈々は静かに答えた。
「宮田くんに言われたことが気になってて」
「・・・・宮田に?」
木村が意外そうな声を発した。
「仕事のことで・・・甘いとか、覚悟が足りない、みたいなことを・・」
奈々がそういうと、木村はますます意外そうな、不思議そうな顔をした。
木村の言葉を待って奈々が黙ると、木村は我に返ったように姿勢を正して言った。
「確かに宮田はハッキリ物申すタイプだけど・・すげぇ言われようだな」
「まぁそれで・・・悔しくて」
「・・・わかるよ」
木村はつい最近の宮田との特訓を思い出しながら同調した。
それから考え込むように目を伏せたが、どうも腑に落ちない点が気になり、再び顔を上げて奈々に聞いた。
「ところで宮田とは長い付き合いなの?」
「え?・・・いいえ、それほどでは・・・」
「バイト仲間?それともジムがらみの知り合い?」
「いえ・・・」
木村の尋問口調に奈々は圧倒されながらも答える。
一方で木村は、奈々と宮田の関係性が今ひとつ見えてこないことが不思議だった。
「んじゃ、どこで知り合ったの?」
奈々は、いったん回答に詰まった。
「路上で」なんて言ったら、ややこしい話になる。
「変態が」と言っても、またややこしい。
かといって「コンビニで」というのも、店員と客に何の接点があるのかもわからない。
何のことは無い普通の会話にも関わらず奈々が答えに窮してしまったので、木村はさらに不思議そうな顔をした。
「まぁ、ちょっと・・・」
奈々が答えを濁すと、木村もそれ以上は聞かないという雰囲気を出した。
奈々は、優しい人だな、と思った。
木村は空になった缶コーヒーを無造作に机に置くと、ちらりと腕時計を見て立ち上がった。
「じゃあオレ、そろそろ行くね」
「あ、ハイ。今日は色々ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそイベントありがと」
木村が手を振り、休憩テントから出て行こうとする瞬間だった。
ぴたりと立ち止まって、奈々の方を振り向いて、言った。
「アイツさ、たしかにキツいこと言うけど・・・誰にでも言うわけじゃないからさ」
さらに続けて
「たぶん、高杉さんにハッパかけるつもりだったんだと思うぜ」
木村は少し笑って、それから「じゃあね」と身を翻し、去っていった。
木村はそのまま自宅の方へ歩いて行った。
帰り道、どうにも気になるのが二人の関係。
宮田には珍しい、女の知り合い。
・・・そこに知り合いレベルではない、キツいセリフ。
「甘いとか、覚悟が足りない、みたいなことを・・」
男でも食らうと結構キツいのに、それを女の子に言うなんて。
長い付き合いで宮田の性格は割とよく知っていると思っていた木村だったが、この言動にはさすがに首を傾げざるを得なかった。
宮田は基本的に、他人に関心を持たない男だ。
わざわざ苦言を呈するのは、良い意味でも、悪い意味でも、その人物に関心を持っているということ。
宮田はアドバイスらしいアドバイスも苦手なやつだ。
それは自分がつい最近まで味わってよく知っている。
厳しい言い方にも、何か隠された本心があるのかもしれない。
「たぶん、高杉さんにハッパかけるつもりだったんだと思うぜ」
なんて自分で言っておいて、本当は半信半疑だ。
アイツがそこまで思う女の子って、一体どういう・・・・
そんな考えを張り巡らせながら、少し振り返って、奈々がいる方向を見つめた。
奈々は既に別の商工会メンバーと何やら相談をして、忙しそうに立ち回っていた。
生き生きとした表情で、一生懸命に仕事をする姿。
いったいどこが「覚悟が足りない」のか、と木村は思った。
奈々の笑顔を見ているうちに、木村は推測を確信に変えた。
「・・・宮田も青いなぁ~」
くくく、と笑いを堪えるようにして、木村は自宅へと戻った。
「ひょっとして・・・高杉さんって宮田のこと好きなの?」
奈々はどう答えたらいいのかわからなかった。
確かに、宮田には好意を寄せてはいた。
でもそれは、単なる男性に対するトキメキ程度のものではないのかと思っている。
それよりも今は、宮田に言われたあの言葉が忘れられない。
宮田のいる世界、つまりはボクシングの厳しさの片鱗を知ってから・・・・
宮田には胸を張って会いたいと思うようになった。
今の自分では、彼に会う資格など無い。
命懸けて戦っている人だからこそ、自分も、命を懸けて戦う姿を見せたい。
同じ目線で話がしたい。
それって、本気で好きになっちゃったってこと?
それとも、仕事人の意地みたいなもの?
・・・自分でも、わからない。
「好きというか・・・」
しばらく間を置いてから、奈々は静かに答えた。
「宮田くんに言われたことが気になってて」
「・・・・宮田に?」
木村が意外そうな声を発した。
「仕事のことで・・・甘いとか、覚悟が足りない、みたいなことを・・」
奈々がそういうと、木村はますます意外そうな、不思議そうな顔をした。
木村の言葉を待って奈々が黙ると、木村は我に返ったように姿勢を正して言った。
「確かに宮田はハッキリ物申すタイプだけど・・すげぇ言われようだな」
「まぁそれで・・・悔しくて」
「・・・わかるよ」
木村はつい最近の宮田との特訓を思い出しながら同調した。
それから考え込むように目を伏せたが、どうも腑に落ちない点が気になり、再び顔を上げて奈々に聞いた。
「ところで宮田とは長い付き合いなの?」
「え?・・・いいえ、それほどでは・・・」
「バイト仲間?それともジムがらみの知り合い?」
「いえ・・・」
木村の尋問口調に奈々は圧倒されながらも答える。
一方で木村は、奈々と宮田の関係性が今ひとつ見えてこないことが不思議だった。
「んじゃ、どこで知り合ったの?」
奈々は、いったん回答に詰まった。
「路上で」なんて言ったら、ややこしい話になる。
「変態が」と言っても、またややこしい。
かといって「コンビニで」というのも、店員と客に何の接点があるのかもわからない。
何のことは無い普通の会話にも関わらず奈々が答えに窮してしまったので、木村はさらに不思議そうな顔をした。
「まぁ、ちょっと・・・」
奈々が答えを濁すと、木村もそれ以上は聞かないという雰囲気を出した。
奈々は、優しい人だな、と思った。
木村は空になった缶コーヒーを無造作に机に置くと、ちらりと腕時計を見て立ち上がった。
「じゃあオレ、そろそろ行くね」
「あ、ハイ。今日は色々ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそイベントありがと」
木村が手を振り、休憩テントから出て行こうとする瞬間だった。
ぴたりと立ち止まって、奈々の方を振り向いて、言った。
「アイツさ、たしかにキツいこと言うけど・・・誰にでも言うわけじゃないからさ」
さらに続けて
「たぶん、高杉さんにハッパかけるつもりだったんだと思うぜ」
木村は少し笑って、それから「じゃあね」と身を翻し、去っていった。
木村はそのまま自宅の方へ歩いて行った。
帰り道、どうにも気になるのが二人の関係。
宮田には珍しい、女の知り合い。
・・・そこに知り合いレベルではない、キツいセリフ。
「甘いとか、覚悟が足りない、みたいなことを・・」
男でも食らうと結構キツいのに、それを女の子に言うなんて。
長い付き合いで宮田の性格は割とよく知っていると思っていた木村だったが、この言動にはさすがに首を傾げざるを得なかった。
宮田は基本的に、他人に関心を持たない男だ。
わざわざ苦言を呈するのは、良い意味でも、悪い意味でも、その人物に関心を持っているということ。
宮田はアドバイスらしいアドバイスも苦手なやつだ。
それは自分がつい最近まで味わってよく知っている。
厳しい言い方にも、何か隠された本心があるのかもしれない。
「たぶん、高杉さんにハッパかけるつもりだったんだと思うぜ」
なんて自分で言っておいて、本当は半信半疑だ。
アイツがそこまで思う女の子って、一体どういう・・・・
そんな考えを張り巡らせながら、少し振り返って、奈々がいる方向を見つめた。
奈々は既に別の商工会メンバーと何やら相談をして、忙しそうに立ち回っていた。
生き生きとした表情で、一生懸命に仕事をする姿。
いったいどこが「覚悟が足りない」のか、と木村は思った。
奈々の笑顔を見ているうちに、木村は推測を確信に変えた。
「・・・宮田も青いなぁ~」
くくく、と笑いを堪えるようにして、木村は自宅へと戻った。