HEKIREKI
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突然始まった、宮田VS春樹のスパーリング。
ちょこんとグローブを合わせたかと思った瞬間、閃光のようなワンツーが春樹の顔面を捉える。
「が・・がはぁっ・・・」
打ち返そうと思った瞬間には、宮田の姿を見失っていた。
ガードを固めながら首を振り、宮田の姿を探すも、射程距離圏外から次々に飛んでくるジャブすらもかいくぐれないでいた。
「わあ・・・高杉、サンドバッグになってら」
「宮田さんもえげつねぇな」
ギャラリーがあっけにとられながら口々に感想を言い合う。
「く・・・くそっ」
1戦しかしなかった、なんの実績もないボクサーだけど、自分だってプロなんだ!というプライドが、春樹にも少しはあるらしい。
打たれても打たれても前に出てくる姿は、やっぱり幕之内のそれに似ているなと宮田は対峙しながらつくづく感じた。
このままアウトボクシングを続けていても、このスパーの意味がないと判断した宮田は足を止め、前傾姿勢へシフトした。
そして前へ前へ打ってくる春樹のパンチをヘッドスリップでかわしながら前進する。
「あ・・・当たらない・・・っ」
春樹は前進して距離を詰め、宮田と密着する形になった。2人の超インファイトに、周囲のギャラリーも盛り上がる。
春樹が宮田のガードの上から御構い無しにパンチを繰り出すと、強打に揺られた宮田のガードが少しずつ外れ始める。
そして宮田の顔が一瞬、歪んだ。
春樹は今なら行けるかもしれない、と外れたガードの隙間に右ストレートを狙う。
その刹那、自分の拳は空を切り、そして訳がわからぬまま崩れるようにして天井を仰いだ。
宮田のカウンターを食らったのだ。
「高杉!大丈夫か!」
「立てぇ!しっかりしろぉ!」
目の前がぐるぐると回って、天井のライトが眩しい。
そうか、倒されたのかとようやく気がついて、ロープにしがみつきながら体を起こす。
さっきガードが崩れたのも、宮田さんの顔が一瞬歪んだのも
全部・・・カウンターのための・・・演技だったのか・・・
ぐぐぐ、と歯を食いしばりながら立ち上がり、ファイティングポーズをとる。
気遣いの言葉ひとつかけることなく、宮田はまた前傾姿勢で構え始めた。
「うおぉおおおお!」
雄叫びをあげながら一直線に宮田へ向かう。
「おいおい高杉、カウンターの餌食になりたいのか!?」
「落ち着けよ高杉!」
ダッシュで懐に入り、ワンツーからフックを織り交ぜたコンビネーション。
当然宮田に綺麗に避けられてしまったが、宮田は足を使って距離をとることなくその場から動かない。
まるで、もっと打ってこいと言わんばかりの姿勢だ。
「あんな至近距離でよくさばけるよな・・・」
「宮田さん、高杉のパンチ怖くないのかなぁ」
「俺あいつのボディくらってゲロ吐いたことあるわ」
いくらパンチを打ってもまともにヒットしない。
春樹も流石に心が折れそうになる。
王者の世界は別次元だ、ということを思い知る。
「く・・・くそっ・・・」
すると宮田はニヤリと笑って、わざと腹を開けた。
カウンターのための餌とはわかっていながら、触れるところは、もうそこしかない。
春樹はありったけの力を込めて、左拳を宮田の腹部めがけて振り上げた。
ドスン、と鈍く重たい音が響く。
宮田の肝臓に直撃したらしい。
「ぐっ・・・・」
宮田の顔が少し歪む。
流石にリバーブローをくらって涼しい顔はしていられなかったようだ。
「あ、当たっ・・・・」
そう思うやいなや、がら空きの左頬に思いっきりカウンターが飛んできて、春樹は膝から崩れ落ちた。
そして、今度は完全に意識が飛んだらしい。
ゴロリと横たわる春樹の周りに、リング外から次々に人が集まる。
「おい!誰か水持ってこい!」
「高杉、しっかりしろ!」
「頭動かすなよ!」
喧騒の中、宮田はグローブを外して静かにリングを降りる。
「いい餞別になったな?」
リングを降りた先で、父親に声をかけられた。
「さあね」
「しかし最後のリバー、よく受ける気になったな」
スパーをする旨は、あらかじめ父親に話を通していた。
父親も初めからリングサイドでことの成り行きを見ていたらしい。
最後のリバーブローがわざと食らったものだと言うのも、やはり父親からするとすぐ分かるもののようだ。
「予想より重くて、受けたの後悔してるよ」
「わはは。お前も後輩思いなところあるじゃないか」
「そんなんじゃないよ。ただ・・・」
「ただ?」
父親が聞き返すと、宮田は目を瞑りながら続けて言った。
「理不尽だね」
打たれた腹がまだジンジンと燃える。
しばらくあとを引きそうな鈍い痛みだ。
リング上で寝転がっている春樹の周りには人だかりができている。
宮田は一度だけリングの方に目をやり、それからロッカーへ向かって歩き出した。
ちょこんとグローブを合わせたかと思った瞬間、閃光のようなワンツーが春樹の顔面を捉える。
「が・・がはぁっ・・・」
打ち返そうと思った瞬間には、宮田の姿を見失っていた。
ガードを固めながら首を振り、宮田の姿を探すも、射程距離圏外から次々に飛んでくるジャブすらもかいくぐれないでいた。
「わあ・・・高杉、サンドバッグになってら」
「宮田さんもえげつねぇな」
ギャラリーがあっけにとられながら口々に感想を言い合う。
「く・・・くそっ」
1戦しかしなかった、なんの実績もないボクサーだけど、自分だってプロなんだ!というプライドが、春樹にも少しはあるらしい。
打たれても打たれても前に出てくる姿は、やっぱり幕之内のそれに似ているなと宮田は対峙しながらつくづく感じた。
このままアウトボクシングを続けていても、このスパーの意味がないと判断した宮田は足を止め、前傾姿勢へシフトした。
そして前へ前へ打ってくる春樹のパンチをヘッドスリップでかわしながら前進する。
「あ・・・当たらない・・・っ」
春樹は前進して距離を詰め、宮田と密着する形になった。2人の超インファイトに、周囲のギャラリーも盛り上がる。
春樹が宮田のガードの上から御構い無しにパンチを繰り出すと、強打に揺られた宮田のガードが少しずつ外れ始める。
そして宮田の顔が一瞬、歪んだ。
春樹は今なら行けるかもしれない、と外れたガードの隙間に右ストレートを狙う。
その刹那、自分の拳は空を切り、そして訳がわからぬまま崩れるようにして天井を仰いだ。
宮田のカウンターを食らったのだ。
「高杉!大丈夫か!」
「立てぇ!しっかりしろぉ!」
目の前がぐるぐると回って、天井のライトが眩しい。
そうか、倒されたのかとようやく気がついて、ロープにしがみつきながら体を起こす。
さっきガードが崩れたのも、宮田さんの顔が一瞬歪んだのも
全部・・・カウンターのための・・・演技だったのか・・・
ぐぐぐ、と歯を食いしばりながら立ち上がり、ファイティングポーズをとる。
気遣いの言葉ひとつかけることなく、宮田はまた前傾姿勢で構え始めた。
「うおぉおおおお!」
雄叫びをあげながら一直線に宮田へ向かう。
「おいおい高杉、カウンターの餌食になりたいのか!?」
「落ち着けよ高杉!」
ダッシュで懐に入り、ワンツーからフックを織り交ぜたコンビネーション。
当然宮田に綺麗に避けられてしまったが、宮田は足を使って距離をとることなくその場から動かない。
まるで、もっと打ってこいと言わんばかりの姿勢だ。
「あんな至近距離でよくさばけるよな・・・」
「宮田さん、高杉のパンチ怖くないのかなぁ」
「俺あいつのボディくらってゲロ吐いたことあるわ」
いくらパンチを打ってもまともにヒットしない。
春樹も流石に心が折れそうになる。
王者の世界は別次元だ、ということを思い知る。
「く・・・くそっ・・・」
すると宮田はニヤリと笑って、わざと腹を開けた。
カウンターのための餌とはわかっていながら、触れるところは、もうそこしかない。
春樹はありったけの力を込めて、左拳を宮田の腹部めがけて振り上げた。
ドスン、と鈍く重たい音が響く。
宮田の肝臓に直撃したらしい。
「ぐっ・・・・」
宮田の顔が少し歪む。
流石にリバーブローをくらって涼しい顔はしていられなかったようだ。
「あ、当たっ・・・・」
そう思うやいなや、がら空きの左頬に思いっきりカウンターが飛んできて、春樹は膝から崩れ落ちた。
そして、今度は完全に意識が飛んだらしい。
ゴロリと横たわる春樹の周りに、リング外から次々に人が集まる。
「おい!誰か水持ってこい!」
「高杉、しっかりしろ!」
「頭動かすなよ!」
喧騒の中、宮田はグローブを外して静かにリングを降りる。
「いい餞別になったな?」
リングを降りた先で、父親に声をかけられた。
「さあね」
「しかし最後のリバー、よく受ける気になったな」
スパーをする旨は、あらかじめ父親に話を通していた。
父親も初めからリングサイドでことの成り行きを見ていたらしい。
最後のリバーブローがわざと食らったものだと言うのも、やはり父親からするとすぐ分かるもののようだ。
「予想より重くて、受けたの後悔してるよ」
「わはは。お前も後輩思いなところあるじゃないか」
「そんなんじゃないよ。ただ・・・」
「ただ?」
父親が聞き返すと、宮田は目を瞑りながら続けて言った。
「理不尽だね」
打たれた腹がまだジンジンと燃える。
しばらくあとを引きそうな鈍い痛みだ。
リング上で寝転がっている春樹の周りには人だかりができている。
宮田は一度だけリングの方に目をやり、それからロッカーへ向かって歩き出した。