第4章:一喜一憂
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クリスマスイブの夕方。
母親が鼻歌を歌いながら、サラダ、オードブルの盛り付けをしている。
奈々が冷蔵庫を開けると、そこには大きなスペースを取ったケーキの箱がでんと鎮座していた。
「わぁ、奮発したねぇ」
奈々が箱に書かれた老舗ケーキ屋のロゴを見て呟く。
「家族でクリスマスのお祝いができるのも、いつまでかなぁなんて思ったら、奮発したくなってさ」
母親は調合したドレッシングをひと舐めして「よし」と小さく呟きながら続けた。
「それに見てぇ、ワインもいいの買っちゃったのよ」
奈々はワインのことはよくわからないが、なんとなく高そうな感じのラベルが貼ってあるのがわかった。
「・・・私たちは飲めないじゃん。ノンアルのシャンパン買ってきてくれた?」
「あ」
冷蔵庫のドリンクスペースには、牛乳とワインが刺さっているのみ。追加してこのリアクション。
どうやら母はイベント感で舞い上がり、自分たちの分しか飲み物を買っていなかったらしい。
「えー、買ってないのぉ?」
「ごめんごめん、ちょっと買ってきてよ」
「今からぁ?」
「まだ5時前じゃないの」
というわけで、またも小銭入れを握りしめて買い物に出かけた奈々。
5時前とはいえ冬は日が暮れるのが早く、すでに街灯がつきはじめていた。
「手袋してくればよかった」
はぁっと手のひらに息を吐くと、白い息が手の中で溶けて消えていく。今日は5度しかなく、なかなかの寒さが骨まで染みる。
さすがにクリスマスイブ、パーティーの本番当日となるとスーパーもコンビニも結構な人出だ。
そのせいか、残念ながらお目当のノンアルコールシャンパンは売り切れ。
あれを飲まないとクリスマス気分が出ない!と、奈々は執念にも似た気持ちで、駅前にある少し大きめのスーパーへ行くことにした。
駅までは少し歩くが、体を温めるにはちょうどいい。
そして角を曲がったところで、見覚えのある背中が目に飛び込んできた。
大きなバッグを持った、ジャージ姿の男。
思わず、足が止まる。
急に止まった足音を不審に思ったのか、見覚えのある背中がこちらを振り向く。
そして、予想は確信へと変わった。