第10章:ずっと
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木々の葉が風に揺られてザワザワと、優しい音を立てる。
「ずっとって、いつから・・・?」
その存在を確かめるかのように、奈々は回された腕に手を添えて呟いた。
宮田はしばし考えて、
「・・・高1の時から」
そう言われて、奈々はハッと、初デートの帰り際での、キス未遂事件を思い出した。
「み、宮田は・・・ただの女好きかと・・・」
「お前オレのこと、どんな目でみてたんだよ」
呆れる宮田を見て、思わず笑ってしまった。
「だって・・・女の子に告白されてもハッキリ拒絶しなかったし、チョコもたくさんポケットに入ってたし・・・」
そんなことあったか?とでも言いたいような顔で、宮田は少し空を仰ぐ。
「手の早いヤツなのかな・・・と思ったりしてた」
「・・・バカじゃねえの」
呆れたようにふうっと息を吐いて、宮田は抱きしめる両手にぎゅっと力を込めた。
しばらく抱きしめていると、遠くから親子連れと思われる人たちの声が響いてきて、ちょうど自分たちの座るベンチの前の小径を通ろうと向かってきているのが見えた。
二人とも同時にそれに気づいたらしく、同じタイミングで体を離し、一瞬だけ見つめあってから、照れ臭そうに前を向いて座り直した。
宮田の方に顔を向けることなく、まっすぐ前を向いて奈々が呟く。
「宮田に彼女がいるって知って、そしてフラれてさ。諦めようとしたんだよ、これでも」
「・・・知ってるよ」
宮田の返事を受けて、一体何を知っているのかと疑問に思って横を向くと、宮田もまたこちらを見つめていた。
「あのメガネ野郎だろ」
宮田があんまりにも面白くなさそうにつぶやいたので、奈々は思わず顔がニヤけてくるのを隠せなかった。
「オレも・・・仕方ないと思いながら・・・」
ベンチの背もたれに体を預けて、宮田は空を仰ぎながら小さく呟く。
「どこかで、お前はオレのことを待ってると、勝手に思ってた」
宮田の口から出た、素直で意外な一言を聞いて、奈々は返す言葉に戸惑い、黙り込む。
「そこに、あの野郎が出てきて・・・」
宮田は完全に体を預けて、やや反るような格好で空を見上げている。どうやら、今の顔は奈々には見られたくないらしい。
「お前は何をしても離れていくことはないと、自惚れてた」
そう言い終わると、宮田はまた体を起こして、深呼吸をしたあとに、チラリと奈々の方を見た。
「そんなわけねえのにな」と言ってまたフッと笑った顔が妙に寂しそうに見えて、思わず胸が詰まる。
彼は彼なりに不安と戦ってたのかもしれない、なんて思って。
「宮田の勝ちだよ」
「ん?」
「離れられなかった」
奈々がニコリと笑うと、宮田もまた笑みを浮かべて、誰にも聞こえない程の小さな声で何かを呟いた。
柔らかな陽の光が二人の間を優しく照らして、重なった影が小さな小径に伸びていく。
「宮田」
「ん?」
「大好き」
奈々は頭を宮田の肩に寄せて、ボソリと呟く。
「・・・知ってるけど?」
「・・・うう。確かに昔告白したけど・・・」
「その前から知ってたよ」
「え・・・いつから知ってたのよ?」
宮田は奈々の頭をポンポンと軽く叩いて、自らの頭を奈々の頭に載せるようにして傾けた。
「高1の時から」