第10章:ずっと
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しばしの沈黙。
そして、しばしの歓談で忘れかけていた要件をハッと思い出し、慌ててカバンを弄る。
「あ・・・・あ、そう、そうだ!宮田に、お祝い!」
カバンからラッピングされた包みを取り出し、宮田に渡した。
「・・・どうも」
「ごめん、捻りのない、ただのスポーツウェアなんだけど」
宮田は包みを開けて中を見て、それからじいっと、ウェアを見つめたまま呟いた。
「ありがとな」
包みをまた閉じて、プレゼントを自分の横の方へ置いてから、宮田は小さく息を吸って、ポケットの中から何かを取り出して、奈々の方へ向けた。
「これ」
「・・・うん?なに?」
宮田が黙って手のひらに乗せた、小さな紙の包みを開けてみると、中には小さな装飾のついたネックレスが入っていた。
「遠征先で買ったんだけどよ・・・渡しそびれてた」
「・・え?私に?なんで?」
真顔で素っ頓狂なことを聞き返してきたので、宮田は思わず調子が狂って頭をかかえる。
「いつぞやの・・・誕生日の礼のつもりだった」
宮田が今度は逆のポケットから、ボクシングのグローブをモチーフにしたキーホルダーを出してきた。
その先には家の鍵がついている。
「あ・・・使ってくれてたんだ」
「まあな」
改めて、手のひらのネックレスに目を落とす。
小ぶりの天然石がついていて、太陽の光に反射してキラキラ光る。
「うれしい・・・ありがとう」
ギュウウ・・と音がなるほど、胸の前で握りしめる。
まさか宮田から、こんなサプライズがあるとは思っていなかった。
「つけてやるから、後ろ向けよ」
宮田にそう言われて、ネックレスを渡して、後ろを向く。
小さい留め金だけど、宮田はちゃんとつけられるのかな?
なんて心配しながら、それを想像してちょっとおかしくなって笑い出しそうになったころだった。
宮田の両腕が、首の後ろから回され・・・
ネックレスをつける前に、そのまま抱きしめられた。
「・・・み、宮田?」
「ベルト獲ったら、言おうと思ってた」
戸惑う奈々をよそに、宮田はさらに腕の力を強める。
耳元で、宮田がボソリと言う。
「今まで待たせて、すまなかった」
宮田は抱きしめる腕に力を込めて、それから続けた。
「ずっと・・・好きだった」
風が通り抜け、木々のざわめく音がこだまする。
太陽の光がその間を通り抜けて、二人の間に柔らかな木漏れ日を落とした。