第10章:ずっと
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翌日、宮田から簡単なお礼の電話があった。
通常の試合の後とは違った激しい打撃戦だったため、体のダメージ回復にしばし時間を要するらしい。
顔の腫れが引き、コンディションが良くなったらまた連絡する、と何か事務的なことを言って宮田は電話を切った。
チャンピオンになっても宮田は宮田で、浮かれた口調でもなければ、浮ついた態度でもなく、無愛想でクールな態度はいつもと変わらなかった。
「“連絡する”・・・・宮田あるある」
カレンダーを見ながら、ぼうっと呟く。
あれから1週間・・・宮田の“連絡する”は、いつなのか全然わからない。
今日からGWの連休に入った。
宮田から呼び出されるかもと思って、変に予定も入れられず、誰とも約束せずにガラ空き状態だ。
「あんたもGWなんだからどこか行きなさいよ。例の宮田くんとデートでもすればぁ?」
母親が掃除機をかけながら、奈々に向かってまるで粗大ゴミか何かのように、ぐいぐいとヘッドを押し付けてくる。
「・・・例の宮田くんは、療養中なんですぅ」
「チャンピオンになったらしいわねぇ?ママ、サインもらっておこうかな」
「やめてよ恥ずかしい」
能天気な母親を見ていると調子が狂う、と思い2階へ行こうとした矢先のことだった。
電話が鳴ったので、受話器の一番近くにいた奈々が必然的に電話を受けた。
「もしもし?」
「・・・オレだけど」
噂をすれば影、とはこのことか。
チラリと母親を見ると、何かを察したのかこちらを見てニヤリと笑っている。
それがなんだか癇に障ったので、無視するように階段を上って行く。
「悪かったな、遅くなって」
「いや・・・体調はどうなの?」
「ようやく顔の腫れが引いて、人前に出られそうだ」
「そ、そんなにひどかったの・・?」
整った顔をした宮田の、整ってない顔が全然想像できなかった。
宮田はそれから続けて、
「会いに行ってもいいか?」
心臓がドクン、と高鳴ったのが自分でもわかった。
普段はクールな宮田の少し甘えたようなセリフが、耳から全身をくすぐりながら、駆け抜けて行く。
「・・・私が、行ってもいい?」
「・・・オレの家に?」
「そう。ウチ、親とか居て恥ずかしいし」
すると宮田は、うーんと少し考えてから、
「じゃあ、公園とか喫茶店にするか」
その答えを受けて、奈々は少し不思議そうに返事をする。
「え?なに?家じゃ都合悪いの?」
素っ頓狂な奈々の声に、宮田はハァとまたため息をついて、
「襲われてもいいなら来いよ」
突然の言葉に、奈々は意味を理解するまで2〜3秒費やした。
「お・・・・お・・!!おそ・・!ば、バカじゃないの!!?」
「うるせえな。冗談だよ。家で待ってるからな」
慌てふためく奈々をよそに、宮田は言うだけ言って電話をガチャリと切ってしまった。